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10章 魔法少女と王都訪問

309話 魔法少女は困惑する

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「ぐはっ!?」
「化け物だ!撤収し……っ!」
バタバタと盗賊が倒れていく。後方を囲っていたはずの陣形はすでに崩れ、私は右手の銃を乱射する。

 おらおら!どうしたどうした!!ただの衝撃弾でへばってちゃ、これからの攻撃には耐えられないゼ。

 心の私はイキリ倒す。

 この絶叫は馬車には聞こえてないはずだ。音波発生機は全部向こうに設置してきた。音をかき消してもらうために。

 ちなみにステッキは腰に挿しっぱなし。じゃないと持てないしね。魔力効率は悪いけど、こうしないと魔法使えない。キーホルダーでプラマイゼロ!

「ちょっ、対処めんどいから逃げないでよ!」
龍化の力でものすごいスピードが出る。重力操作で宙に浮かせた盾を足場に、跳んで進む。

「何だよどうなってやがる!」
「何もいねぇのに、なんなんだ!誰だよ女子供しかいないっつったのは!とんだ化け物の巣窟じゃねぇか!」

「そこ!化け物化け物うるさい!」
パクトの引き金を絞り、物理的に黙らせる。

 簡易結界はいらないかな。
 流石に逃げられないでしょ。万能感知もあるし、何より飛ばないし。

 側から見たら空を蹴って加速したように見える。ただ盾を蹴ってるだけだけど。

 神速を更に発動し、堅実に倒していく。進行方向から見て左を私、右がギル。死神さんはお休み。

「あれ?向こう結構耐えられてる?」
私が半数のうちの半数、6人近くを夢の中に誘った頃、向こうは実弾なのに3人も制圧できていない。

 不備でもあったのかな?空間伸縮なしだから結構ズレとかあるし……

 不安を残しながら、残りも片付ける。腰を抜かしてほとんどが戦闘不能だったので、全員に1発、脳天にぶち込んで終わった。

 最後の1人は、顔を涙でグジャグジャにして「許してください」って懇願してた。

 ウケる。

 ウケんな、とツッコまれた気がするけど、気のせいだ。

「予定通りこいつらはポイ捨てね。特に必要とかないし。ま、領主の馬車なんて狙われて当然だよね。」
なんて言いつつ、全員を縛り付ける。脈で。

 何も見えないけど何もできない。逮捕されても取れないし、逮捕されなきゃこのまま0円物件生活。

 うん、どっちにしろ地獄。

「大人しくしててよ。」
言っても聞こえない。そりゃそうだ、気絶してるし。

 とりあえずギルは戻しとくとして、分離思考も解除……念の為まだ発動させとこう。

 空を飛んで戻ってきたギルを空中キャッチし、ステッキの収納へゴー。私はそのまま入れ替わるように降り、鋭い殺気を感じて重力を真横にかける。

「うっ………」
衝撃は龍化で何とか抑え、体制を立て直す。敵襲?と思い、辺りを見回すと……

 は?死体?

 そこには生気のなくなった10人以上の盗賊たち。反応は全てない。死んでる、確実に。
 そして目の前には、痩せこけた男。頭にバンダナを巻き、鋭い目で睥睨する。

「潤沢ナ魔力、ここまでトハ見たコトがナイ。我ガ母体ニ相応しい。ソノ体、受け渡すがイイ。名誉ナコトダ。」
「は?」
突然喋り出した。骨すら見える薄い肉や皮膚を持つその体からは、何とも人らしくはない音声が流れる。

 というか母体?何そのファンタジー。あ、ここがファンタジーか。

「寄越セ!」
どこから出たのか、真っ黒なナイフを突き出す。その動きは速く、龍化の私が本気で横跳びして余裕を持てるくらいの速さだ。

 ちょっ!?何でこんなっ!

「小賢シイ!」
「何なのあんた!意味分からないんだけど!?ってか速い!上位の竜クラスだよ!」

「我ハ竜ヨリ上ダ!侮辱スルナ!」
分身するように高速で動く。とりあえず、分離思考を残しておいた判断は正解だったとだけ言おう。

 は!?ほんとなんの種族!?狂化のモノパージといい、バービストといい、どうなってんの!
 見た目で分かるけどこれ、もう人じゃないよね?

「もうめんどい!人じゃないなら殺してもいいよね!」
「デキルト思ってイルノカ?」
「やるんだよぉ!」
久々で体が鈍ってるのか、それとも相手が強いのか、少し本気を出さざる得ない。

「土槍!混合弾!エアリスリップ!」
魔法の連射。土槍は何発かの斬撃で斬られ、その間に風が捕える。混合弾はその中に侵入し、標的を破壊する。

 反応は消えてない。ちょっとこれ厄介……

 パクトをラノスに変更し、弾を詰める。魔力に問題無し。8発の装填を完了させ、空中歩行で空を駆ける。

 重力操作と盾の操作に使う思考を全部戻せる代わり、魔力が削がれるけど気にしてられない。

 パァァンッ!パァァンッ!

「厄介ナ!」
「そっちがだよ。」
ドガアァァッ!爆音が空気を振動させ、黒煙は視界を塞ぐ。気配察知と万能感知を駆使し、滲む汗を拭くこともなくトールで前方の煙を穿つ。

「プローターも防ぐの!?盗賊とかいう次元とっくに越してる!」
というか人間の次元も越してるが、焦る私にそんな思考は巡らせる暇はない。

 どうする?爆破物は今のところ意味無し。物理攻撃はダメ?

「ナ、なんダ?」
地面を揺らす。重力操作と地龍魔法の混合、重天。

「魔力を伴う巨大な揺れ、重力による固定で動けず、永遠にヘルシェイクされる……はずなんだけどね。」

「ふム、ヨイ力ダ。」
「効きませんよねそうですよね!」
超スピードを神スピードで避け、途中で黒いモヤが男の足の影からうじゃうじゃ現れてることに気づく。

 どんな化け物だよまったく!私より化け物いたよここに!

 そんな文句を吐く暇もなく、それは襲いくる。

「サンダーサークル!」
雷の円が生まれる。しっかり呼吸した後、襲われないことを確認して一本の殺意の塊を取り出す。

 トロイ。龍神すら穿つ最強の武器。
 これがダメならもうどうとでもなれ!

「角度、出力、諸々オッケー。サークルのエネルギーを吸収し、発動。」
たった1発しか装填できないトロイの銃身に、漆黒の巨弾を重力操作にて装填する。

「発射!」

 —————————ッッッ!!!

 音にもならない轟音。空気が揺れる、としか形容できない。
 戦闘時間にして数分も経たないのに、何十分も戦ってるかのように疲労が溜まる。

「復帰直後でこれはきつい……」
心で治ってよかったと心底安堵しつつ、晴れた視界の先を見る。

「コ、コレほどノ力ガ、マダ、残ってイタトハ……」
「まだ喋れるんだ。」
腹に風穴が空いていた。頭を狙ったけど、避けられたか。

 しぶとすぎ。いや、いくらなんでもしぶとすぎる。神(のようななにか)すら消し飛ばず銃のはずなのに……
 生物じゃない?

「レフ。」
腰から出てくるのは6つの反射板。重力で浮かせ、全方向を囲んだ。

「ナニヲ……」
「動かないで。」
戦闘中、こっそり向こうの足元に捨てておいた転移石に転移し、脚を銃と持ち替えた刀で斬る。そのまままた転移し直し、再度銃と入れ替え速射。

「意味ナドナイ。我ハ不死身。」
「神ですら死はある。そんな存在はあり得ない。特に、あの愉快犯がそんな興が冷めることしないし。命を張らない戦いは戦いじゃない。」
収納から魔石を取り出す。市販で売ってる、照明用に加工された物だ。

「確かクレアスさんの案だったよね。」
ソレに投げ込み、その途中でとてつもない光を放つ。魔力を魔導法で繋いだ。導線の代わりだ。

 これで無理なら本当に無理だからね。諦めて逃げるから。

 反射板に幾つもの光線が反射し続け、増幅を繰り返す。痩せた体に足と腹の一部がない。とても軽くなったその体を何とか揺らして避けるも、それだけ威力は増す。

「オノレ、オノレ!今度会う時ハ、必ずお前ヲ母体ニィィィィィ!」
光線が当たる。体ごと、その悪意や殺意が消え去り、ようやく終わりが来たんだと実感する。

「ぐ……いきなりの戦闘で魔力使いすぎた……」
胸を抑え、膝をつく。ローブへの魔力供給は切れ、姿が現される。あまり意味はなかったけど。

 魔力量的には全然大丈夫だけど、一気に使いすぎた。

「そろそろ、帰ろう……」
何とか踏ん張り立ち上がる。兵器は全て収納し、熱くなってきたのでフードを取る。気温湿度の管理はできているけど、気分的には外したほうが外気に触れていい。

 人前は無理だけど。

 疑問は絶えないけど、王都が先決。私は奇怪に倒れた盗賊を無視して馬車へと歩いた。

———————————————————————

 ガッツリ戦闘でしたね。平和感ないですね。こんなことしてたら、また何かあると勘ぐられてしまいそうですが………………………どうでしょう、あるかもしれないしないかもしれません。

 最近ちょっと目が疲れてきたので、休憩がてら明日はステータスと兵器の説明回にします。
 場合によっては本編より長くなるかもしれませんし、めちゃくちゃ短くなる可能性もあります。

 スキルの説明については、レベル上昇につれて能力変化していくので次回のものが最新式と考えてください。
 説明が前と違うじゃないかと思われるかもしれませんが、無視してください。私自身覚えてないので、そっちのメモしておきます。
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