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10章 魔法少女と王都訪問

298話 魔法少女は挨拶に行く 2

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「いやいやいやいや!領主?なんでです?」
百合乃があたふたとしている。なんでだろうと私は小首を傾げ、早く、と急かして前を行く。

「領主ですよ!知事に会いに行くようなものじゃないです?なんでそんなフラットなんです?!そもそもなんで領主が!」
「いや、知り合いだし……一応、義理くらいは通しとこうと思って。」
「どんな関係なんです……領主と。」
驚きを隠せずにいるも、離れずについてきてる。

 忠犬……

 心で、知られたらキレられそうなことを考え、そのまま記憶の引き出しにしまう。

「神隠しなんて、私じゃなくても騒ぎになるでしょ。その報告しないと怒られるの私なんだから。」
「領主に怒られる冒険者とか見たことないです。そもそも会えないんですから。」
なんか私の見る目が変わった気がする。別に私は変わってないのに、知り合いを知って変わるなんて酷い。

 こういう人いるよね。知り合いに変な人がいると関わりたくなくなるタイプ。
 私じゃん。

 ブーメランが脳天に突き刺さり、反論できずおずおずと心の私は引き下がる。

「ネルと友達になった時点で、覚悟してたもん。私知ってたもん。」
「分かりましたからいじけモードやめてくださいっ!私がツッコミ役になっちゃいます!」
「百合乃って本当に勉強できたの?」
自己紹介を思い出し、絶対嘘でしょと確信する。

 逆に考えてみて?こんなのがテストで上位にいたらその下何になるの?
 テストの点数と頭がいいは違うっちゃ違うけどさ。

 真面目に考えていると、「失礼なこと考えてません?」といつもの心眼が開眼して心を読んでくる。

「フィリオん家、ちょっと遠いから早く歩いて。夕方までには帰りたいし。ツララも、ちょっと不安。」
死神さん相手に見たことないキラキラな目で交戦してたツララが頭に浮かび、早く帰ろうと決意する。

 領主の家だし土地が必要なのは分かるけど、こんな遠くにしなくてもね。
 いや、土地代の問題でここにしてるのか?確かパズールはめちゃくちゃ街中に建ててたし、やっぱりですます姉妹?

 考えれば考えるほど精霊2人の凄さが滲み出てくる。勝ち誇った2人がピースしてる絵が浮かび、吹き出しそうになった。

「確かこの道……もう覚えてない。」
「前はいつ行ったんです?」
「確か……魔物襲来とかその辺かな?奴隷商の国の後に過去行ったから、多分その辺。」
「なんか濃そうな単語が続々と……」
「百合乃も当事者なの忘れてない?」

 なんか自分だけ普通感出してるけど、軍服とか結構奇抜だよ?私の露出超高の服に比べたらマシだけど。
 まだ装備に見えなくもないからね。

 そう考えると更にあのチートスキルも付属してるのはずるいと思ってしまう。

 私、スキルは魔法関係3つだったからね。それが魔法消すとか衝撃消すとか、馬鹿じゃん。

 神(仮)を殺した魔法少女が言うな、とツッコまれた気がするけど、そこはいつも通り華麗にスルー。

「お、着いた。」
「……空の家の倍近くありますね。」
「そりゃ領主の家だし。」
小並感な会話を続ける。百合乃の驚きは段々と淡白になってきてる気がする。

「じゃ、百合乃はどうする?」
「そりゃ行きますよ。なんでこんな中ほっぽり出されなきゃいけないんです?空のあったかい胸の中で……」
「あ?喧嘩売ってる?」
「ひぃっ!」
首を軽く捻って後ろを向き、ギロッと睨む。

 私に、温かい胸なんてない。私にはないんだよ、燃焼する脂肪がね!

「お前達!領主様のご自宅へ何をしにきた!」
「門番にバレたっ!」
「バレたとか言うとなんか犯罪っぽいからやめて?せめて気づかれたくらいにして?」

「何をごちゃごちゃ言っている!」
「俺は報告に行ってくる。」
「おう、こっちは任せろ。」
謎のコンビネーションを発揮する門番2人。私のことくらい知ってると思うけど、何してんだろうと思う。

「ちょっと通して。フィリオに会いたいんだけど。」
「領主様を呼び捨て、だとっ!」
「ほんとになに!?え?ネタ?」

「お前達、何をしている?」
すると、覇気の薄れた困ったような声が聞こえてくる。

「フィリオ……ちょっと、教育がなってないよ……」
「仕事をしていたまでだ。ソラの姿が怪しかったからじゃないか………ん?その腕、どうした?」
「あー、バレちゃった?まぁとりあえず客間に。」

「他人の家だぞ。図々しいな……」
眉間をつねって、まぁ入れ、と一言もらい、遠慮なくお邪魔する。せっせことメイドが雑巾片手に掃除をしている姿を見ると、異世界感が増す。

 あんなメイド服、実際日本じゃメイド喫茶くらいなものでしょ。
 若いメイドなんてね、ほとんどいないんだよ現実には。

 幻想を抱くみんなは、秋葉原で偽物のメイドに萌え萌えビームでも撃ってもらったらいいと思う。

 おすすめは冷静な時。
 ちょっと笑いが止まらなくなるから。

 過去にそれで出禁にされたお嬢様(笑)がここにいるんだけど、それは誰も知らないお話。

 程なくしていつかも来た客間のソファに座り、ふっかふかさに早くも立ちたくなくなる。
 テーブルを挟んだ先にいるフィリオが、なんとも言えない顔をして私を見る。

「聞きたいことは多いが……とりあえず互いに報告をしよう。自主的に来たことは素直に感謝する。」
領主が、言う。冒険者に、言う。

「ネルのおかげだけどね。いい娘ができてよかったね。フェロールさんに感謝したら?」
「……確かに、最近は出来た子に成長してるがな……まさか、ソラの……」
小声でよく聞き取れなかった。でもなんか変なことを呟いてるのは確実。

 私は何にもしてない。何も言われてないけど無実は早めに証明するに限るね。

「で、空白の時間話すけど……実際に神隠しあってたんだよね。」
「信じられんな。そこの……」
「百合乃です。」
「ユリノも、その関係者か?」

「関係者と言えば関係者だけど……同じ被害者?って感じ。」
「偶発的なのか……?突然複数の人間が神隠しに…………何が起こったか聞いてもいいか?」
ぐいぐいと食いついて来る。少し真剣そうな表情だから、私もふざけはしない。

 私、いつもフィリオのことなんだかんだ言ってるけど、普通にいい領主だよね。
 領主なんて他に見たことないから言えないけど、フィリオは確かに領民のことを考えてる。

「なんだ、急に……」
「なんも。」
私の視線が気になったのか、気まづそうに聞いてきた。

「過去に行った。」
「ん?なんの話だ?」
「だから、神隠しの件。過去に行ってた。」
「……ふざけなくていい。ユリノ。本当は何があった?」
「過去に行きました。」

「計画的犯行か?」
私達に視線を向け、めんどくさそうにため息を混ぜて言った。その態度に私は眉を曲げる。

「本当だって。信じないならそれでいいけどね。じゃ、そっちの方も教えて。」
「そうだな。街の方は大変だった。ソラという大きな話題……人物が突然にして消え、その奴隷が街を駆けるという事件があった。」

「ツララ……なにしてんの。」
「ソラ。ちゃんと教育、です。」
フィリオに言ったセリフをそのまま返される。ぐぅの音も出ない。

「そのまま街の荒くれ者が身体中の骨を折られて見つかったという事件もあったな。」
「ツララぁ………」
頭に手を置き、ぁぁぁ、と項垂れる。流石にやりすぎだと思う。

 家帰ったら、ちょっとOSEKKYOUしなきゃね。流石に、これは。

「どうだ?俺の気持ちが少しでも分かったか。」
「え、何が?」
「今のソラがいつもの俺、そしてツララという奴隷がお前。」
「マジ?」
「嘘を吐く必要なんてない。今までしでかしてきたことを、今ここで言ってやってもいい。ソラは面倒ごとを嫌うだろ。他国に引き抜かれないように、面倒な仕事は回さないようにしてる。」
それに、と更に口を開こうとしたところで、長くなりそうな予感がして切った。物理的に。

 こんな時、持っててよかった重力操作。

 左腕がなくとも、色々できる私だった。

「まぁ……無事だったんならそれでいい。帰っていいぞ。俺はまだ、たっぷりと仕事が残されているからな………」
眉間をつねり、更に湯気の立つコップから黒い液体を口に流し込んだ。

「コーヒー?」
「あぁ。ソラの店から時折買っている。別に、買い占めしてるわけじゃない。」

「いや、ただどれくらい飲んでるかと……」
「毎日5杯以上だな。」
「異常だよ!」
フィリオの唐突なカミングアウトに机を叩き、「静かにしろ」と叱られる。

「いやいや!そこ今いいから。毎日そのコップに5杯?しかもそれ以上!?」
「今日は6杯目だな。ソラと話すんだ、心を落ち着かせなければ平静を保てない。」
「何そのストレス製造期みたいな。私そんなんじゃないよ。」
真面目な表情でまたコーヒーを口に運ぶ。……前に、重力操作で口に入る直前で止めた。

「……なんだこれは。」
「飲ませないための処置?」

「……何故そんな必要が?」
「あのねぇ。コーヒーには、カフェインっていうが入ってて、それのおかげで眠気が覚めるの。でもカフェインは摂取量があるの。フィリオのは、完全に飲みすぎ。」
心でテレスさんに販売禁止を促そうかと強く考える。この街から領主が消えかねないから。

「あんま飲み過ぎないでね。ネルから親を奪う真似はしたくない。一応私の店の商品だし。」
大きくため息を吐き、もう帰っていい?と真面目に言う。

「あの、領主さんですよね?」
「あぁ、まぁな。」
「ちゃんと寝たほうがいいです。最低1日はコーヒーの摂取は控えて、いつも以上にしっかり寝てください。その日の時間がもったいないかもしれませんけど、それ以上に質が悪くなります。未来が見えていません。」
百合乃がビシッと言う。こんな真剣な百合乃を見るのは久しぶりと思うのは気のせいだろうか。

 百合乃……度胸あるなぁ。見知らぬ領主相手によくそこまでの啖呵を。
 まぁ正論だからなんとも言えないけど。

「子供から未来を見れていないと言われるとはな…………確かに、思考が鈍ってるみたいだ。控えることにする。」
フィリオは諦めたようにコップを机に置き、時間を取らせたな、と一言言って帰らせてくれた。その後の百合乃は「緊張しました………」と精気が抜けたようにだらけ切った。

 オンとオフの差、激しいね。

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 なんか長くなってました。コーヒーの話が長すぎましたね。でも、とりあえずフィリオにはカフェイン中毒になって欲しかったんです!

 特に理由はないけども!
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