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10章 魔法少女と王都訪問

300話 魔法少女は家族会議

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 時は昼頃。ロアとサキを家に呼び出し、第1回関係者半分除き、無関係者含む家族会議が始まっていた。

 今回は昼食を一緒に食べるという名目で集まってもらった。
 クミルさんは花の手入れを終えて、家に帰ったため今回は不在。ツララは死神さんと戯れ中。

 現在、昼食を摂りながら話し合いをしている。先日食べたトルティーヤ(?)を真似て、生地だけそのままに具材を一変させて食卓に並べてある。

 生地はよく分からないから適当に粉を混ぜて捏ねて焼いた。
 具材はこの世界のトマトもどきレタスもどき挽き肉、燻製肉やチーズ……とりあえずたくさん用意した。

 ま、食べきれなかったらゴートゥーザ収納すればいいだけだしね。

 どうでもいいけど、この世界で食的マウントを取ることはできそうにない。私より料理うまい人は腐るほどいるし、しかもラノベ定番の日本にある知らない食材、食品で無双とか無理。

 逆に日本にないやつもある。逆にマウント取られてる。

 チーズとかの発酵食材、じゃがいも、きのことかの一部毒のあるものとか、普通にあるし。先人の知恵って恐ろしい。
 地球みたいな情報化社会じゃないから、その街の気候とか土地の問題で育たないやつとかは無いし知られてないけど。

 話がずれていた。いつの間にか口にはトルティーヤで埋め尽くされていた。

「それで……ソラお姉ちゃん、何か話したいことがあるんじゃ……?」
「お姉ちゃん、これおいひい!」
「サキ、食べる時は喋らない。」
もっ、もっ、と勢いよくがっつくサキの口元をハンカチで拭いながら、困った笑みを浮かべて見守るロア。

「ほら。ロアも食べていいよ。ここにいる百合乃は図々しくも二人より早く食べ始めてるんだから、遠慮はいらないよ。」
「はひ?」
「……大きくなったね。」
それを何処かと捉えるかはその人次第として、そろそろ話を始めようかと水で口の中に入ってるものを流し込む。

「ロアさんや。時に、テレスさんとネトラーさん、2人の関係についてはご存じで?」
「どうしたの、ソラお姉ちゃん。……お父さんとネトラーさんですか?仲は、いいと思いますけど……」
しっかり答えてくれるあたり、いい子だと思いながらどことなく含みがあるように感じる。

 ネルは分からなさそうに首を曲げてる。

「可能性が高いってだけなんだけど、2人、再婚するかもしれない。」
「……そうですか。でも、それって勝手に話しちゃっていいの?」
言葉の豪速球。腹に風穴が開く。

 テンションだけで決行したけど………こんなデリケートな話、そもそもする話じゃないじゃん。ロアに指摘されるなんて……フィリオと同類じゃん。

 遠くから、おい、とツッコまれた気がするけど、そんなものは幻想にすぎない。そう、幻想だ。イマジン、イマジナリーだ!(?)

「最近、お父さんもようやく安定し始めて、そろそろかなって思ってましたから、気にしなくても大丈夫です。」
「……そうだね。まぁテレスさんも、あの時は相当追い込まれてた時期だったろうし、幸せになるべき時かな。」
2人揃ってコップの水を飲む。急に静かになったので、ちょっと気まずい。

「ということは、2人にもお兄ちゃんができるということです?おめでとうございます。」
「お兄ちゃんっ!?」
「そうですよー。わたしも昨日初めて見ましたけど、かっこいいお兄ちゃんでしたよ。」

「レインさん、お兄ちゃんになるんですか……ちゃんと呼べるかな。」
「どう呼んでもいいと思うけどね。」
話すべきことはあっという間に終わった。あとは起こるべき事実を語るだけ。……だけなんだけど。

 あの2人のことだ。前のことでテレスさんは何か引け目に感じてそうだし、ネトラーさんはがっつくタイプじゃなさそう。
 現状維持で、終わりそうなんだよねぇ。

「ソラお姉ちゃん、なにかあった?」
「やっぱり何か一押ししないと、結婚に至らないかなって。ほら、あの2人だし。」
私の頭には、うふふと笑みを浮かべたネトラーさんとにこやかに笑うテレスさん。これ、両方攻めれるタイプじゃない。

「確かに……お父さんは難しそうですね。ネトラーさんのほうは……」
「だから、どうしようかなって。」
ロアがトルティーヤに小さくかぶりつく。そんな中私は、せっせこ片手で具材を乗せる。

 あー!箸で皿が移動する!食べずらいったらありゃしない。

 いっそ重力操作で……とも思ったけど、流石に使いすぎは体が鈍っちゃうのでやめる。

 魔壊病、早く治れ……魔法が使えないのって地味に大変……

「主、帰った。」
「あーお帰り。手洗ったらこっちにおいで。」
「うんっ。」
途中ツララが死神さんをリビングに捨てて帰ってきた。いくら弱体化させてるからって、死神さんが……

 ツララ、一体どの方向に進化しようとしてるんだろう。

「主、なんの話してた?」
「ロア達のお父さんが再婚するかもって。でもこのままじゃ無理そうだからあとひと押し欲しいね、って話してた。」

「ん。」
少し時間を置いてから返事が来た。隣を見ると、もう口の中に何かを突っ込んでいた。

 行動が早いね……
 いつか叛逆とか起こしそうで怖いよ、私。

 将来敵にならないよう、優しく接しようと心に決める。

「旅行。」
「ん?どうしたの、ツララ。」
「あたしの親は、たまに2人でどこか行ってた。旅行がいいと思う。」
もぐもぐと食べ進めながら、合間合間にそう伝える。

 旅行、旅行……そうだ旅行だ!
 ちょうど王都に行きたいって思ってたし、私も休みたかった。
 ……資金の方はどうしようを

「フィリオにせびればいいか。」
「ソラお姉ちゃん、領主様に何するの!?」
うっかり声に出ていた。変なところが切り取られたせいで、まるで私がカツアゲするみたいな言い方になる。

 根本的には間違ってないんだけど。

「ツララ、ありがとう。そうだ、王都に行こう!」
「コンビニに行くみたいな感覚で旅行行ける世界、凄いですね。」
百合乃もツララに負けず劣らずもぐもぐ。ちゃっかりツララと同じように肩を寄せてきてる。

 自重はどこいった、自重は。

 私がジトっと見つめると、百合乃はパチっとウインク!ぶん殴ってやりたかった。

「店の長期休暇にしよう。時期的に本格的に暑くなってきた時期だから、夏休みっぽいし。」
「夏休み……?あ、学園の長い休みのことですか。」
「え、あ……まぁそんなとこ。それっぽい時期だし私達も乗じて旅行に。」
この世界の人達は学校なんてほとんど行かないのを忘れてた。まぁ通じたは通じたのでよしとする。

「社員旅行にしよう。ティリーが流石に可哀相だからね。もちろんロア達も一緒。」

「主、あたしは?」
「ついてきたい?ならいいよ。」
「ん。」
嬉しそうに微笑み、食事に戻る。この小さな体の一体どこにそこまで詰まるのだろうか。

 とりあえず方針も決まったし、実行は明日からにしよう。
 あれ?一旦長期休暇するのにチラシだけでいいんだっけ?商業ギルドに問い合わせとかした方がいいかな。

 前は、知らず知らずのうちに犯罪者になりかけたからね……

 行けばいっか。時間は空いてるし。……私、無職だから。

 うっすらと涙が浮かぶ。情けない。

 楽しい食事会に涙はあわないので、ローブで拭う。脈の特殊効果によって速乾性を持つそれは、みるみるうちに跡を消す。

「みんなでこの任務を成功させよう!」
「おー!」
「んー!」
「やーっ!」
「お、おー?」
色々振り切って拳を天に向け、叫ぶ。全員ノってくれたので、私の心は砕けずに済んだようだ。

 今の私、心も体もボロボロすぎない?

 亡くなった片腕をさすり、何より解決すべき事案を忘れてたことに呻く。

 腕、ほんとどうしよう。

———————————————————————

 こんな感じです。章名の通り、今回は再婚作戦もとい王都社員旅行です。内容が内容ですので短くなってしまっても温かい目で見守って許してやってください。
 ここまできたら後戻りはできないし、どこまで続ければいいかも分からない。

 ほんと、どうしよう。
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