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9章 魔法少女と天空の城
291話 魔法少女は帰還する
しおりを挟む美少女2人が首に刃物を首に近づけている光景。一瞬ギョッとするけど、何とか顔には出さず、キリッと手を差し向ける。
「空……」
「随分苦戦してるみたいだね。手伝おうか?」
「その必要はあるまい。」
答えたのは龍。固定させた手首から力が抜け、カランとその手に握っていた剣を落とす。
「ん?何であなたが?」
「見ての通り。我に戦意はないわ。龍神様が決めたことに口を出すほど、落ちぶれてはいない。」
「あ、そう。なら圧力は解くね。」
手首を締め付けていた圧力を消し、2人は解放された腕を引っ込めて各々距離をとる。
……龍神の手先の癖に聞き分けがいい?
何か裏があるかもしれないし、警戒とかしたほうがいいかな?
あれだけのことがあって信用とか無理だし、そもそも初撃あいつだったし。
「あなたが、あなた様が次代の龍神様。一生忠誠を尽くす所存です。」
「わたしに対してはあんなのじゃろり一歩手前だったのに!?」
百合乃が叫んでる。まぁ無視するとして、今聞き捨てならない言葉が飛んできた気がする。
龍神様って言ったよね、この龍。
「誰が龍神だ誰が。嫌だよ無理だよやりたくない。却下棄却忘却。はい、私はただの魔法少女。」
「何を言ってるのだ、龍神様よ。」
「いや、そもそも私龍じゃないし。」
「神が神でないことはご存じではないかの?」
「いや知ってるけども。」
「なら、それは些細な誤差にしかならん。龍神様は龍神様だっ!」
急に見た目相応な可愛らしい猫撫で声をしてくる。いきなり気に入られようとでもしてるんだろうか。
……吹っ飛ばしたいけど、そんな魔力ないし……重力操作する?あ、いいこと思いついた。
軽く龍を押すと、簡単に離れてくれた。無礼は流石にしないらしい。
「えー、コホンッ。只今をもちまして、私は龍神を引退します。やったね、パチパチー!」
「なっ……!」
「それでですね、後任はあなた!あなたが龍神になりましょう!さぁ、是非是非、龍の神たる所以、見せちゃってください。」
グッとサムズアップする。めちゃくちゃ引き攣った顔をしてる龍。私はもっと嫌な気分だったことを忘れてはいけない。
「え?我が?え?」
「はい、そうです。つまり、あなたは今日から龍神なので頑張ってくださいね。じゃ。」
ぽんっ、と手を肩に置き、手を振って百合乃の元に行く。
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「何。そんな叫んで。」
「え、今から我がかの?」
「そう言ってんじゃん。聞こえなかった?あ、ちなみに未来には連れてけないからここから頑張ってね。龍を頼んだぞって龍神が私に言ってたし。」
「ならば主がやってくれぇ!」
「私は龍神様じゃなくて魔法少女なんで、よく分かんないなー。」
片腕を奪われたお返しを、部下に払ってもらうことにした。
魔法少女様の片腕は一生分だよ。高くつくよ。
「………っ、空!腕が!」
百合乃がようやく気づく。
まぁ血も出てないしね。ローブで隠れてもいたし仕方ないっちゃ仕方ない。
気づいただけマシかと、左腕があった部分をヒラヒラとしてみせる。
「痛くはないけど不自由。そんだけ。逆に命があるだけで御の字だよ。百合乃は五体満足そうじゃん。よかったね。」
軽く傷ついてる部分は仕方なくヒールを極小にかけてやり、それでも魔力がごっそりと減り、枯渇する。
「魔壊病厄介……」
「主!魔壊病を患ったのか!?」
遠くから一瞬でやってくる龍。普通に怖かった。
「主、見せてみろ!」
目に魔法陣が浮かぶ。龍法陣かな?と予想する。
「軽症……かの。よかったな、主。魔法使いが魔壊病などとは、初めて聞く事例かもしれん。」
「え?魔力の使いすぎとか他者からの供給とかでなるんじゃないの?」
「それを知っておるから使わんのだ。もし使う時が来ても、通常なら直ぐに死ぬ。他の原因に魔力操作に慣れていない者がなるのだが……魔壊病の生存者か……」
龍が考え込むように顎に手を添えた。
そんなに珍しいのかな。そろそろ帰りたいけど、帰してくれないかな。
「空空。魔壊病ってなんです?」
「あー、魔力の使いすぎとかでなる1種の魔力暴走的ななにか。」
「死ぬとか言ってませんでした?物騒すぎません!?」
「まぁ私、軽症だし。最速で1ヶ月って書いてあった。」
ゴニョゴニョと会話をして時間を潰す。
「じゃ、帰ろうか。」
「えっ。放置してっていいんです?」
「まぁ別にいいんじゃない?減るもんでもないでしょ。」
「確かに減るものではないですけど戻るものでもないですよね?もしこのまま帰ったら会えるの何百年後なんです?」
「知らないよ。今ここ何年後かなんて知らないし。人魔戦争いつ起こったとか私知らないよ。」
「帰ろうとするでない!」
龍神(笑)が叫んで止めてくる。何だろうと振り返り、何もないので戻る。
「何も戻ろうとしてるのだ!」
「家に帰るのが悪いことなの?」
「そうは言っとらんが……」
「とにかく帰って寝たい。」
無視して話を続けようとする作戦に出た。酷い神(笑)だ。
「主の場合、魔壊病の完治は見込めるだろうが、気を抜きすぎるでないぞ?魔力を温存した状態で何週間も経過を見れば治るだろう。なぁに、龍からしてみればそんなもの、人の1秒にも達しんわ。」
「アイアムヒューマン。」
「キュウッ!」
キューも返事する。
あれ?いつの間にきたんだろう。まぁいいや。ちょうど都合もいいし。
「じゃ、神様頑張ってね。未来で待ってるから。」
「あ、なんかすみませんです。元気出会いましょうね!いつか知りませんけど!」
「我はいつ現れるか分からん者を待たなければいかんのか!?」
「そこは気合いで、です。」
「神を何だと思って……」
「元から名ばかりの神なんだから気負いすぎなくてもいいよ。」
私はキリッと振り返って言う。「どの口が言うのだ」と睨まれてしまった。ならやれと言うことだろうか。返答は絶対に嫌。これ一択。
「キュー、帰り方とか分かる?」
「キュウッ!」
「うん、分かるってさ。」
「空はいつの間に人語以外を理解できるようになったんです?」
「さぁ。」
そんなんこんなでキューに向き直る。2人共キューの目の前まで来て、私は軽く撫でる。
「よし、それじゃあやっちゃって。」
「キューッ!」
「わぶっ!」
毎度おなじみ閃光が顔を覆う。もう慣れて何も思わなくなってきた。
慣れって怖いね。こんな異常事態すら普通に感じるんだもん。
意識は消えない。白い景色が長く続く。
パッと景色が差し代わった。
「うわっ……もっと丁寧に扱うべきでは?」
百合乃は何かに文句を言う。特に辺りには何もないので何かだ。
って、ほんとに何もない。赤い部屋。簡易的装飾や光量はあるけど、ただの洋風な赤い部屋。
キューもいないし……
「空、何か来ます。」
「ほんと便利だね、それ。」
百合乃の指日指す先、そこに注視していると、トントントンと布を踏む音が続く。
あ、これ赤い絨毯だったんだ。おいそこ、感触で分かるだろって?分からないことも時にはあるんだよ。
音が近づいてきた。
「龍神討伐、お疲れ様でした。我が神に変わり、感謝を申し上げます。」
そうして現れたのは、抑揚のない女性の声。そして……
「キュッ~!」
キューだった。
———————————————————————
意味分からない話でしたね。
とりあえずですけど、空は龍神にはなりません!はい、なりません。
他にも未来と過去の関係やらごちゃごちゃはもう適当に感じてもらって。
元龍神が死んだことによって~とか、帝龍が現龍神になったから~とかの面倒ごとは、とりあえず創滅神が何とかしました。
はい、これでオッケー!ツッコミはなしで!
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