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9章 魔法少女と天空の城

290話 魔法少女は神殺し

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 訪れた静寂に、何の言葉も発せずに膝をついた。魔力供給なしの状態であそこまで神経をすり減らしたんだから、当然と言えば当然だ。

 興奮冷めやらぬ~とか言うけど、本当に興奮した時は、もう何もかも燃え尽きた感じがするんだよ。今味わってる。

「幻肢痛ってのはまだ来ないみたいだね……来ないでくれると助かるけど。治らないって聞くし。」
一瞬で消し飛んだ左腕は、その破壊スピードのおかげで血が溢れるってことはない。トロイを収納し、一応右手を当ててヒールをしてみる。

 ……治らない、か。こんな欠損、いくら魔力があってもヒール程度じゃ治んないよね。

 左腕がない。そんな感覚を今一度感じ、ため息が漏れる。

 龍の主と戦って、生きていられたことがまず奇跡的なんだろうけど、ロア達に顔向けできないや……

 疲れ切った体に鞭打って、何とか立ち上がる。色々龍神に仕込まれたから、ステータス確認も兼ねてだ。

「うわっ、なにこれ。」
何もない空間に、私の引き攣り声が響く。


 ステータス

『称号』
 世界を変える者神殺し

 名前 美水 空 ※魔壊病軽症発症中
 
 年齢 17歳

 職業 魔法少女

 レベル 228

  攻撃6580+1 防御6420+1 素早さ7150+1

 魔法力8110+2 魔力8510+2(+神影)

 装備 魔法少女服 魔法少女ステッキ

 魔法 アクアソーサーⅩ 魔導書Ⅵ(-7) 
 神速Ⅹ×1&Ⅲ ファイボルトⅩ+1 万属剣Ⅹ+1
投擲Ⅷ+1 鑑定眼Ⅷ+1 食材生成Ⅴ+1
 魔導法Ⅹ+1  トールⅩ 物質変化Ⅷ
空中歩行Ⅹ+1 アースアイスⅩ
 エアリスリップⅩ 魔力喰らいⅩ+1 混合弾Ⅹ
暗黒弓Ⅹ 流星光槍Ⅹ 各種地龍魔法Ⅴ×3&Ⅹ
 一級建築魔法Ⅲ 農業者Ⅱ 気配察知Ⅹ
記憶念写 裁縫者Ⅰ アイスシールド
 サンダーサークルⅩ ファイアサークルⅩ
アクアサークルⅩ ウィンドサークルⅩ
 脈探知Ⅹ 金属加工Ⅷ 空間伸縮Ⅹ
重力操作Ⅹ(+圧力操作 重力変換)
 魔力高速回復Ⅹ×1 補正操作Ⅹ

 スキル 魔法生成 魔力超化 魔力付与
 万能感知 魔法記憶 詠唱破棄 覚醒
  魔法分解 振れ幅調整 身体激化
 水竜之加護 調教 基本能力上昇
  人神魔力 運命 能力値上昇
 地龍之加護 各種地龍能力
  ステータス画面共有 奴隷能力補正
 奴隷成長共有 友好 叛逆境 空力
  思考分離 重力魔法 龍陣之御業

  SP   69520

 とりあえず上からツッコんでおこうかと視線を移す。

「神殺し、ねぇ。大層な名前つけちゃって。私、ただの魔法少女なのに。」
いや誰がだと総ツッコミされそうな言葉も、今は誰も聞いていない。

「魔壊病?」
鑑定眼でそれを見る。魔力がどっと失われるも、キューが盾に乗って近づいてきて、「キュッ」と言いながら魔力を繋ぐ。


 魔壊病
魔力使用時、必要以上の魔力を消費してしまう病気。軽症の場合は魔力量によるが、死ぬことはあまりない。重症は魔力を使うだけで死亡率80%を超える。全治1ヶ月(軽症)一生(重症)程度。原因は無理矢理魔力使用したり、他人の魔力を無理矢理供給など。発症者は子供に多い。


「いやなんこれ。」
ここまで詳細が現れたことにより、私は結構困惑する。

 あ、そうか。魔力を使いすぎるってことは効果もその分高くなる。自分にも環境にも悪いね。

 って私、その原因全てやってるんだけど?

 怖くなって急いで供給を切る。キューは「キュウ?」と不思議そうに繋げようとしてくる。

「やめて、私を殺す気?」
「キュ?」
なんと言う可愛さだろうか。左腕があったらわしゃわしゃしたい。

「つまり私は病気と。左腕無くして、魔法もあんまり使えない。アイアム木偶の棒。」
膝立ち、そして無表情でそんなことをほざく。可哀想な人に成り下がってる。

 レベルステータス、結構上がってる。
 ん……?あ、そうか。残った龍神の力か。あの圧倒的力量は技術による物だから、それを抜きにして経験を全て割り振った感じかな。

 神影、神の加護をもらっちゃった☆的な?
 ……やばい、色々頭おかしくなってきた。

 元からだというツッコミは、私が残さず吹き飛ばしておいたのでそんなことを言われることはない。

「あとは重力操作&魔法。スキルが魔法なんだね……まぁ、概念的な物だし仕方ない?のかな。」
いつか、『私は全ての概念を操る者ッ!』とか言って体をジョ○ョの様にくねらせたいなどと考え、左腕を見る。

 まず、こっちが先かぁ。

 この世界の義手技術に土下座で信じることにする。この土下座は、決してないことをないと信じるための行為ではない。ただ、感謝してるだけ。だけったらだけだ。

「後は普通に増えてるっと。思考分離とかあの時の適当な思い込み、マジでスキルになってんだ。」
およそ左腕消失直後の人間のテンションではないけど、とりあえず大丈夫なら大丈夫だ。

 私は大丈夫、だから大丈夫なんです。

 某環境省大臣の構文で一言を綴る。

「……あ、百合乃。」
そこで思い出す。空間を分けられて離れ離れになった相棒を。

 生きては……いる。魔導法の指輪の反応もあるからね。

「んー、助けに行こうかな。」
そう思って立ち上がる。

「あれ?どうやればいいの?」
初手で躓く。

 龍神の魔力で何とかならない?

 そう思って使ってみる。

「……ここは神の介入がないってわけね。だから龍神はあぁもペラペラと。」
目のは見えない魔力のドギツイカーテンのようなものがかけられていた。触れることもできないけど、そこにある。そのからは認識阻害でわからないようになってる。

 これが龍神が過去に戻れた理由、ね。自分だけの空間を作って、ここを移動させたと。それで自分は出られないから、ここで待機……それで呼び込んだわけね。

 最後のほうは全然的外れだったりするけど、私は知る由もないので関係ない。

「お、発見。あとは削るだけか。」
魔力を流す。魔壊病とやらでキツい、キツイけど力押しで何とかする。重力操作でなんとか止める。圧力操作は、物によっては意味が無かったりするのでそこが欠点だ。

 そもそも使い方が違うっていうね。まぁ、応用できるものは出来るだけしないとダメだ。
 それが命取りになるかも。

「うーん、魔力節約に重力弾でも打ち込むかな。」
ポケットの中にはトロイが1つ、も1つ叩いてもトロイは1つ。ただ1丁のその対物ライフルを片手に前に出る。(というか片手しかないんだけど)

 重力を消して浮かせながら装填。これ結構楽なんだよね。

 今一度トリガーに手をかけ、撃ち込む。激しい音は鳴らない。重力で全てを吸収させてるので、エネルギーが漏れることはない。

 空間に亀裂が入る。

「うぉ、おぉ?そろそろ魔力で無理矢理行ってもいいかな。」
手探りで魔力をぶっ込む。

 あれ?魔力がごっそり無くなるだけで、特に何も……いや、気のせいだ。きっと気のせいに違いない。

「ん?何あれ……」
よく目を凝らすと、空間の先が透明になって見えてきた気がする。サーベルを持って斬りかかろうとする百合乃と、同じく斬りかかろうとする少女。どんな光景?

 え、ん?あぁ!もう!圧力固定!

 無理矢理圧力で手を動かなくさせる。両者とも、首あたりで手がぴたりと止まる。

 あ、上手くいった。

 ついでにここまでするために空間を削った魔力も。私の魔力は、もうすっからかん。病に侵されながら頑張る魔法少女……健気でいい子だ。

 わけ分からな思考になってきた。とりあえず何か喋ろう。

「……もっと簡単に壊れてくれてもいい気がするんだけど。っちょ、片手きつ……」
文句だった。文句が声が漏れる。疲れてるんだから仕方ない。

「空!」
百合乃の声が聞こえてくる。

「……龍神様!いや、託してくださったのか。彼女が、代わりかの。」
のじゃろりか?と思うも、のじゃはないのでがっかり。

 あ゛ぁ~……これ、結構やばいかも。魔力的にも。真夏にチェーンソー振り回して木を伐採するくらい疲れる。
 やったことないから知らないけど。

「遅いです!」
「黙ってよ!集中してんだから!」
百合乃を喝で黙らせる。

 こっちはこっちで限界なの!助けに来てあげてるだけマシだと思って欲しい。

 それから何回か口論になりかけたけど、何とか阻止。(脅したとも言う)そして最後には空間が割れ、元の景色へと姿を戻していく。

「よし…………迎えにきたよ、百合乃。」
違う意味で死にそうな私は、最後の力を振り絞って言う。

———————————————————————

 今回、魔法の表記はバグってないはずです。今までは見にくかったですからね。どうして執筆時とプレビュー時で文字の入る量変わるんでしょうか。やりにくいったらありゃしませんよ。

 ちなみにですけど幻肢痛は60~80%の発症率で、4日以内にほとんどの人が発症するそうです。つまり、まだ空は発症のリスクがあるということ!

 まぁこんな緩い物語で腕がなくなる時点でちょっと方向性違う気がしますけどね。
 まぁ、相手が神なんだから仕方ない。
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