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9章 魔法少女と天空の城

287話 魔法少女と龍神 (後編)

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 龍神は少しの唖然の後、すぐに正気を取り戻して現状を把握しようと俯瞰する。
 私としてはもっと驚いて欲しかったけど、そこは流石神と言ったところだ。

 半自由落下メテオ。脈を捻ってとんがった棒状の何かを真上に限界まで引き伸ばして、更に更に空間伸縮で高さを上げる。
 これ、脈の引き伸ばしパワーと合わせて実質宇宙からのズドーンと同じくらいの威力だと思う。

 適当だから知らないけど。

 脈に魔力を流すと電撃を発生させるようにして、加速。高速で落下する棒を加速させ、後は自由に落下して~って感じのやつ。とんでもなくヤバめな威力になってるけど、流石にいろいろ耐えられなかったみたいだね。

「こほっ………もうちょっと遊んでこうよ。創滅神相手にするんなら、粘り強さを見せてくれないと。」
そう余裕ぶるけど、実際には勝たないと人生終了ゲームオーバーなので、もういい加減ヤバめだと焦る。

 無限魔力も、生命活動促進させるだけだからね。死んじゃったらもう意味無いわけよ。
 だから、ね。なんとか勝たないと……

 ラノスの残弾数を確認し、その銃口を龍神に向ける。

「………ふむ。確かに、この世界にない攻撃は対処しきれんようだ。………まず、神がそのようなことがない。……盲点か。」
顎髭を触りながら、皺を寄せる。

「いや、今更?」
「……何がおかしい?……お前こそ、なんの確信があってその言葉を吐いた。……まさか、攻撃を避けたなどと言わぬな?」
無駄に威圧感がある。普通なら反論の1つできるはずないけど、私は私。

「神が人の攻撃を避ける。これおかしいって思うの普通じゃない?」
「……ディー坊が目をつけた人物だ、何があっても不思議ではない。」
こんな議論をしてても意味はない。少し休めることのできた体に鞭を打ち、銃を2丁構える。

「……む、なら、こちらも。」
突然若くなった気がした。皺がゆっくりと消え、体の端々から銀色のオーラのようなものが溢れ出し、背中から2本の翼を出す。それは、龍の神にふさわしい風貌だった。

 ……水竜さんが言ってたけど、龍ってのは生きてるだけで強くなるから古い龍ほど必然的に強くなるって言ってた。
 龍神っていうくらいなんだから、それなりに生きてる。その年月を、解き放った?

 そんな賢しらし気な考えをし、ふと私は確かに龍神の煽りはもっともだと感じた。

「神化。元の人の姿など、魔力の器に過ぎん。これが本当の、神の姿だ。」
声も数段若返ったように思う。それでも荘厳さは残し、威圧感は増されてる。力強い声。

 ……ものすごく何かが変化したと言われれば……違うんだよなぁ。
 こんなこと言ったら瞬殺されそうだから言わないけど。

「え、なっ……!」
宙に浮いていた。咄嗟のことで重力操作でストンと地面に落とし、周りを見渡す。何もない。そう、何もないのだ。

 龍神は!?

 慌てて探す。いない。

「はぁっ!」
今度は逆に押し潰されそうになる。これもなんとか重力操作で軽くし、それでも重いので手当たり次第に左手の銃、パクトを放つ。ドバンッ!と、空気が弾けるような音がする。

 衝撃波発生銃。微妙だけど微妙に使えるやつ。

 フッと力が抜ける。今まで堪えてた力は行き先を無くし、腑抜けてしまった。

「ふっ。ただの衝撃波か。少々身構えてしまった。」
声が聞こえてきたことで、冷水を浴びせられたのかと思うほど肩が震え、思考は正常に戻る。

 神速……?それも視認が不可能なほど?
 ちょ、それ鬼畜くない?

「あ、私も神速使えるじゃん。」
そう言うと、私は消えるように……とはいかないものの、すごいスピードで走り抜ける。

「キュッ!キュ~!」
キューはどうやら創滅神が怖いのかなんなのか、狙われないみたいなので放っておく。それより私の危険が危ない!

 逃げるが勝ち!そしてあわよくば殺す!

 見えない敵相手に、ラノスは使えないのでパクト、他にも爆発石ことプローター、ステッキで魔法と爆発の乱れ撃ちをする。
 阿鼻叫喚の地獄絵図とはこのことかって感じだ。

「適当か。もはやこの程度。」
向こうは完全に私を視認してるようで、時折殴ってくる。その度私は「ぐへっ!」と声を上げながらヒールで治す。精神的苦痛は計り知れない。

「ちょ、そんな変則的な行動……」
そう言いながら神速で逃げ続ける、その先で、何か柔らかいような硬いようなものにボブッとぶつかる。

「終いにしよう。お前の連れと共に。」
銀色の巨大直方体が4つ。無慈悲に、私に降り注いだ。魔力が触れるたびに暴走し、私がちょっと触っただけでやばい代物だと分かる。空中に浮いてる兵器群を即座にしまい、出し惜しみしてる暇なんてないと叫ぶ。

 まずは特殊体質でご都合主義をつけて……そのまま!

「覚醒!」
決して目の前の死に怯えて使ったとかではない。決して、断じて、絶対に。

 違うったら違う!私がそう言ったらそうなんだよオーケー?オーケー!

 そんなこんなのうちに、瞬く間に服が変わる。と言っても、ローブを着てるから下はよく分からないけど。

 ともかく変身した。これぞ魔法少女!だけど、その姿はまるで機械チックなSF物の機械少女みたいな黒い戦闘服になっている。

 穴あき手袋とか、どうやって穴塞いでるんだろう。不思議。

 何回か覚醒は使ってるけど、何かと不思議は多い。

「なんだと?……まだ隠し持っていたか。だが、この程度。」
龍神が呟く。その直後に、こめかみスレスレにラノスの特殊銃弾が飛ばされる。雷を纏っていたため、少し髪が焦げついた。

 神の髪がってね。あれ、つまんない?

「油断した。が、次はない。」
焦りは見えない。代わりに、開いた瞳孔が私を強く見つめる。まるで監視するように、ねっとりじっくりと。

「キモいんだけど。」
「それがどうした。」
「いや、キモいんd……」
「それがどうした。」
「あ、はい。」
覚醒状態の私すら諦める状況。龍神パナい。

 ってそれどころじゃないよ!
 魔力喰らい!全力ブッパ!

 暗紫の霧のようなものが私の手から渦を巻いて現れる。腰に挿したステッキからも自動発動させ、幾つもの衝撃波を生み出す。
 霧と衝撃。ほんの少しの隙を生み、なんとか直方体を消そうと奮闘する。

「魔法力4倍ぇだぁ!」
どこぞのスーパーな野菜人のようなセリフで霧を魔力で底上げさせる。それは、色々吸い込みながら直方体全体を覆った。すごい勢いで魔力が吸われた。

「………ふぅ、なんとか……なっ、た……」
汗を拭いながら、息を整える。

 魔力喰らいを発動すると、供給される魔力も吸い込んじゃうんだよね……

「この程度か。正直、あともう1段階は欲しい。でなければ、同じ土俵にすら立てないぞ。」
「ちょ、ぐわっ!」
見えないくらい速い攻撃を、完全に勘で防ぐ。同時に振動による魔力妨害も受け、さっきの魔力喰らいと一緒で魔力枯渇に陥る。

 無限魔力供給とかいうチートをまさか突破されるなんて……
 自業自得なんだけども!

「防ぐか。まぁいい。」
勢いで吹っ飛び、宙に浮く私に腕を伸ばす。

「龍の息吹を、たらふく喰らえ。」
銀のオーラが呼応するようにでかくなり、魔力ともなんとも言えない力が集まる。その1つ1つが私を簡単に滅ぼすことができると勘で感じ、鳥肌が立つ。

 えっ、ちょ、避けれないってこれ!魔法なんて魔力ないから無理だし、スキルで防げるやつない!

「終わりだ。」
「ご都合主義!仕事しろぉ!」
自分の特殊体質に文句を叫ぶも、放たれる一条のレーザーは渡しに一直線。わぁ、死んじゃうな。

 魔力がないんだったら無理矢理捻り出すとして、何が有効的?攻撃魔法じゃ一瞬で壊れるだけだし、スキル?発動できるやつある?兵器群はまず取り出せるかが先だよね。
 手元にあるのはスペア1つとラノスとパクトまともに張り合えるものじゃない……

「ん?」
1つ、気になるスキルを見つける

 でも、これ……だけじゃ無理だよね。
 運命みたいに、何か行動起こさないと変わらないわけだし。

 そもそも運命はもう使ってクールタイム中なんだけど。

 時間がゆっくりと流れる感じがする。私は、唯一この強大な力をねじ伏せる魔法を発見する。
 これをスキルと併せて使えば、あるいは。

「逆境を、跳ね返す!」
魔力はない、でも、使う。難しくて使えないと、それは世界に直接干渉するからだと、そう考えていた魔法。

「悪あがきを。」
レーザーは迫る。理不尽ではない。それが、神なのだからしかたない。私は願う。使えるスキルは使った、今できる努力は全てした。

「曲がれぇぇぇぇ!」
レーザーはもう触れる位置まできた。空いている左手に苦し紛れの球、ご馳走様ですを投げる。触れた瞬間、魔力が溜まったらレーザーを放つはずのそれは魔力暴走で破壊される。0.1秒も稼げなかった。後の壁は自分だけ。肉壁だ。それでも私は無理矢理にでもソレを使う。

 あと、あと少しで……できる気がする。
 ご都合主義の底力、舐めんじゃない!

 左腕にレーザーが当たる、一瞬でその位置のローブが消え、肉が削がれる。歯を噛み締め、痛みに耐え、死ぬまでレーザーを防ごうと決意する。

「あ゛ぁぁぁぁっ!」
肘から先と左腕が、消し飛ぶ。地味に粘った自分の防御力のせいで、余計に痛みを感じる。それと同時に、防御力約20000の腕をほとんど拮抗することなく消し飛ばずその威力に、内心恐怖を覚えた。

 やばい、死ぬ。あと1秒もかけられない。……どうすれば……

 ふと何かが目に映る。黒い布、そして手袋が地面に落ちようと宙をひらひら舞う瞬間。

 マジ?一緒にご臨終したかと思ったのに……腕消えても、その外消えないとか……

 それでも、そんな布切れに命を救われてきたんだと思うと皮肉に感じる。

 そしてその時は来る。

「がはあ゛ぁっ!」
痛みを声に変える。でも、声が出たとはそう言うことだ。

「…………………なんという、成長スピード。」
驚愕に染まる龍神の顔。

 できた、重力操作!

 今発動した魔法名を心で叫ぶ。

 空力は世界に干渉する力。それがスキルになるなら、これもなってもおかしくない。
 よかった、ギリギリ2つの力でここまで漕ぎ着けた。

 特殊体質のご都合主義。いつだって、勝利は主人公であるべきだ。

 叛逆境。逆境を乗り越える。でもそれは、どんな逆境も押しのける理不尽な力ではない。ただ、強大な敵に打ち勝とうと努力する主人公に、ささやかなる想いを届ける力。

 フッと笑う。苦痛で顔が歪むが関係ない。

「そろそろ、私のターンでもいいんじゃない?」
龍神に向かって言葉を叩きつける。

 私のターンは意地が悪いよ?あなたのターンは訪れない。

———————————————————————

 重力操作覚醒!そして重力操作がついにスキルとして認められ、魔力なしで再現可能に!

 まぁそうですよね。魔法は元からこの世にないものですけど、重力は自然にあるものです。その重力を操るのに、魔力とかそんな大そうなもんはいらないわけです。

 その辺の考え方、私は適当ですが。
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