上 下
304 / 681
9章 魔法少女と天空の城

284話 魔法少女と龍神 (前編)1

しおりを挟む

 レーザーの雨は晴れる。何故私は無事なのかというと、他の兵器の反射魔力光(名前はレフ)を配置して、その都度反射させた。

 ちなみにレフの能力はありとあらゆる光力を魔力に変換して、魔力付与と補正操作で増幅、それを高温度の光線に変化させるっていうやつ。

 レーザーと光線。意味同じだし使えるかなって。
 製作者私なんだけど。

 そんなどうでもいいことを脳内で思っていると、そこには人影……神影が見えた。

「………なかなかいい技だ。…………上手くいけば、この龍神に傷を与えられるであろう。………だが、届かぬ。」
淡々と言う。つまらなさそうに、ただ敵を排除しようという意志のみを感じる。

 こうも感情が少ない敵は……今まで見たことない気がする。
 魔物は怒り爆発だし、暗殺者達は冷酷だけど忠誠心は人一倍だし、冒険者さん達だってしっかり感情があった。

 なんかやりにく……

 もっと危機感を持てとツッコまれそうになるけど、事前に阻止する。危機感は、ある。たぶん。

「もうちょっとなんか感情ってのはないの?」
「………む、人間味ということか?」

「いやいや、敵意とかってこと。人間味持たれちゃもっとやりにくいって。」
「………要望が多い人間だ。」
ため息のようなものを吐き、無視を決め込む。いや、杖を伸ばす。

「……飲み込め。魔力の一滴すら残さず。」
杖の先端のタールみたいなものがブワッと広がり、津波のように押し寄せてくる。

 ちょっ、なに!?あれどう対処しろと?

 あくせくと思考を巡らせる。

「………飲み砕け。」
頭上に迫る。以前、対処法は思い浮かばない。あと少しで、隙間が全て埋められる。

 あぁ、もういい!

 私は大きく振りかぶり、2つの道具を投げる。反射鏡と指輪だ。
 指輪がきらりと太陽を反射し、鏡に当たると、反射して指輪にぶつかり、遠くに飛んでいく。

「転移っ!」
そう叫ぶと、私の体はその場から消え失せた。代わりに、黒い波の射程外に、移動していた。

 よっし、転移石発動できた。もしうまくいかなかったら完全死んでたね。

「あっぶなぁ……」
聞こえないよう呟く。

 これもキューのおかげかな。脈の操作は全部キューに一任してる。
 脈TUEEEできてるのはそれが理由だしね。

 今も私のローブの中で縮こまってるキューに、心で感謝を述べる。

「……避ける、か。…………厄介だ。」
こちらの動きを見定めるようなその姿勢。そんな厄介な存在でもない私にとっては都合のいいこと。

 じゃ、ちょっと本気出そうかな。

「キュー!」
「キュキュッ!」
ローブをバサッと広げると、そこからキューがジャンピング。からの回転してーの、空中に立つ。そこには、空中浮遊した丁度キューサイズの盾があった。

「……それは……神の力か?」
鳩が豆鉄砲を食らったような表情になる龍神。

「え、そんな簡単に分かんの?」
私も私で驚く。

「まぁいいや。キュー、頼むね。」
「キュッ!」
任せろ!的な受け答えをして、私へ力を送る。

 この技。実はガトリング事件の後の最終調整で気づいたんだけど……
 キューって、魔力無限なんだね。

 しかもスキルが凄そうなのばっか。特に魔力譲渡。これ気づかなかったのでかい。魔力使い放題じゃん!

 ということで命名は……

「魔力のバーゲンセール!100%オフ!」

 という感じになった。

「……そうくるか。……ならば、相手になろう。」
私の魔力は漲り、龍神は杖を掲げる。その瞬間、私を覆うように沢山の黒い塊が現れる。というか、意味のわからない速度で射出されていた。

「とりあえず音波!」
某探偵のコ○ンの発信機的(ひと回り大きいけど)なものを空中に投げる。——————ィィィィッ!ほとんど耳には聞こえないけど、魔力が震える。竜神の行った攻撃は、消滅するようになくなった。

「これぞ音波パワー!」
「………厄介な能力だ。」
愛も変わらず無表情。今度は龍神自ら突っ込んできて、杖を振るう。

「オッケー、盾!ガードして!」
どこぞのグーグル先生でも呼び出すかのように命令すると、魔力がゴッソリ減る代わりに自動で動く。私は私で回避する。

「……っ。」
龍神は空振り。でも、黒い物体は破裂するように飛び散り、ホーミング弾として私の元にやってくる。

「え、ちょぉっ!?アイスシールド!シールドぉ!」
いくつも展開された氷。無意味にぶっ飛ばされる。

「ぃたぁっ!」
黒い物質は肩を掠り、空間阻害されているはずなのに……と肩を押さえる。もちろん、破けてる。

 やっぱりこういう服、戦闘向きじゃない。まぁた作り直しだよ。

「神は神ってわけね……強っ……」
そうは言う割に口元はにやつく。

 なぁんだ、私。戦闘狂じゃん。
 でも、強い敵と戦って心躍るとか、やっぱり楽しい!

「真剣勝負だよ!」
パァァンッ!ラノスの銃撃が飛ぶ。

「…‥‥良かろう。」
髪を掠るだけで、何も起こらない。

「簡単に死なないでね。案外ポックリ行くものだから、生物って。」
「………余計な心配だ。」
杖が消え、余分な魔力は要らないとばかりに練りに練られた美しい魔力。さっきの物質とは違い、白銀だ。

「……神とは、全てを統べる絶対だ。」
「それを覆すのが、さっき自分で言った特異者ってのじゃないの?」
立て続けにラノスが魔力を爆ぜさせる。

「………そこの獣。お前が、生き永らえている理由だ。………ただ、神に生かされているお前が、言えたことではない。」

「そんなの関係ないよ。運も実力のうちってね。」
どこかミョルスカイの雰囲気を感じる対物ライフルを静かに構え、放つ。

「……一辺倒だ。」
「悪かったね。」

「……ッ!」
龍神の右皮膚を削る。薄く、本当に薄く血が滲んだ。

「……この、龍神が……人の、攻撃に?」
狼狽したようにその傷を見て、ギッと歯を噛む。ちなみに私も別の意味で驚いてたけど、そこは秘密だ。

 対物ライフル、まぁ、トロイって名前にしたやつ。これはミョルスカイを再利用して作った最高火力武器。
 余波のどでかいアレを、全て一極集中させ、空間伸縮により火薬や電磁加速幅も増やし、超火力を誇ってる。

 これはラノスみたいに対百合乃戦用じゃないから、弾だってラノスとは違って魔力ぎちぎちのヤバいやつ。

 脈も通ってるから速度も魔力も最高クオリティ。

 つまり、私の中の最高技術。それが、掠っただけで弾かれて軌道がずれて、しかも血を滲ませるだけ。

 怖いよ、流石に。勝てる気が、ちょっと……

 だから、軽くブラフをかますことにした。

「神ってさぁ、この世界に限ってだよね?だから、この世界にないものは対処不能。つまり、私みたいな能力を創造できる異端な力がある敵に、敵わないってこと。」

「………言うな、人間。」
初めて感情らしい感情を見せる。

「………知らぬとも、地力が違う。…‥‥教えて、やろう。神の、本当の恐ろしさの片鱗というものを。」
ゴゴッと力が溢れる。龍神の魔力は、激しく荒ぶり、それでも静かに広がるだけ。神の魔力コントロールの賜物だろうか。

 やっべ、これやっべ。絶対やべぇですって。

 本気でビビって、口調がバカになる。

「………これが神の力だ。」

「……こふっ……!ぁぁ!」
全身に痛みが走る。さっきまでの、少しあった余裕なんてない。さっきも、今も。手加減されている、そう感じた。それほどに軽く、重い攻撃。

「キュウゥゥゥッ!」
キューが盾を操作し、こっちに向かう。膨大なその魔力は、神にも匹敵するため龍神も手をつけられてない。個としては弱いので、無視できてるんだと思う。

「ご、めん……ちょっと、侮ってた、かも……」
人神にボコボコにされたことを思い出す。その時の痛みも幻視する。

 人神は、優しかった。まだ、手加減をしてくれてた。
 本気なんて出さなかったし、ちょっと痛ぶられたら許してくれた。

 でも、龍神は違う。

「だからって………諦めていい理由には、なら、ない……」
そうして私は、ゆっくりと立ち上がる。出来上がった地の海も気にしないで。

———————————————————————

 戦闘描写のレパートリーがないです。これどうやって後3話書けと言うのでしょう。
 まぁ、私なりにそれっぽく書きます。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

別に構いませんよ、離縁するので。

杉本凪咲
恋愛
父親から告げられたのは「出ていけ」という冷たい言葉。 他の家族もそれに賛同しているようで、どうやら私は捨てられてしまうらしい。 まあいいですけどね。私はこっそりと笑顔を浮かべた。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました 第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった 服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます

処理中です...