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9章 魔法少女と天空の城

286話 軍服少女は立ち上がる

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 わたしはサーベルと銃を構え、なんとか龍と応戦する。
 ついていけてはいる、だけどそれだけ。銃が無かったら、押し切られて多分もう死んでる。

 空の愛がわたしを生かしてるっ……!

 さっきから空が聞いたら殺気を漲らせそうなことばかり考え、SAN値を回復させる。

 龍の咆哮って、結構精神にくるんですよ。

 あははという呟きと共に、その瞳はどこか遠い、何万光年も先の宇宙を見上げて…………

「ない!」
思考が限界突破して口から漏れる。

「遅いッ!」
その原因が鋭い爪を十字に、それを爪の数だけ追尾で喰らわせてくる。

「魔断っ!」
「いい筋をしとる!その調子だ!」
フハハと、さっき空が戦闘狂とか言ってた口から狂った笑い声が漏れる。

「誰が言うんですか誰がぁ!」
5発、発砲する。サーベルを急ぎで腰のベルトに戻し、右手で持って左手で底を添える。銃弾は炎を纏い、風圧にも負けず、まるでフェニックスのように飛来していく。

 この銃、面白いですね。日本でこんなの見たことない……そもそも、この銃魔法製なんだから普通に見たことないですね。見てたら逆に怖いです。

 いつの日か見たアメリカンな映画の真似で銃を構えてますけど、見ていて良かったです!

「ほぅ、炎で我に勝てると?」
フゥーッと手を添え、息を吹きかける。その際に魔法陣が現れ、翼がバッと生える。

「龍より人型の方がいいんじゃ!?」
「翼は別枠に決まっておろう?」
などと言い、魔法陣が乱れ咲くように現れ、猛火が渦を巻き、5つの弾にやりすぎなんじゃないかと内心震える。

 耐えて、耐えてくださいぃ!特殊モード以外でまともに攻撃できる気がしないんです!
 まさか、まさかです?まさか破られたり……

 そのまさか。
 物語のヒーローが悪役を倒すのが当然であるように、龍の息吹がたかが銃弾に遅れを取るわけがなかった。

 ものの見事に消え去り、満足そうに火を吹く。

「聞いてなかったんですけど……火龍さんとかです?」

「そんなわけがあるまい。我は帝龍、龍神様の次に最強の龍だ。」
「最強って意味、知ってます?」
とりあえず手から衝波に乗せてその言葉をプレゼントする。

「誇り高き地龍、思慮深き水龍、力に欲深き火龍、美を極めし光龍、無駄無き闇龍。その他派生龍共の頂点に立つ我だぞ?それを、最強と言わずしてなんと呼ぶ?」
無駄に偉そうにこちらを見る自称最強の帝龍さん。少しおつむは残念そう。

「失礼なことを考えたな?」
「バレました?」
「主、案外馬鹿なのか?」

「あなたにだけは言われたくないです。」
死闘の最中にも関わらず、わたしたちはそんな軽いノリを忘れない。

 わたしはこういう戦闘スタイルです。楽しさを忘れず、命懸けで!
 空のためっていうのも忘れませんよ?

 もう1度、深く踏み込む。まるでリーシーさんとの訓練の日々のような懐かしさを感じつつ、わたしは銃を収めてサーベルを引き抜いた。

「……見たことのない剣術も混じってるの。主、一体幾つの上級剣術を取得している?」
「流天星華っ!」
ドッと闘気が漏れだす。

 ———そんな概念はないこの世界にはない。だが確かにそれは存在する。なければ、人間が魔物相手に生存していけるわけがない———

 流れる星々のように、咲き乱れる花のように、優雅に剣筋が泳ぐ。常人なら捉えることすらできないその美しく描かれた軌道は、帝龍さんの肉体に肉薄する。

「我も1つ、護身術を持っていてな。」
それが聞こえた時、サーベルは相手の肩に迫っていた。

「その術はなかなかに便利でな。魔力量がものを言う龍にはうってつけかもしれん。」
サーベルが完全に肉を断った、そう思った直後。

「力は使いよう。膂力がなくとも、魔力がなくとも、な。」
サーベルが一瞬で真横にずれた。

「へ?」
間抜けな声が出た自覚はある。そのまま横腹に強烈な痛みが走って、腑抜けた自分が叩き起こされる。嗚咽を吐く。唾液を吐く。血は出ない。いっそのこと出て欲しかった、そうすれば限界状態で思考も逆に働くかもしれない。でも、ただ痛みが続くだけ。

「魔力を内暴走させただけだ。主には魔力が無いからの。やりやすかったぞ?」
手をひらひらさせ、笑っていた。

「………なぁ、……ぁ……」
サーベルの握るては離さない。でも、動けない。

「全ての隙さえ把握できさえすれば、強大な力もただのハリボテだ。あとは倒してやりさえすればな、案外簡単に崩れ落ちるものだぞ。その点龍神様は、隙など一切ありはせぬ。」
楽しそうに主人について語る。一体どうやって軌道がずれたかを聞きたかったけど、声は出さない。

 うっ、痛い…………
 っていうのは嘘なんですけど。……半分。

 脳内のわたしは、よっこらせ……と言って転げ回り状態から立ち上がる。
 そして実際のわたしも立ち上がる。

「なにっ?」
「そんなに驚かなくてもいいじゃないです……」
肩をぐるぐると回したり、伸びをしたりして体の調子を整える。

「簡単です。しまってた銃に拳がぶつかって、それで衝撃緩和されたんでしょうね。痛かったには痛かったですが、まぁ銃にいろいろ持ってかれたんじゃないです?」
「そんな簡単に、か?」

「や~ん、太くて硬い棒~最高ー!」
空に聞かれたら本当に殺されそうな台詞を吐き散らし、とりあえずサーベルを握り直す。

「上級剣術の数がどうとか言ってましたけど、そんな知りませんよ。ただのスキルなんで。」
「自分の能力も把握できぬとは、愚かだぞ?」

「そんなの知ってどうなるってんですよ。全てに未知はつきものです。それこそ、自分は全部理解したんだ~、なんて、知ったような口を叩く暇があるなら、何か違う運用方法でも考えてみればいいじゃないです?」

「論点がずれてないかの?」
龍神はわたしのめちゃくちゃなセリフにしっかりとツッコミ返してくれる。いい人だ。この場合龍かな?

「まぁまぁ、とりあえず再戦ということでOKです?」
「……主がそれを言うかの?」
それから何泊か置いて、まぁ仕切り直しということになって少し離れる。なんか帝龍は戦意喪失してるけど、なんとかなる。うん、きっと。

 でもでも、それって勝率が上がったってことじゃ~?

「ぬわぁーっ!」
「仕切り直ししたばかりではないのか!?」
驚いたように後ろによろめき、5つの魔法陣が回転し、炎がそれらを繋ぐ。そこから各1色ずつ、計5色の波紋的な何かが広がり、妨害しようとしてくる。

「山紫水明!」
サーベルを振るう。空気中の魔力が混じり、まるでわたしを避けるように後ろに消える。それは黒寄りの紫に近くなった混合色が、残った炎が照らす。

「ていりゃぁ!」
「掛け声はやめた方がよいぞ?」
ガンッ!腕をクロスさせ、帝龍はその攻撃を防ぎ切った。

「いい戦闘の合図じゃないです?」
「そうだな、我もそこは否定はせんぞ!」
そう言うとまた魔法陣が現れ、わたしもサーベルを持ち上げた。

———————————————————————

 ダメダメすぎる百合乃にチャンスを与えたのですが、彼女は銃の持ち方すらまともに知らないようで、何故か銃底を左手で包んでしまってますね。見た映画というのは、相当昔のものだったのでしょう。

 現代の、というか空さんの作った銃は少しデカめの自動拳銃、いわゆるオートマチックとかいう自動操作のものです。

 それの底に添えなんていらないのに、馬鹿ですねぇ。
 一介の女子高生がそんなの知るかって話ですが。

 ちなみに口径は40~50想定のほぼ最大レベルの現実であったらクソ重の銃です。しかもこのデカさで8連弾倉、ハンドガンのくせに馬鹿みたいですね。
 本当は16弾とか、空間伸縮して30弾とかもっとハメ外そうかと思ったんですが、流石に空さんの面倒さも考えてこんな感じになりました。

 ま、どれも魔法とステータスの異世界マジックにより製造と運用されているので今更ですけど。
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