上 下
285 / 681
9章 魔法少女と天空の城

267話 魔法少女は恐喝する

しおりを挟む

「うるさいなぁ。龍神からの直接攻撃とか聞いてなかったんだからしょうがないでしょ?」
「その間、わたしは涙ぐましい努力を……およよ。」

「私も銃作ってたんですけど?」

「……………」
目の前に魔族がいることも忘れ、言い合いを続ける私と百合乃。ちなみに、ほんとに忘れてる。

「いい加減にしろ!ワタシという高貴なる魔族がいるのだぞ!初めは震えたが、今は居心地の悪さしか感じん!」
「いや、帰ればいいじゃん。」
「……………」
また沈黙が流れ、小さくワタシ、魔族。魔族、魔族?と、自問自答してた。

 流石にそろそろ相手したほうがいいかな。向こうからしたら自分がボスキャラなんだし。

 しゃーなしといった具合に、魔族の女性を一瞥する。

「逃がしはしないぞ。ワタシを、魔族を散々虚仮にしてくれた借りは返す。」
目に力を込め、殺気漂わせて言葉にする。

「ふぅ~ん。勝てると思ってる?」
「何がだ?」

「多勢に無勢、とまではいかないけど2体1。攻撃の回避手段も遠距離攻撃手段もあって、そっちは肩をやられてる。どうやって勝つつもり?」

「そうです。あなたに勝ち目はありません!」
何故か百合乃が自信たっぷりに言い放ち、ふふんと鼻を鳴らした。

 百合乃は軌道予測以外今のところ使い物にならないから、そんな胸を張られてもね。
 そこで生まれるのは無駄にでかい胸部の双丘が目立つだけだよ。

「ふっ。魔族の力を舐めるなよ、人間。たとえワタシに傷を負わせたとて、何度だって回復を……」
「そう?ならやってみようよ。」
パァァンッ!いつも通りの音。その先に目線を移すと、寸分違わず再生を始めた傷口に着弾していた。

 よっし、私の空間伸縮テクも上がってる!

「随分と長く話してくれてたから、隙をついちゃった。ま、元から殺し合いなんだから文句を言うのはお門違いってものだよ。」

「……空、なんか悪役みたいです。」
「上等上等。この世界でどうしようと、私には関係ないしね。龍神を倒すんだから、そのくらいのガッツがないと。」
銃を握る手に力を込め、えいやえいやと百合乃の鳩尾にジャブを食らわせる。

「空空。わたしに構ってくれるのは嬉しいけど、向こうのをどうにかしなきゃじゃないです?」
「あー、うん。」
怒りの中にしっかりと快感を生み出していそうな表情をする魔族を前に、少し引く。

 百合乃と同じで、見てくればいいんだよ。見てくれは。喋った途端だめだこりゃって感じ。

「くっ、くっくっ!ワタシにここまでさせるとはっ!楽しい、楽しいぞ!」

「なんこれ。」
「知りません。」
1人、三文芝居を演じる魔族さん。さぁ、逃走3秒前。

「このような面白い者。逃がしてたまるものか!」
「……はぁ。力の差を理解しようよ、高貴なる魔族さん?」
「ぐっ!?」
そこには、ステッキ1つで腹を突き刺さされ、貫通はしていないものの口から血を吐く魔族の姿があった。

 気持ち悪いから逃げようかと思ったけど、こんな怪しさ満天の生物、逃しちゃダメだよね。古事記にもそう載ってる。

「ねぇ、百合乃。」
「なんです?」
「恐か……コホン。情報を引き出すためには、どんな口調がいいと思う?」

「ヤクザでお願いします。」
「……オッケー。」
百合乃の決定により、今ステッキに突き刺さっている魔族は魔法少女ヤクザによる問い詰めが始まる。

「ねぇ、あなた。魔族って言ってたよね?」
「ぐっ、はぁ、はぁ。そうだ。ワタシは高貴なる魔族で……」

「魔族とは何か、ここはどこか、どうしてあなたは魔物に襲われてないのか、なんでここにいるか。全部吐こうか?」

「断る。」
「ん?」
ビクッと体を震わせる魔族。正直キモい。

 今からこれを恐喝するのかー。なんか、逆効果な気がしてきたんだけど。大丈夫だよね?

 心の中では完全に恐喝と隠しもせず言い切る。むしろ清々しくていい。

「おい、お前立場分かってんのか?あぁ?お前は殺される側で私が殺す側。舐めた態度とってたら、次はその汚ねぇ口とココ、吹き飛ばすぞ?」
「ひぃ……」
トントンと銃口を向けた先にあったのは、彼女の子ky……下腹部。

「ひぃ……じゃねぇだろ?言っていいのはイエスかはいの2択だ。いいな?せーの。」
「はっ、はい!」

「そうだ。キリキリ吐けよ?」
誰がどう見ても裏社会のドン的な脅しに、我ながらいい仕事ができたと爽やかな汗を振って百合乃の元へ歩く。一方で、今の一瞬の出来事のうちに魔族の性癖が歪み、今や漏らしている。それには気付いてない私。

 ふぅ~。なんかスッキリしたかも。特に「立場分かってんのか?あぁ?」の部分。
 誰しも意外な能力があるものだね。そんな能力は要らなかったけど。

 脳内で反省会を開き、概ね良好と判断を下す。百合乃はジトっと私を見つめ、一瞬下腹部を両手で隠した。

「ううっ、撃たないでください!」
「撃たないよ。」

「そそそそっ、それに……しても、上手い演技でしたね?前職若頭とかでした?」
「百合乃がやれって言ったんだよ?分かってるよねそこ!」

「ほっ、ほら!魔族さんからお話を聞きましょ?ねぇ?」
「……分かってる。」
百合乃に向かって恨みがましい視線を送り、もう2度とやるもんかと心に誓った。

 そして、その誓った約束を守ったことは数少ない。
 つまりはまたやる可能性があるってことだ。

 百合乃の前ではやらないとだけ決め、銃を収納してステッキを握りなおす。その間に百合乃は、魔族の前に歩み寄る。

「仕切り直して……魔族さんでしたっけ?わたしたちに情報をくださいませんか?ちょっと、急ぐ訳があって……」
文字文字と体をくねらせ、意味ありげに私を一瞥する。

「何もしないよ?何その恥ずかしげな顔。」
「あれ?バレましたか。」
「百合乃もあれになる?」
「あれ?」
言葉の意味が分からず、視線が私の指をなぞるように進み、答えの場所にたどり着く。それは、百合乃が今話しかけていた魔族。

「ぽぉ……」
蕩けた顔で明後日を超えて明明後日を見ている。百合乃はくねくねするのに忙しくて、気付いてなかった。

 いや、違うね。これはもう、魔族だったもの、だ。

 高貴さのかけらもない(元からなかったけど)その姿に、百合乃は完全に冷静になり、「どうしましょうね」と呟いた。

「世の中は、残酷なんだよ。」
「それは空のせいですけどね。」

———————————————————————

 今回も見事にはっちゃけましたね。魔族さんは魔族という存在を出すためだけのキャラに成り下がりました。

 ふと思いついたんですけど、一回丸々1話無駄なトークに費やしてみたいんですけど、どうです?雑談で本編を埋め尽くすんですよ。楽しそうじゃないです?

 我が作品は致命的に文字数が少ないです。えぇ、それはもう少ないです。なので、このトークを機に平均2300字から3000字まで頑張ろうと思います。

 と、いうわけで一度くらいいいですよね?この回、267話なんで70話終わったらやりましょう。そうしましょう。

 あ、3000字の件は善処するということで。
 文字数は普通に私自身気にしてますので。

 よっし、クソどうでもいい雑談権ゲットだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こんなとき何て言う?

遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫
恋愛
 突然異世界の船を手に入れてしまった平凡な会社員奈央。私に残されているのは自分の家とこの規格外な船のみ。  ガス水道電気完備、大きな大浴場に色々と便利な魔道具、甲板にあったよく分からない畑、そして何より優秀過ぎる船のスキル!  これなら何とかなるんじゃないか、と思っていた矢先に吊り上げてしまった……私の好みドンピシャなイケメン!!  何とも恐ろしい異世界ライフ(船)が今始まる!

【猫画像あり】島猫たちのエピソード

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~ シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。 2024年4月15日午前4時。 1匹の老猫が、その命を終えました。 5匹の仔猫が、新たに生を受けました。 同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。 島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

泥酔魔王の過失転生~酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない!~

近度 有無
ファンタジー
魔界を統べる魔王とその配下たちは新たな幹部の誕生に宴を開いていた。 それはただの祝いの場で、よくあるような光景。 しかし誰も知らない──魔王にとって唯一の弱点が酒であるということを。 酔いつぶれた魔王は柱を敵と見間違え、攻撃。効くはずもなく、嘔吐を敵の精神攻撃と勘違い。 そのまま逃げるように転生魔法を行使してしまう。 そして、次に目覚めた時には、 「あれ? なんか幼児の身体になってない?」 あの最強と謳われた魔王が酔って間違って転生? それも人間に? そんなことがバレたら恥ずかしくて死ぬどころじゃない……! 魔王は身元がバレないようにごく普通の人間として生きていくことを誓う。 しかし、勇者ですら敵わない魔王が普通の、それも人間の生活を真似できるわけもなく…… これは自分が元魔王だと、誰にもバレずに生きていきたい魔王が無自覚に無双してしまうような物語。

処理中です...