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8章 魔法少女と人魔戦争
262話 魔法少女は出発する
しおりを挟む「うぅ……まだ空の愛の鞭が痛みます。」
腹部を抑えてやたら涙目を強調してくる。地味に可愛い。
あとこれ絶対嘘。だって昨日のことだもん。今日まで痛んでたらそれどんな虚弱体質じゃん。
「何が愛の鞭だ何が。というか、手加減したんだからそこまで痛くはないはずだよ?」
「嘘言わないでっ!わたし、震えたんだからっ。」
「何そのキャラ。」
「さぁ?知りません。」
「百合乃のスタンダードはそれ?なんかこの百合乃が本物の百合乃じゃない気がしてきた。」
「ふっふっふ。実はわたしは百合乃の仮面を被ったゆりのんなのだよ。」
右手を左目に、左手を右肘に当て、漆黒の剣士(笑)になる。見た目と相まって完全に厨二キャラだ。
はぁ。魔法の強化も昨日の空き時間に済ませてあるし、さっさと行こう。
何を強化したかって?使える魔法全部だよ。余りまくってるSPを、とうとう解放する時が来たね。って感じだ。
魔法 アクアソーサーⅩ 魔導書Ⅵ(-7)
神速Ⅹ×1&Ⅲ ファイボルトⅩ+1 万属剣Ⅹ+1
投擲Ⅷ+1 鑑定眼Ⅷ+1 食材生成Ⅴ+1
魔導法Ⅹ+1 トールⅩ 物質変化Ⅷ
空中歩行Ⅹ+1 アースアイスⅩ
エアリスリップⅩ 魔力喰らいⅩ+1 混合弾Ⅹ
暗黒弓Ⅹ 流星光槍Ⅹ 各種地龍魔法Ⅴ×3&Ⅹ
一級建築魔法Ⅲ 農業者Ⅱ 気配察知Ⅹ
記憶念写 裁縫者Ⅰ アイスシールド
サンダーサークルⅩ ファイアサークルⅢ
アクアサークルⅩ ウィンドサークルⅩ
脈探知Ⅹ 金属加工Ⅷ 空間伸縮Ⅹ 重力操作Ⅹ
魔力高速回復Ⅹ×1
ちなみにSPは10万くらい吹っ飛んでった。それはステータスの付加も原因なんだけど、それはまた別の話。
まだ日も昇り切っていない朝から、人目を気にしながらバイクを取り出す。
ちなみに私達は、もう昨日からいない設定になってたから、気づかれたらまずい。
さっさと出て行こうとバイクに跨り、百合乃に後ろを指で差す。
「早く乗って。もうそろそろ人が起きる頃だし。」
「あ、はいです。」
涙目をいつの間にかやめていた百合乃が、タタタっ、とまるで餌の時間を待ち望んでいた小動物みたい。
「はい、じゃあ出発。」
「しんこー!」
百合乃が元気よく叫び、腰のサーベルを引き抜いて天に掲げる。何をしてるんだろう。
まぁ気にしても無駄かな。この百合乃の思考回路を読める人間は存在しない。
じゃあどの百合乃なら思考が読めるのかって話だけど、それは言葉のあやっていうかなんというか……まぁ、気にしない気にしない。
「SP振っても意味なし、かぁ。」
「どうしたんです?」
「あぁ、ちょっと魔法の練習してて。」
「どんな魔法です?見せて見せて!」
「そもそも見せられないレベルなんだけど?」
危険乗車を始めた百合乃を席に押しとどめ、「接近のチャンスが……」と、別の意味で落ち込む。
「重力操作ってのを作ってたんだけど、それがなかなかうまくいかなくてね。重力を変える感覚ってのがいまいち……」
「あれ?そういうのって、『詠唱』+『魔力』=『ズドーン!』じゃないんです?」
「よくテンプレ知ってるね。そういう方向のはあんま読まないんじゃないの?」
「ま、まぁ……?」
何やらぎこちない返答をするも、百合乃が変なのは通常運転なので無視しておく。
どうせ不安を煽って顔面ダイブとかしてくるんでしょ。分かってるからね。
———実際は異世界ものの百合漫画等を読んでいたため、百合百合しつつ異世界のイロハも当然仕込まれていた———
「他の魔法はそうだけど、これがそうとはいかないんだよね。例えば魔導法とか空力とか、その辺は使い方が難しい。」
「へぇ……」
エンジン不使用のバイクからはバイクらしいエンジン音は出ず、沈黙の中草木を折る音が続く。
「……それだけその魔法が上位のものなんじゃないです?なにかそういう話ってありましたっけ。」
「あー、あるね。『今の世界の魔法は過去の神々の魔法の劣化版だ!』とかいうやつ。そういう系って物によっては面白いんだよね。あ、それほとんどに言えるじゃん。」
そう言いつつ、思考は別に向く。
確かに。重力とか脈なんて、それこそ直接世界に触れるようなもの。それが普通の魔法と同じように使えたら、もう笑えなくなる。
「そういえばこれ、どのくらいで着くんです?」
「さぁ。数日はかかるんじゃない?この先、情報(脳内)によると、深い森を横断するらしいし。」
「お喋りし放題……っ!なんですと、それは見逃せない……」
「ポジティブか。」
ボケかマジかよく分からないので、軽くツッコんでおく。
こういうのは無視すれば「なんで無視するんです!?」ってなるし、ツッコんだらツッコんだで「本当のことですよ?」ってなる(完全偏見)んだし、軽く受け流すのが定石だ。
「って前、前!空!安全運転でお願いしますぅぅぅ!」
「ってうわっ!魔物?そういうのは早く言って……っ……」
「言いました、だから言いました!」
「そういうのいいから!なんか遠距離ないの?」
「銃は?」
「私の射撃の腕、舐めてる?」
「すみません。」
バイクが右往左往と、蛇行運転、煽り運転を1人でに繰り返す。一方魔物はというと、悪魔女が買いそうなほっそい猫の見た目をしており、銃の照準が全く合わない。
「飛翔刃!飛翔刃!」
「危ない危ない!当たるって!」
「そんなこと言われても、アレをどうにかして欲しいって言ったのは空……」
「ちょっ、立て直すからね!」
バイクを横に大きく切り、大きく斜めに傾きながら魔物と距離を取る。
「今!」
「飛翔刃っ!」
今日も今日とて、騒がしい1日だ。
———————————————————————
今回でこの章は終了となります。
ちなみにこの物語の終着点はソラさんが……いえ、なんでもありません。
ちなみにですが、私は地味に百合好きです。BLは今でも苦手ですが、百合、普通に好きです。
Twitter等の短い漫画とかの百合、好きです。
アスファルトに咲いた花、好k……
すみません。R1優勝者が出てきてしまいました。
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