276 / 681
8章 魔法少女と人魔戦争
258話 魔法少女は止める
しおりを挟むあれから10日が過ぎ、私はそろそろいい加減に街を出ようかと荷物を整え(収納に詰め込む)、いざ行かんと1歩を踏み出す。
ちなみにその間、何をやってたのかというと、主に銃の試し撃ちだ。
どうすればうまく撃てるか、どういう弱点があるのか、癖や動き、組み合わせ方とかも考えた。
銃の腕は相変わらず下手くそで、空間伸縮で距離を縮め、直接攻撃するという形に落ち着いた。とてつもなく反則だ。私でも怖い。
いや、流石に制限はあるよ?3つ同時に無制限とかそれだけで十分な力じゃん。
連射実用は3メートル圏内、普通にやれば5メートル、本気の1発なら10メートル。隙が凄そう。
って、結構伸びるね。そう考えると。
チートぶりをしみじみと感じ、他に改良したあるものも思い浮かべる。
あのピンクのバイク。使ってなかったけど、脈式にして1、2時間に1回魔力を入れ替えるだけで循環して動くという仕組みにした。
やったね、移動が楽だ。
動きながら空間を伸縮するとかは不可能に近いので、バイク上から連射とかいう技は夢のまた夢と思うと、少し残念に思う。
でも、撃つだけならいけるよ?核石の無駄だけど。
「うーっし、それじゃあ行こうかな。」
「キューッ!」
門前に足を踏み入れた時、一瞬視界に深緑の何かが揺らめた気がした。
「空……今回は追い返されません。ついていきますよ、絶対にです。」
「百合乃……」
少し汗ばみ、体が以前より引き締まって見える百合乃は、仁王立ちのような姿になって私の前……いや、後ろに立ち塞がった。
「だからダメだ……」
「ついていきます!」
「遮らないで?」
「キュウッ」
なんだか逞しくなった百合乃がカツカツとブーツ?を鳴らしながら、鬼教官のような形相で「逃がさないですよ?」と言わんばかりに接近する。
「わたしは強くなりました。ステータスは変わらないですけど、剣姫も魔力感知も使えるんです!」
「おぉ、それは素直にすごい。」
「キュキュ?」
百合乃も遊び呆けてないで、特訓を積んでたらしい。
それでこんな体が引き締まって……出るところと出ないところがハッキリ見える。特に軍服のスーツのせいで。
「だから……」
「ダメだって。」
「なら、力ずくでもついていきます!」
「何そのパワーワード。」
言葉のままにサーベルに手をかけようとする百合乃を見て、やれやれと首を振る。
まぁ、こういうのはいっぺん黙らせればなんとかなるでしょ。
流石にここではまずいとゆっくりと外に出て、百合乃も睨むように見つめながらついてくる。
「逃げませんよね?」
「逃げないよ。」
そんな問答を数回繰り返し、私は踵を返す。
「言っとくけど、そっちが先に噛み付いてきたんだからね?」
私は眉を曲げてそう言うと、右手には拳銃持って百合乃を睨む。
「覚悟、できてる?」
「キュー、キュッ!」
銃口周りの空間が縮められ、百合乃との距離はゼロ距離。そんなことも知らず、百合乃は私の右手のものに戸惑いながらサーベルを抜く。私は迷わずトリガーに指をかけ、パァァッンッ、という乾いた発砲音が響く。残るのは、燃焼した魔力の焦臭さと空となった薬莢のみ。
「……ぃっ!」
百合乃は後退りし、髪の毛を掠るに止める。
ちっ。軌道予測か。確かに空間を縮めてるだけだから、いくら速くても避けれはするのか……
空間伸縮の弱点でもあり強みでもある、空間の歪みに今は文句を吐きつつ、戦闘に戻る。(空間を縮めれば動きはそこだけ速くなり、伸ばせばその分遅くなる)
「……銃。それ、作ってたんです?」
「そうだね。まぁ、詳しく話すつもりはないよ。」
「今の空、かっこいいです。正直、子○が震えそうです。」
「それ、今言うこと?」
突然の下ネタをさも当然であるかのように口にし、肩を竦める。
「わたしは空について行きたい。だから有能さを、ここでアピールしてやろうと思いますっ!」
パァァンッ。
「もうそれは予測ました。」
百合乃はうっすらと覇気の宿ったサーベルをするりと持ち上げ、目の前の弾丸を斬り裂かんと接近し、カキンッ、そんな、小気味いい音が響く。
「そんな……?え、魔断は発動してるはずじゃ……え?なんでです?」
握られていた魔断を纏ったサーベルは、電磁加速と爆薬による爆破の衝撃の速度に手が耐えきれず、手放されていた。
やっぱり、そうくると思った。
だから、わざわざ中に魔弾を仕込んだ。
軌道をわずかに逸らされ、運良くまた髪を掠るにとどまったけど、次はそうともいかない。
「緊迫してるのも分かります。急ぎたいのも分かります。でもっ、でもっ!1人で出来ることには、限度があるんじゃないです?」
パァァンッ!
10日前から更に改良された銃撃は、甘えを全て捨て去った音を鳴らせて後退る百合乃を追う。
「断絶ぅぅぅぅ!」
一瞬、百合乃の腕に赤い線が走る。その腕はすぐさま真横に振るわれた。
「は?」
今度は私が困惑に声をあげ、思わず目細めて自分の右手を見る。
「空!」
べシンっ。漫画だったらそんな効果音がつきそうな綺麗な一撃に、更に狼狽する。
「あ?ん?……え?なんで私、百合乃に銃向けたんだろう?追い返すだけなら別に、他にも方法は……」
私は私のしたことに戸惑い、手から銃がこぼれ落ちた。
あれから焦りが優先して、速く速くって急いで。そんな中の百合乃が邪魔に思えてきて……あれ?なんでだろう……
そんな戸惑いとは逆に、ここ10日間で感じてきたストレスや不安は全て切り離されたかのように、今は晴れやかな気分だ。
「キュー!キュキュッ!」
「あ……キュー?あれ、いつの間に……」
「え、空?どうしたんです?いや、やったわたしが言うのもなんですけど……というか、その子なら最初からいましたよね?」
「ん?」
「ん?」
「「ん?」」「キュウ?」
私達2人と1匹、理解が追いつかずに首を傾げる。
———————————————————————
なにやら、変な展開になってきました。
なんでしょう。書いてる私も変な気分になってきました。
あ、それは口内炎のせいでした。
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる