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8章 魔法少女と人魔戦争

250話 魔法少女は連れて行く

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 百合乃と出会って、四捨五入(なんで四捨五入したんだろう)で1時間近くが経った。

 流石にリーシーさんを待たせすぎるのも悪いので、さっさと宴会場(2人だけ)に戻ろうと歩く足を早める。

 リーシーさん怒ってないかな……言い訳するのは申し訳ないけど、まぁ……ね?人は救えたわけだし?許してくれる……よね?

 そんな不安の思いを胸に、百合乃と一緒に森を出た。

 そこでは、チビチビとまたお酒を呑んでいる金髪美人がいた。

「……異世界美人……」
黒髪美少女が何か言っている。

 この人、美少女が美人とか言っても何にもならないよ?言うなら私みたいなフツメンの女子が言うべきだよ。

 バカみたいな反論(?)をする私とは正反対に食事の動作すら美しいリーシーさんに嘆息が漏れる。

「ソラ。どこに行っていたん……だ……?」
私に視線を移した途端、言葉がゆっくりになる。私の隣にいる百合乃に目が逝ったんだと思う。

 私がリーシーさんの立場だったら、もちろんそんな反応になるだろうね。
 軍人の格好した美少女がいたらそりゃそうなるさ。

「そちらは……」

「百合乃です。空の恋b……へぶっ!」
「友達です。故郷の友人で、たまたまそこで迷ってたのを発見したので、危ないから連れてきたんですけど、よかったですか?」

「あぁ、もちろん構わないが……」
チョップされた頭をサスサスする百合乃の顔を1秒。服に5秒、サーベルに目を移して3秒経って、ズボンを見て5秒経つ。

 14秒。あと1秒あればキリよかったのにね。まぁどうでもいいけど。

 補足すると、この世界は男女でしっかり服の分別がつけられている。
 長ズボンを履くことは少ないらしい。

「その、なんだ。ソラの故郷というのは、そのような格好が流行っているのか?」
私達の服を見つめ、遠慮気味に呟く。

「あはは~、流行っては、無いと思いますね……」
適当に誤魔化し、私のいた席に百合乃を座らせた。何するのか分からないので、手に肉でも持たせて口に放り込む。少し嬉しそうだったのは、お腹が空いてたからということにしよう。

「その剣、一目で分かる業物だが……どこで手に入れた?」
少し時間を置き、どこからともなくリーシーさんが聞く。若干目を輝かせながら、百合乃のサーベルを見ていた。

 あー、この世界の人に刀って分からないのか。刀って細いし薄いから弱いと思われるのかな。

 いや、リーシーさんのこの反応でいくと、そこまでなのか?あぁー!分かんない!

 深く考えると思考の闇に閉ざされそうな気がするので、途中で切り上げる。

「え、あ、え……?」
横にいる私の鋭い眼光と、眼を輝かせる美人を相手に、汗を垂らして口をモゴモゴと動かす。

 よっし、仕方ない。先輩らしいとこ見せてやろうかね。

 おい、お前が原因だろ。と総ツッコミされるが、雑音として耳から流れ落ちる。

「リーシーさんって確か、棒でしたよね?剣とかって分かるんですか?」
ここにいる中だと、私にしかできない質問。百合乃は、リーシーさんの武器は分からないから、私が言うしかない。

 何とか百合乃の窮地は脱した。あとはなんとか会話を逸らして……

 と、原因が何かほざく。

「私は、もう人は斬らない。大切な物を守るために、鋭さは捨てた。剣士としてのプライドはもう、とっくに戦場に捨ててきた。」
本物の勇者とはこのことか。歴戦の戦士感を漂わせた、特有な雰囲気が流れる。

 あ、これやばい。シリアス雰囲気になるやつだ。

 内心、終わった……とorzの姿勢になるが、シリアスクラッシャー(仮)が動き出す。

「どうしてです?守るためには鋭さは必要だと思いますけど。」
会話の主導権を握るように、少し張った声で質問を投げかけた。

 よし!いいぞ百合乃!もっといくんだ!

 完全に傍観を決め込む私。年下に任せるなとのお言葉は、ステッキをバットに見立て、ホームランで打ち返す。

「私はこの手で、戦友を斬ってしまった。その肉を断つ感触は、今でも忘れられない。剣は持てない。手が震えてしまう。だから、私はあれを使う。」

「それって、ただ自分勝手なだけじゃないです?」
「なんだと?」
百合乃の問いに、怒気の篭った声で、それでも冷静に聞き返す。

 ちょっとー、百合乃さん?なにしてるんですかー。完全に踏み込んじゃいけないところ、踏み込んでますよー。

 立場が逆転した私は、心の中で呼びかける。

「斬っちゃったものは斬っちゃったんです。割り切りましょう。戦争中なんでしょう?そんな震えを理由にして剣を捨てたら守れるものも守れませんよ。」
その言葉に、明らかに怒りが滲み始めるリーシーさん。それはそうだ。真っ向から、自分の思いを間違っていると言い切ったのだから。

「分からない者が、知ったように語るのはあまりにも傲慢だと思うが?」
「いや、あなたの気持ちとか知ったこっちゃないですよ。」

「ちょ、キッパリ!?」
流石の私も声が出るほど清々しいその言葉に、リーシーさんも怒りを通り越して戸惑いが生まれていた。

 何この子。怖い。やだ、友達とか言っちゃったよ。どうしよう。
 サバサバ系で押し通せる範疇越してるよ。

 そんな私の思いになんてもちろん気づくはずなく、言葉を続ける。

「分からないのは認めます。でも、斬っちゃったなら責任を取るべきです。大事なのは、斬ったと言う事実よりもその後の行動です。勝手に人の思いを推測するのはいいことではないだろうけど、それと剣を手放すのは違うと、わたしは思いますよ?」

「…………」
リーシーさんも思うところがあるのか、強く拳を握るだけで何も言わない。

「少なくとも、共に戦った仲間が自分の死で剣を捨て、戦いを諦めるなんて姿なんて見たくないはずです。」

「そう、だな。」
最後はその言葉を認めるように、小さく呟く。

「どんなに怖くても、嫌でも、放棄するのは良くないですよ?わたしもここに来ちゃって、でもそれを割り切ってます。空がいるからいいかなって。」
最終的にそこに落ち着き、百合乃は発情期の猫のように唸りながら横の私の腰に手を回し、スリスリと頬擦りをする。

 …………どうすればいいの、これ。

 どうにも収拾がつかなくなり、無言を貫くしかなくなる私。

「ちなみにさっきのは全部適当なので、真に受けないでくだしいね?あ、空が大好きなことに変わりないですからね?」

「「は……?」」
リーシーさんと私の言葉が重なる。呆れ100%だ。

 そして私は思うのであった。
 リーシーさんの気持ちを返してあげて、と。

———————————————————————

 なんか急にシリアス感出してきました……やっぱりリーシーさんはダメです。シリアス製造機です。
百合乃を追加していなければどうなっていたことか……

 真面目モードから一転、そろそろ百合乃のアプローチも始まります。
 頑張れ、ソラさん。
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