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8章 魔法少女と人魔戦争

249話 魔法少女は驚愕する

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 ———魔法少女は軍人少女に惚れられたことには全く気づかず、ふと疑問に思ったことを聞こうと口を開く———

「ねぇ、視界の端にアイコンみたいなのない?」
「………あー、あるね。」
若干遅れた反応だった気がするけど、気づくのに時間がかかったのかと納得する。

 ちょうどいい。ステータスでも聞いておこうかな。

「それ、タップしてみて?」
「……もうしてます。」
「いや判断が早い。」
コント的なやり取りも早々に、で、ステータス見れた?と言って百合乃を一瞥した。

 ステータスとかスキルとか、私の初期の頃と比べてどうとか知りたいし。転生者のステータスなんて知れる機会ないし。

 早速ステータス画面共有で百合乃のステータスを覗き見してみる。

「ひゃっ、そ、空?今何かしました……悍ましいような、いやらしいような視線を感じたような……」

「あ、これもなのね。ステータスを見ただけだよ。そういうスキル。」
「スキルってプライバシーのかけらもないんですね。」

「夢ないこと言わない。」

「……………ってる。」
そんなやり取りの中、私はステータス画面に目を向けた。なんか言ってた気がしないでもないけど、ステータスに関することだろうと無視をする。


 名前 青柳 百合乃

 年齢 16歳

 職業 軍人(仮)

 レベル 1

 攻撃450   防御120   素早さ160

 魔法力100   魔力0

 装備 軍服セット 対魔のサーベル

 スキル 剣姫 魔力感知 軌道予測 魔断
 衝撃断 断絶


「…………はぁ?」

「えっ、これ悪いんです?」
私の半ば呆れたような顔とステータスを交互に見て、悲しそうな目でこっちを見る。

 いやいや、違いますよ。逆。チートすぎる。

 なに?いきなり攻撃450て。私の魔法力、初めて300ちょいだよ?

 神様の扱いの差に少し頬が引き攣る。

「いや、ちょっと。強すぎるなと。チート主人公、百合乃の方?」
「いやいや、ご冗談を。……………ほんと?」
少しの沈黙の後、流石に私のマジの目力を見て事実だと気づく。

「ちょっと鑑定させてもらっていい?」
「鑑定?どうぞ、体の隅々まで見ちゃってくれても構いません。わたしの『ピーーー』m……へぶしぃっ!」
言い切る前に頭を引っ叩き、それぞれのスキルを鑑定眼で染めた右目に映す。

 うっ、流石にこの量は多いなぁ。まぁ、必要なことだし読みはするけど。

 私は映された文字列にザッと目を通し、ある程度理解する。

 剣姫
ありとあらゆる剣術を上級程度まで習得した状態になる。無意識下で発動されず、意識し、思考することで自然発動する。

 魔力感知
存在する魔力を感知することが可能。

 軌道予測
攻撃や物体の動き等の動きを読むことができる。

 魔断
魔断発動時、発動箇所に触れると触れた場所にある魔力を断ち切り、消滅させることができる。

 衝撃断
衝撃断発動時、発動箇所に触れると触れた場所にある衝撃(物理攻撃)を断ち切り、消滅させることができる。

 断絶
どんなものでも一撃で切り裂くことのできる技。クールタイムは30分。発動には多少の時間を有する。

「これ、レベル同じにして私の魔法攻撃を禁止にしたら、勝つの不可能だよ。」
ボソッのレベルを完全に超え、口から言葉が垂れ流される。

 魔力が無いのはいいよ?なのに何で魔力感知があるわけ?それじゃあ、頑張ったら魔法使えるじゃん。
 んでさ、スキル多くない?魔力も物理衝撃も防ぐってそれ、チートじゃん。

 これ、私の武器通らないんじゃ……新武器作らないと……

 脳内で愚痴を語るようにように不満を並べる。この不満を誰にもぶつけることはできず、普通にストレスが溜まる。

「マジですかい。」
「マジです。」

「わたし、そんなに強いんです?言うほどじゃ……」

「転生直後で百合乃と戦ってたら、秒で死んだ。」
「あ、うん。ごめんね?」
何となく私のふつふつと湧き出る謎の怒りに気がついたのか、小首を傾げ、指先をくっつけて謝る。

 くっ、胸をやたらと強調するんじゃない!私への当てつけか!揉んでやろうかな?この際揉みしだいてやろうかな。

 おじさん的発想に思い至り、ダメだダメだと自分を静止させる。

 そんなことをしていると、肝心な箇所をスルーしていたことにも気づかず、私は百合乃の胸の内にあった不安に気づくことができなかった。
 その表面(物理的)には気づけたけどね。

 ヒントは、ステータス欄にしっかりとあったはずなのに。

「んん゛っ、そろそろ帰らないとリーシーさん心配するし、百合乃紹介しなきゃいけないんだから。あ、設定は昔同じ村で育った友達ってことで。」

「えー!そこは、こ・い・び・とっ、でいきましょうよ?」
「女性同士でそれは……」

「今時そんなの気にしませんって。LGBT舐めないでください?」
「どうツッコめばいいの、それ。」
眉を顰めてドヤ顔をする百合乃を見つめ、提案を却下して先に進む。

 というか、さっきから遊んでばっかで何もできてない気がするし。

 時間にして約30分程度。どうしてここまで濃い30分になったんだろう。そう思ってしまう。

「早く行くよ。」
「…………あ、はいっ。」

————————————

 ステータス画面を開いたところ、わたしの視界の端にはもう1つのマークが現れた。
 手紙のマークが点滅していた。

 何かと思って開くと、それは神様からの手紙だった。

 差出人は、

 さっき空が語ってくれた、神様のトップ。

 内容は、

 我が雫のかけらへ。

 ようこそ、我が世界へ。そして、これを先に告げよう。この内容は、他言無用だ。絶対に漏らすな。百合乃よ、お前には選択肢をやる。目の前にいる少女につき、龍神を殺す手伝いをするか。それとも自由に過ごし、異世界を満喫するか。
ただし、見捨てた場合、彼女は死ぬ。確実に。逆に見捨てぬ場合は、2度と元の世界には戻れない。まだお前は死んでいない。だけだ。
自分の命をとり、夢としてこの世界から去るか。
少女の命をとり、現実としてこの世界を受け入れるか。二つに一つ。好きに選べ。
                創滅神より

 といったものだった。

 要するに……と、それはもう神様が言ってた。

 わたしがこの世界に残って空を助けるか、空が死んでわたしが元の世界に戻るか。

 わたしは空が好きだ。もうそれはそれは、大好きだ。
 見ず知らずの謎の格好をした私を助けてくれようとして、さっきは命も助けてもらった。
 そんな空を見捨てるなんてできない。

 でも、向こうの世界には家族も、少ないけど友人も残ってる。

 だけど、選択肢は決まってる。
 わたしの考え方はひとつ。

「そう、決まってる。」
小さく、誰にも聞こえないようにわたしは決意する。

 だから、わたしは決めた。
 ほんとはどちらかなんて、決めたくはない。どっちも好きだ。でも、それでも、わたしはわたしの好きなように決める。

 そんな決意をもとに、わたしはただ、空を見た。

———————————————————————

 今回も百合乃パート入りました。少しストーリー性が出ました。
 元からこんな感じに転生者との交わりは作ろうと思っていたのですが、コント仲間キャラとして使用しました。

 百合乃が見たものとは、一体———
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