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8章 魔法少女と人魔戦争

248話 魔法少女は少女に会う

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 誰これではなく、なにこれ。その理由は、私もそうだから分かる。

 目の前にいたのは1人の少女。草をお尻で踏みつけ、頭に葉っぱを乗っけながら見上げる体制だ。

 向こうからしたら、首元で千切れたコートを着た少女。

 ———そして、魔法少女。

「……え?…………ちょっと、どこなんです?ここ。誘拐ですよ?誰か、助けてくださーい!犯罪者です、性犯罪者です!警察さーん!帰してください、家に帰してください!」

「ちょちょっ!?静かにして!なんの誤解?あとなに?性犯罪者って!」
唐突な叫びに、私も困惑しながら言葉を返す。

「そもそもなんでコップなんて持ってるんですか!あとなんなんです?その服。チラ見せのピンクは下着ですか?エロいです、ダサいです、趣味悪いです、変態です!」
「そこ変態関係ないよね!」
奇想天外な発言を繰り返す少女に、少し怒りの混じった声で反論する。

 なにエロいって。魔法少女服はそういうのじゃないじゃん。あと後半3つ。それただの悪口。

「わたしに何をする気です?指、舌、触手……全部です!?わたしの『ピーーー』に『ピーーー』を挿れて、『ピーーー』して『ピーーー』もして、、それで、それで!」

「なんでやねん!もう、これ……なんでやねん‼︎」
もうツッコミきれなくなり、なんでやねんしか浮かばなくなる。

 この人ほんとにおかしいよ。狂ってる。

 ジト目で少女の姿を今1度確認し、私がと表した判断は間違いではないと悟った。

 その姿は、黒に近い深い緑を基調とした軍服のようなもの。ピッタリとした服?に、同じ色をしたダボっとした上着?のようなもの。そしてまたも同色のズボン。

 そして、なんと言っても目立つのは、腰に巻かれたベルトにかけられた、1本のサーベル。

 どこからどう見ても、ヨーロッパ方面の軍人だ。グー○ル先生に聞けば画像検索で出てくるようなそれだ。!

「……そんなこと言ったら、そっちだって十分変な格好じゃない?」

「変なって、制服のなにが変なんで………す?」
ゆっくりと視線が下げられ、深緑色の軍服が目に映った。その瞳には、困惑の色が見られた。

「なんですとぉぉぉぉぉぉぉ!!」
絶叫が響いた。


 それから程なくし、私達は少し離れた落ち着ける場所に腰を落とした。

「で、あなたは誰なわけ?」
単刀直入に切り込む。私に遠慮というものはないのだよ。

「あなたこそ誰でなんですか?」
「質問を質問で返された……まぁいいや。多分だけどあなた、転生者だよね。」

「あぁ、我々一部業界で流行りの転生ですね。」
「あ、そう……」
まるで私達オタクが一部業界と言われてるようで(実際そう言われてるし事実)反応に困る。

 転生って結構メジャーじゃないの?
 今時の若者、見ないのかなそういうの。

「っていうことは、あなたもですか?」
「まぁそうだね。日本から来たし。」

「そうだったんですね。わたし、勘違いであんなこと言って……私と同じ状況なのに、すみません。」

「あ、同じ状況ではないよ?」

「っていうことは、あなたが私を!?」
「違う!」
また同じようなやりとりが始まり、ため息を吐く私。ボケたいのに、ボケられない。

「心当たりならあるよ。」
「誰なんです?」
「神。」

「厨二ですか?厨二なんですね。お疲れ様です。」

「人を厨二病扱いするのやめてくれない?」
初っ端から昔馴染みの友人の距離間に眉を顰めて注意する。

「あ、すみません。ででっ、ここどこなんです?」
グイッと私の顔に接近し、事情を知るであろう私に期待の眼差しを向ける。

 ここは……事実を言ったほうがいいかな。

 私は、少し躊躇い気味に口を開く。

「異世界の過去の世界。」
「なんですとぉっ?」
オーバーリアクションで跳ね上がり、両手を後ろに下がらせて驚きのポーズをした。

 なんだろうこの子。ノリがヤバい。

 私が言えたことではないけど、というのを追加しよう。

「細かいことは追々ね。まずは互いのことを知ろう。適当に、日本とここでの話でもいいから。」

「あー、はい。わたしは青柳百合乃です。高2の16で、趣味は料理で結構本格的なのもやるんですよ、これが。カレーとか、スパイス潰してやったりしたり———」
「長い。」
話の出口が見えなかったので、無理矢理切断する。

「ちぇー。」
「じゃ、私ね。私は美水空。高2の17だから、少し上だね。趣味はラノベとかアニメとか。そっち系統。」

「土日はなにをしてお過ごしで?」

「ゲームの攻略……って、合コンかい!」
行ったことは無いけど、と小声で付け足す。それを聞いて聞かずか、にちゃっと微笑みを浮かべる。

 私のボケがどんどん吸い尽くされて、強制的にツッコミ役をやらされてる……
 くそっ!こうなったらヤケクソでツッコミまくってやる!

「空さん?でいいです?」
「空でいいよ。」

「空は、どうしてここに?」
まだ質問タイムは終わってなかったのか、小首を傾げて聞いてくる。

 私が少し先輩と知った瞬間猫撫で声を始めたぞ、この子……

「ちょっとお偉い神に頼まれてね。いきなりだけど、説明いい?」
「いいですよ。」
ばっちこーい!的なポージングで説明を促す姿に失笑し、「はいはい」と催促を止める。

 とんでもない子かと思ったけど、意外に悪い人ではない、かも……?

 この時の私はまだ知らない……的なナレーションが付きそうなことを考え、話を始めた。

 四神のこと、創滅神のことを主に話し、禁忌のことなどは話さなかった。
 そんなに話したら、キャパがオーバーしてオーバーがヒートしちゃうからね。

「う、うん?分かったと言えば、分かったかな?」
「そこ疑問形なんだ。」
あははー、と申し訳なさ気に笑い、「もうこの話やめません?」と提案を出してくる。

「まぁそうだね。いきなりこんなこと言ったってわからないだろうし。」
こっちからも一言謝り、唐突に喉の渇きに襲われる。

 そういえばカップ持ってたね。完全に忘れてた。

 左手に目を向けると、悲しそうな目(?)でこちらを見つめる空のカップ。

「魔法分解。」
エアリスリップを水と風に分け、カップに注ぐ。

「なんです?それ。」
驚いた様子はなく、ただ単純に疑問をぶつけられる。

 魔法使っても驚かないんだね。最近の若者は魔法くらい普通なのかな。
 そんなわけないけど。

「水魔法だよ。」
「へぇー。魔法とかあるんですね。料理に便利そうです。」

「そっちなんだ。」
謎用途に苦笑し、仕方なく拠点へ連れて行くことに決めた。その時百合乃は、兵隊のようなポーズで「ありがとうございます!」と言っていた。

 最後に言うことがあるとすれば、若干コスプレ感の否めない姿でやられてるから、なんかふざけてるみたいで素直に頷きづらかった。

———————————————————————

 はい、やってきました百合乃さん。攻守交代。空さんはツッコミにシフトチェンジします。

 時々ボケも混ぜますので、そこはご安心を。(なにを?)

 ところで百合乃さん、どんなキャラか分かりましたよね?
 料理好きの自由ボケキャラ、それにもう1つ属性があります。ちょっと内容が足りないので、後々はっきりします。
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