上 下
255 / 681
8章 魔法少女と人魔戦争

240話 魔法少女は大爆発

しおりを挟む

 ドガァァァーーーンッ!

 開幕1秒、なぜか爆発音が森一帯に響く。

 ドガァァァーーーンッ!

 立て続けにもう1度、爆発音が響く。

 そして私はこうとひと言。

「私は無罪だぁぁぁぁ!」
空中で叫んだその声は、遠い遠い空の彼方まで響き渡ったのだった。———end

 なんて上手く閉まるかいっ!それで収拾ついたら、こんな叫んでなんてない。

 ま、理由が分からなければ原因なんて分かりようがないので、あの爆発が起こる寸前の記憶を思い出すことにする。

 回想というのをしてみよう。

 私は、一旦キューと目を閉じて過去の記憶を蘇らせる。


 私はあの時、脈を引っ張り、水を叩きつけていた。(これだけ聞くとパワーワード)
 脈を反発させて威力を借りてるという原理だ。

 でも、使い古した脈は新たな力を補充することができずにどんどん弱っていく。別のものを使えば良かったものの、そんな気は回らない。

 水をバシャッ、バシャッと地面に叩きつける度に炎は強くなり、焦りで方法も思い浮かばなくなる。
 いたちごっこだ。円を描いて、それを消そうと後を追う。いや、私は負けてるのか。

 そんな時、ある1つの方法を思い浮かんだ。

 そうだ、水球を幾つにも重ねて落下させればいいんだ、と。

 「善は急げ!」そんな軽快なセリフを吐き、脈から力を絞り出して水を連ねる。
 この時代は日が昇るのが早いのか、もう太陽はすぐそこまでやってきていた。

 私が時間を忘れてるだけの可能性もあったんだけど。

 ところで、こんな事故は知ってる?

 金魚鉢が太陽の光を反射して、カーペットとかに火がついて火事が起こったっていうやつなんだけどね。

 さて。私の水球は、丸く形どられている。見た目は綺麗なガラス玉のようで、流石は空力製。弱っていてもここまでの力がある。
 そして朝焼けが、その水球の水にイン。光を集めて次の水球へ、そしてまた、また。

 私が大量の水球を完成させた頃には、完全に光は収束しきっている。さてさて。真下には何がある?もうすぐで引火しそうな大木だ。
 わお。なんて偶然なんだ。

 先を見越して私が移動しただけだけど。

 光を当て続けられた木。そして周りの熱気。木が燃えるのに、それ以上の理由はなかった。

 もうすぐで引火する。そう思った瞬間に水球を一斉に落とす。
 「水球連弾だー!」なんて騒いでた頃が懐かしい。

 もちろん木は燃えた。他の炎からではなく、虫眼鏡の原理で溜められた光によって。
 それによって大木は燃え盛り、炎のサークルの中でもより際立った存在になる。

 そして大木の炎は唐突に弱まった。

 周囲には炎で熱気が篭り、空力の炎は脈をも焦がして魔力を放出させた。魔力は熱気によって遮られ、唯一燃えていない大木へと集まる。

 そんなことにも気づかず、水球がゴールイン。

 熱気は中途半端に効力の強い水でかき消され、大木の炎は勢いを取り戻し……爆発が起こったかのような「ドガァァァーーーンッ!」という轟音を鳴らし、大木は見る影もなく巨大な火柱ができていた。

 火は空力全開、私の全力の炎、そして魔力を燃料にしている。一方の水は、使い古された弱い力の水。
 どっちが先に負けるかは、火を見るより明らかだ。この状況だけに。
 なんつって。

 まぁつまり、こういうことだ。

 ドガァァァーーーンッ!

 爆発で生まれた火柱に突っ込んだ残りの水球は一瞬で蒸発し、熱気を全て吹き飛ばすような大爆発を起こした。

「そうか。うん。スネイクと戦った時と同じように、森が爆発したのね。」
本当に現実か疑いたくなるけど、キューの感触は本物なため、受け入れなければいけない。目を片目で開けると、木々が散らばり、さらにそこに残った炎が引火していた。

「キュー。これ、私のせい?」
「キュウ……?」

「そっか、分からないよね。聞いた私がバカだった。」
少しガクッと肩を落とし、ため息混じりの死んだ目で燃え盛る森を見ていた。

「キュー、なんとかならない?」
「キュキュウ?」
キューにいくら聞いても、キュキュキュキュよく分からない言葉を発するだけなので、もう聞くのはやめておく。

 もうこれは完全に燃えるよね。どうにも出来ないよ、これ。
 これはこれで燃やしとこう。この辺の森は全部見捨てよう。うん、そうしよう。

 若干の絶望の中、色々と諦める。

 ん?待って…………炎に対魔とかそんなの付与したら、この辺魔物は近づけないんじゃない?脈から付与したりして。
 その隙に、燃えてる範囲内に空力で結界みたいなの作って。そうすれば、一時的にでも魔物の侵攻を止められる。

 そんな中、一縷の希望を見つけた私は、次第にやる気を取り戻す。

「よし、やってみようかな。頼める?」
「キュッ!」
詳細のある命令は分かるようで、「任せろ」みたいな顔をする。クリクリな目には合わないけど。

 脈探知……オッケー、炎全体に行き渡るように魔物避けを作って……品種改良してる気分になってきた。
 そもそも品種改良してる気分ってなんだろう。

 謎の気分を感じてきたことで、疲労が蓄積されてることに気づく。

「ぱっぱと終わらせて帰りたい……」
脈のバリケードを作り、私は空中でそう呟く。

 よっし、地盤は固めた。下地は作ったし、そろそろ休憩を……
 あ、ダメですか。

 私は疲れた足腰に鞭打って、地上に降りる。この炎はただの炎じゃないので、魔法少女服を貫通して熱気を感じる。

「熱っ……魔法少女服働いてよ、ほんと。神様も機転とか効かせて……」
魔法と物理にしか耐性ないこの服に、少し文句を言いたくなる。

 コート脱ぎたい……魔法少女服で、温度調整できてたからいいけど、出来ない今は暑くてしょうがない。

 コートをパタパタとして風を送るも、熱気が入ってきて逆に暑く感じる。

「終わらせれば帰れるんだし、急ぎでやるとしますか。」
神速で踏み込み、私のやるべきことを始める。

 内側から外側へ。魔物を追い出していく。

 この炎の中には魔物は生きれない。そして炎が消えた時には、結界で近寄れない。

 そんな状況を作るために、熱い中円を描いて炎を閉じ込めるように頭で想像する。

「ざっと完成図は見えてる。あとは作るだけ。」
考えを言葉にし、後戻りをできなくする。

 宣言したことを実行しないほど、私の精神は軟弱じゃないよ。
 めんどくさいことはそもそも宣言しないだけとも言うけど。

 結界の作り方?知らないよ、そんなの。
 その場のノリと勢いでどうにでもなるよ。

———————————————————————

 次回こそは、次回こそはまともな話になるはずです。アクションが起こるはずです。きっと、多分。そう信じていてください。

 それにしても、あの現象使い回しましたね。

 ですが、火災時に起こる爆発の現象を二つ同時に起こして地形と土地を歪ませてるので許してください。
心の声(ここが後の竹林なんて、誰も思わないだろうな~)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こんなとき何て言う?

遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫
恋愛
 突然異世界の船を手に入れてしまった平凡な会社員奈央。私に残されているのは自分の家とこの規格外な船のみ。  ガス水道電気完備、大きな大浴場に色々と便利な魔道具、甲板にあったよく分からない畑、そして何より優秀過ぎる船のスキル!  これなら何とかなるんじゃないか、と思っていた矢先に吊り上げてしまった……私の好みドンピシャなイケメン!!  何とも恐ろしい異世界ライフ(船)が今始まる!

【猫画像あり】島猫たちのエピソード

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~ シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。 2024年4月15日午前4時。 1匹の老猫が、その命を終えました。 5匹の仔猫が、新たに生を受けました。 同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。 島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

泥酔魔王の過失転生~酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない!~

近度 有無
ファンタジー
魔界を統べる魔王とその配下たちは新たな幹部の誕生に宴を開いていた。 それはただの祝いの場で、よくあるような光景。 しかし誰も知らない──魔王にとって唯一の弱点が酒であるということを。 酔いつぶれた魔王は柱を敵と見間違え、攻撃。効くはずもなく、嘔吐を敵の精神攻撃と勘違い。 そのまま逃げるように転生魔法を行使してしまう。 そして、次に目覚めた時には、 「あれ? なんか幼児の身体になってない?」 あの最強と謳われた魔王が酔って間違って転生? それも人間に? そんなことがバレたら恥ずかしくて死ぬどころじゃない……! 魔王は身元がバレないようにごく普通の人間として生きていくことを誓う。 しかし、勇者ですら敵わない魔王が普通の、それも人間の生活を真似できるわけもなく…… これは自分が元魔王だと、誰にもバレずに生きていきたい魔王が無自覚に無双してしまうような物語。

処理中です...