254 / 681
8章 魔法少女と人魔戦争
239話 魔法少女と消火活動
しおりを挟むここには森がある。危険な森だ。そしてその森の上空に、私は飛んでいた。なんでこんなところにいるって?そんなの簡単。戦争へ駆り出されたから。
酷いよね。ほんと。
それはどうでもいいとして、その状況下で私は、キューと会話をしていた。
内容は、めまいの話だ。振り回しちゃったせいで、キューの目が回ったみたいだ。
そんなキューの今後が少し不安になってきていたが、真下で起こっていることはもっと危ない。
「……現実逃避、やめようか。」
そこには、とてつもない範囲に燃え広がった炎。パチパチと音が立ち、私の不安を煽ってくる。
私、これ今から消火するの。
「不可能だよ!」
1人ツッコミを入れるも、それすらも億劫になってすぐに口を閉じた。
もうこれ、笑うしかないよね。消火と言われても、脈の反発を使った消火じゃ限度がある。
炎は、少しの間禁止にしよう。せめて、それなりの氷魔法やらなんやらを覚えるまで。
心で反省をする。
反省はいいことだ。
時と場合を考えない反省は良くないけど。
「空力じゃあ、炎とかの爆発系しか上手く使えないけど、これは個人差とかなのかな。得意不得意的な。」
そんな思考を巡らせつつ、脈探知で見つけた脈をキューの力を借りて引っ張る。
脈は不可視で触ることもできない。それを、通常の空力で具現化することによって、触れることを可能してる。
名付けて、触れる空力!
キューの力を頼りに水を脈から生み出し、まるで弓の弦を弾くように、高出力な水を発射する。
「もちろんそこは空力製。熱で簡単には蒸発はしない!ほらほら、全然消化できてないけど、蒸発はしてない!」
現実を受け止めきれず、テンションを上げた。もちろん、脈の力にも限界があるので、いつしか威力は落ちる。
よしよし。このまま森が燃えたらどうなる?更地になって魔物が真っ直ぐ来る。お終い!
あー!竹林の村みたいにガードがあればいいのに!
電気柵的なものでも設置できたらな……と、この世界にそぐわないものすら考え始める。
「うーむ、炎は木に沿って燃えてってるし……先に木を濡らすとか?意味無さそう。」
いくら考えても答えは生まれず、あぁぁー……と、悩みに悩む。
あれもダメ、これもダメ。それもダメ、どれもダメ。何がいいの、結局。
若干迷走してきたので、原点回帰で普通に消火を始める。
「キュッキュキュー、キュッキュキュー!」
頑張れ、頑張れ、のテンポで鳴くキュー。仕事をしながらそんなことができる有能ぶりに、「流石は聖獣」と賞賛の声を送りたい。
私とは大違いだね。神から生まれたキューは、生物としての格もその他諸々も違うみたいだ。
私みたいな身も心も、冒険者ランク以外全部B級な自分と比べ、悲しくなってくる。
神>>キュー>>>>>社会人>学生達>私>ニート
こんな感じかな。
「もっと大量に水って出ないのかな?一向に終わる気配がしない。」
水をバッシャバッシャと両手から弾き出しながら、哀愁に満ちた声で言葉を漏らす。
ヘイよー、強制労働。永遠労働。ブラック企業!そんなんほんとマジ反対。反抗投降、消火活動!チェケラ。
え?全然ラップじゃないって?一般学生が、途端にそんなの思いつくわけないでしょ。ノリだよ、ノリ。
やっぱり、1人問答はやめられない私だった。
「水魔法って案外汎用性高い気がするんだよね。混合魔法のエアリスリップしか持ってない私が言うのもなんだけどさ。」
「キュキュッ?」
「ほら、窒息させるとか、飲み水とか、落下時の緩衝材にもなるし、水圧の力もすごいじゃん。」
アクアソーサーは完全に水では無い何かなので、無視することにする。とにかく、水系統は戦闘じゃなくても使いやすいからいいよねって話だ。
あー、魔法使いたいなぁ。
「不便だよね、ほんと。」
ただだたそう愚痴を吐き、段々とこの消火時間がキューとの談話タイムになってる。だんだけに。
この炎、消すか消さぬか……
いやね、消すには消すと思うけど。何かに利用できないかなって。ちょうど、炎が盾みたいになってるからそれを利用して……なんて。
「もっとこう……捻ってやれば?」
思考とは反対の行動をとってるけど、そこは見逃してもらって。
「あぁ、地道にやるかな……」
そうして私は、脈を引っ張った。
—————————
髭を蓄えた老人。龍神ルーは、まだ何もない空島にて顔を顰めていた。
「………結界か。魔力の質は低いが、結界の出来は完璧。………もう帰ることはできないな。」
寂しげな声音で呟く。
「……逃げ道はどこにも無い。自ら向かうべきか、呼び込むべきか。」
龍神はやけは起こさず、少し思考を回す。
もう後戻りはできない。慎重に行くべきか、早急に決めるべきか。
過去が塞がれたのなら、楔となった少女もまた、この世界から出られないということだ。
龍神には1つ誤算があった。
彼女があの日、エディレンの話した転生者だということを知らなかった。
少女は既に竜を殺し、このままでは人魔戦争に参加する龍も餌食になる可能性がある。
そのため、迅速な決断が必要だった。
自らの危険が少ない状態で、あの少女を殺さなければならない。
楔が壊れれば、当然繋ぎ止められていた現世とは離れ、2度と戻れない。だが、結界が張られた今、楔を残す必要性は無い。殺す必要もないが、龍にとって危険分子は取り除くのが得策だ。
「………世界に告げよう。祝福を与えん。」
彼は楔に向けて言葉を放つ。
篩にかけん。悪しき者には罰、善なる者には祝福を。そして世界は昇華する。
「………龍神、ルーはここにいる。」
この言葉が届いたのは、戦争が一旦の終結を迎えた頃だった。
———————————————————————
今回は永遠に消火回です。これからのために、色々言わせておきました。元からこの章の内容は薄いので、結構書くの大変です。
そして今回も、ただただ消火するだけなので、文字を書くのがとてつもなくめんどくさかったです。なんでこんな回を作ったんでしょう。
全く関係ない話ですが、Twitterで謎動画を見つけて1人笑い転げておりました。執筆時間がとてつもなく削られました。どうしてくれるんですか?
0
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説
異世界を服従して征く俺の物語!!
ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。
高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。
様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。
なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー
不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました
今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った
まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います
ーーーー
間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします
アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です
読んでいただけると嬉しいです
23話で一時終了となります
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる