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8章 魔法少女と人魔戦争

238話 封結界

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 上昇を続け、雲が徐々に近づいてくる。
 近づけば近づくほど魔物が増え、雷が直撃することもままある。

 そんなものはオートバリアで全て弾き返せているのでいい。雷は時々俺の肌を焦がすこともあるが、オートヒールでなんとかなった。

 流石に自然現象に負けるほど弱くないと思っていたが……どういう原理だ?

 雲には魔力が篭っているようで、そのせいで空中の魔物は強くなる一方。うざいの一言に尽きる。

「もっと簡単に昇る方法は無かったのか……」
今もバリアに守られながら、落雷の中を進んでいく。超加速が無かったらと考えると、キレている俺が想像できる。

 チッ。そろそろ着いてもいいだろ。この空間を切り裂いてやろうか?

 神定魔法、ステータス画面の空裂きの文字を横目に、そう思ってしまう。

「空間を裂いたところで、だ。そこから移動が可能なわけでもない。」
八つ当たりはやめ、頭をガシガシと掻きながら空を蹴って加速する。

 ここまで作業とは。今度はそういう系統の魔法を奪ってもいいかもな。無駄な魔法は画面を圧迫するから取らないようにしていたが、必要だな。

 こんな形で学びを得るとは納得がいかないが、利用できるなら利用しよう。

 移動が多い今回の命令だが、ようやくゴールが見えてきた。

「そもそも、俺がここに行かされたのは偶然か?神の棲家にしては、流石に近すぎやしないか?」
一瞬あの神のしたり顔が見えた気がして、ぶん殴りたくなった。その怒りは全て雲に叩きつけ、放出された炎は進行方向の全てを蒸発させた。

 あれ……か?

 空中に浮かぶ神秘的としか表現できないような島と建造物を眺める。

「随分と質素なところに住んでるんだな。神は。」
神秘以外何も感じないその島を目指し、最後の超加速で接近した。

 ……なんだこの感覚。感じたことはないが、泡の中に入ったような、そんな感覚といえば分かりやすいか。
 とにかく、変な感触がした。

「まぁ、いいだろう。あとは結界を貼るだけだしな。」
とうとう島に上陸した俺は、その歪な形をした島の探索を始めた。

 RPGみたいだな。日本にいた頃なら、女に囲まれて好き放題ゲームができたんだが。

 今じゃ性格も口調も変わっちまったが。顔付きも少し悪くなったか?特に目元。
 運がいいことに髪の色素は抜けなかった。ストレスが全部怒りに変換されたからか?

 はっ。俺も安いな。敵がいるだけで、ここまでヤル気が起きるんだからな。

 自嘲するように笑う。

「指定の場所はどこだ?この島ならどこでもいいのか?チッ。もっと詳しく教えろよ。」
悪態を吐きつつ、素直に探すのは俺もどうかとは思うが、やるしかないのならやる。

「ん?なんだあれ。」
紫色に発色する、怪しげな立体が宙に浮いていた。よく見れば、それは外から見ることができた建造物(というより神殿だな)だった。

 いかにもここって感じだな。説明されないということは、ここでいいんだよな?
 俺は一切の責任は取らない。別に、いつか捨てる世界だ。どうだっていいさ。

 失敗など、そう一笑に付し、受け取った紙を手に取る。

「こいつに魔力を流すのか?」
今更ながら、怪しさを感じる。

「レベルは200をとうに超してる。魔力量で言ったら、余裕……か?」
神殿の中に入りつつ、そう考えを呟く。

 星の光みたいだな。そんな殊勝なもん、こっちに来てから見た記憶もねぇが。

 そんな立体を邪険にするように、紙を立体の正面に貼り付けて魔力を流す。

 ドクン。ドクン。

 心音が響いた気がした。

「っ、目眩が……」
突然血が抜かれたようにふらつき、それが魔力の急減のせいということをすぐに悟る。

 ここまで大規模な魔法なのか……?そりゃそうか。この世界を過去から隔離する魔法だからな。

「だからといってこんな量取られるとは聞いてねぇ!」
叫んでも魔力供給は全く止まらない。これは供給が終わるまで、待つしかないようだ。

 魔力の3分の1が無くなった。まだまだこの魔法陣は魔力を吸い上げる。
 変化といえば、魔法陣の線のうち3分の1が色づき始めている。

 次第に魔力は半分を越え、それでも止まらない。

「いつまで続くんだ、これは。」
恐怖は怒りに変換され、歯がミシミシと音を立てるまで歯を噛み締める。

 そして、魔力の数値は、遂にゼロに達した。

「終わった……のか?」
それとほぼ同時に、魔法陣の全て色が行き渡った。突如としてそれは発光し、魔法陣の描かれた紙は焼き消え、魔法陣そのものだけが立体の残る。

 始まったのか、結界の構築が。
 これで神は死ぬんだな。実質、もう死んだも同然か?

 そう思うと、自然と笑みが溢れる。

 立体は魔法陣に包まれ、自然消滅していく。残った魔法陣は拡大され、核のようなものに変化して宙をくるくるとその場で回る。

 その魔法陣の核から真上に太い光が飛び出し、神殿の天井でそれは止まる。光は捻れ、収束していく。捻れた光は、次第に天井を貫通して弾けるように世界へ飛んでいく。

 こうして世界は守られる。俺の手によって。
 いや、違う。世界は壊される。俺の手によって。

「魔力、無いのか……」
歩こうと足を上げると、とてつもない重量に顔を歪めた。

 眠気も感じてきた。体のだるさとどうしよもない疲労感。完全に寝かせにきてるな。
 強制スリープでもさせる気か?

「今回だけは、乗ってやる。」
カッコつけるが、実際には耐えきれずに眠りについただけだ。


 ———ある魔法少女は、こんなことが裏で起こっていたことなどつゆ知らず、今もなお消火活動に取り組んでいた———

———————————————————————

 レンの回は終了になります。今後もちょくちょく出せていけたらなと思っております。
 だいぶ重要めな人物なので、ちゃんと出番を作らないと忘れ去られてしまいます。

 私の記憶から。
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