上 下
250 / 681
8章 魔法少女と人魔戦争

235話 魔法少女は1人で戦う

しおりを挟む

 私、1人で戦う羽目になっちゃったわけだけど……

「勢いで言っちゃったけど、不可能じゃない?」
魔物が出現し始めたその時、私はそんな言葉を漏らしていた。

 だって、この量の魔物が私のところに来る保証なんてないし、通り過ぎられたら無理。
 空力だけでどうしろと。

「キュー。どうにかできない?」
「キュッ!」
「うん、さっぱり。」
キューの言ってる言葉は理解できないので、仕方なく自力でなんとかする。

 あ。完全に忘れてたけど、私。大量のSPが残ってるんだった。

 今のSPが204910……多い。これで魔法を創ればいい!

 今回は要所要所で思いついた分だけ創ってこう。そしたら余裕かも知れないね。うん。

 希望を見出し、早速取り掛かる。

 まず必要なのは、空力の操作。だから、万能感知の他に、脈探知を創ろう。
 あと神速はいっそのことⅩまで上げよう。

 そういえば、地龍魔法のⅤ×3っていうのは、地龍能力の上限操作で、Ⅴの上限を増やして強化量を上げてるらしい。
 うーん、難しいね。Ⅹの上限上げればよかったのに。

 閑話休題。

 空中歩行も使える魔法だし、Ⅴまで上げるとして……あー、大変だ。

 SPは結構減った。ざっと6000くらい。でも、私のSP20万越えというとんでもない量だから、痛くも痒くもないっていうね。

 私の(地龍さんの)凄さに恐ろしくなってくる。

「これであの2人の真似できる?」
「キュキュッ!」
元気に返事をするも、よく分からない。でも、空力の発動を感じたので私も脈探知でしっかりサポートしながら、空力を発動する。

 主従逆転してきてる気がする……

 そんなことは記憶の端に追いやり、今は今に集中する。

「ヘイト。」
その言葉を口にすると、キューが反応するように「キュー!」と鳴き、私の周りに脈が集まる。

 あっ、そうか。分かった。2人がこの方法をとったかは分からないけど、原理は同じだと思う。

 この脈に向かって魔物は来てたのか。魔物は力を欲するから、魔力とかこういうのに反応するんだ。

「これなら、私でもできるかもしれない。」
微笑が溢れ、刀を構える。今なら魔法も使ってもいい気もするけど、初志貫徹。使わないと決めたから一応貫こう。

 進化した神速で、自分からやられに来た魔物に接近し、ますまは首を一刀両断する。そのまま空中歩行で空を蹴り、空力の炎を宿した刀を振るい、集まった数体の魔物を薙ぎ払う。

「うわっ、強……、ん?流れが……」

「キュウッ!」
空力が脈に流れたと思ったら、後ろに大きな影が現れた。

「グ、ガガァァァァァァァァッッ!」
クマのような魔物が腕を振るっているのを、脈の変化を感じ取ったキューが脈で縛り付けて止めていた。

 キュっ、キュ~!危なかったぁ。危機一髪じゃん。

 安堵のため息もそこそこにして、私は刀を真横に振るい、クマの身体を斬り裂いた。

「うっ、返り血ついた……」
ベトッとする感触に顔を曲げ、軽く拭って次に行く。

 脈探知、作るのにだいぶSP使ったけど……まさか神魔法だったりする?

 その予想は、なんとなくあってる気がしてなんとなく身震いが起こる。
 私はとんでもないものを創ってしまった、と思ってしまう。

「あの子達もこんな感じで戦ってたのかな。よっ、っと!」
魔物の気配を感じ取ってバックステップを踏み、空中歩行で1歩上がって回避。そしてそのまま突き刺す。もう血はついたし、吹っ切れて気にしないことにした。

 いちいち気にしてたら冒険者なんてやってられないよ。

 と、気にしていた私が思う。

 最初の波を越すと、次は見覚えのある蜂が襲ってき始めてきたので距離を取る。

「こいつら、針飛ばしてくるから厄介なんだよね……」
刀を逆手に構え、弾く準備を整える。すると、前方にいる蜂達は突っ込んできて、後方部隊がが上に向けて針を放つ。

 この蜂、頭使ってきてる?知恵持っちゃった感じ?あの時は馬鹿の1つ覚えみたいに、針飛ばしてきてたあの蜂が?

「後ろに逃げたら串刺し、前に行ったら軍勢に飲まれ、立ちすくんでても同じ……」
どうしよう……、と、私は少しの間逡巡する。

 後ろも前もダメ。なら、全て真正面から消し去ればいい!

「炎刀っ!」
炎を刀身に全て込め、脈ごど巻き込んで刀を振るったその瞬間に、貯めた力を一気に解放する。

「渦巻け!」
捻れた脈が元に戻ろうとする反発力で荒れ狂った炎の渦は、爆発を生みながら針と蜂を消し飛ばす。

 お、おぉ……?森が焼けて……

 魔法と違って脈に戻るはずの炎が、そのまま森に着火して燃え上がる。

「えぇ、やばくない?消火しないと……」
空中歩行で全体が見回せる位置に移動し、範囲を確認する。

 うわぁ……すごいことになってる。魔物も近寄らないんじゃない?
 このままだと全部燃え尽きるだろうけど。

 脈探知で使えるようになった新たな力。脈自体を使った攻撃と補助。そして脈の反発を使った高出力の攻撃。
 森を燃やしたことを除けば、グッドな成長なんじゃない?

 今頃、拠点で惚けている指令さんが思い浮かび、ちょっと笑ってしまう。

「案外1人でもいけるもんだね。ヘイトってやつができなかったらどうなってたことやら。」
そう呟いていると、コートがモゾモゾと動く。

「キュ、キュウ……」
ぐったりと疲れた様子のキューが、肩に登ってくる。

「大丈夫!?力使いすぎた?」
「キュ……」
体を横に振る。ノーのサインだ。

「炎が熱かった?」
「キュ……」
またも体を横に振る。

 えー、じゃあなに?
 それ以外それ以外………

「……目が、回ったとか?」
「キュキュ……」
弱く体を縦に振った。イエスのサインだ。確かに、めっちゃ動いて回転もした。

「キュー、頑張ろう。」
そうとしか出てこないので、頭をぽんぽんと撫でてあげる。特に意味は無い。

 それはもう無理だよ。これだけ魔物がいるのに動くなって言われたら、私は森を焼き尽くさないといけなくなる。

 キューには辛いことを強いるようだけど、頑張れ。耐えるんだ。
 どこかの太陽神も言ってたよ。もっと熱くなれよって。

 ん?使うところ間違えてるって?
 そんなの知らないよ。

———————————————————————

 もう秋ですねー。1番好きな季節です。花粉も虫も気温も、どれをとっても都合がいい。結局は消去法なんですが。
 私も死なないようこの秋を生きますので、皆様も頑張ってください。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

処理中です...