上 下
245 / 681
7章 魔法少女と過去の街

閑話 魔法の事実

しおりを挟む

 この宇宙はひとつながりのもの。

 異世界というものや、ある魔法少女の故郷である惑星のある宇宙も、不可視の線で繋がっている。

 そのために発生する異世界転生。
 この線を使い、生物の魂は行き来する。

 神の娯楽のために呼び出される王道の転生。
 別の世界の人々が、助けを求めて呼び出す召喚。
 通常の魂が、たまたま経路から脱線して移動する出生。
 これらが今現在確認されている別世界への移動手段。


 神の気まぐれにより、ある魔法少女が転生した世界は魔法が最弱と呼ばれる世界。

 なぜ、最弱なのか。
 その理由を説明しよう。

 魔法とは、イメージと魔力、詠唱で出現させる異能。イメージと魔力、どちらかがかければ威力は下がり、詠唱を間違えれば魔法は消える。

 その中の魔力。人間は、その魔力が少ない。

 別の生物の一部には、魔法を使う者もいるが、威力が違いすぎるため別物と考えられている。

 そしてもう1つ。詠唱だ。
 詠唱は魔法の中で必須とされているもの。その理由は、魔力の捻出の手助けをするものだからだ。

 魔力の少ない人間は、その少ない魔力を搾り出して使う必要がある。
 無くなりかけの歯磨き粉を振るようなものだ。

 そのため、詠唱は強い魔法になればなるほど長くなり、戦闘用の魔法は戦闘に使えたものじゃない。

 人魔戦争以降、魔物が人を襲うことも少なくなり、魔法が強くある理由も減った。
 というより、この時代の人間(というより、現在も)は魔力によって身体能力が飛躍的に上昇したため、魔法を使う必要も減った。

 戦闘しながら使えず、魔力が少ないため連射もできず、更には同じ理由で威力も弱い。
 冒険者としての仕事は、ヒーラーしかない。それも、ポーション等で代用できる。

 以下の理由で、「魔法は弱い」という烙印が押されてしまった。

 これは現在のこと。
 人魔戦争時代の魔法の印象というのは、一体どういうものだったのか。

 まず、魔法というものは魔物が使うものであり、人間は使えない。
 魔物は邪悪であり、邪悪なものが使うため邪なる力とも呼ばれる。

 このことから、魔法に対する思いは悪いものであった。

 そして、それらを相手取ったのは空力使い。
 一部の選ばれたものしか扱えず、魔力が根付き始めたこの世界からは消えてしまった力。
 だが、その力でも抑えるのが精一杯。

 ならば、どのようにして人類は人魔戦争を切り抜けたのか。
 これは諸説あるが、1番有力なのは全空力使いを集め、敵将を討ち取ったからだと言われている。

 一部の者からは、ある1人の英雄が現れたからだという意見も出ているが、大半の人々は「そんな夢物語があるか」と、切り捨てている。

 人魔戦争は終結を迎え、人々は平穏を手にした。
最初の数百年間は魔力が根付き始めたことに気づかなかったが、核石や魔物の研究が進み、発見に至った。

 先程説明した通り、魔力は存在するだけで身体能力を高め、上位の冒険者は無意識に魔法を使う。

 このような違和感も発覚し、それも発覚理由のひとつである。

 この頃は魔法というより魔力に注目がいき、印象はそもそもが薄かった。

 人間の魔法の起源は、人魔戦争から生まれた魔力溜まりに触れ続けたためである。そして、魔力だけで生まれた魔族。

 現在の上位冒険者のほとんどは、魔族の子孫である。
 そうして段々と魔力が馴染んできた。

 魔力というのが一般化した結果、元から無意識で使われることが多かった魔力は認識から外れ、魔法、魔力の概念が薄弱になった。

 そのため、イメージすら失われた。

 魔法に重要な要素3点が、どれも欠如している。

 これが世界の真実。魔法が弱いと言われる、その理由。

 人間は後天的に身につけた魔力というものをうまく使いこなせず、量も少ない。認識も薄いため、魔力のイメージが掴めず、詠唱すら長い。

 魔法が弱いのではない。魔力が弱いのではない。
 人間がただ、怠慢なだけだ。

 魔法は神が創造した、。簡単に言えば娯楽だが、魔法は唯一平等なもの。

 今、ある魔法少女は、神を越えようとしていた。

 魔法が弱いという認識の世界で、魔法は邪と呼ばれる世界で、ある魔法少女は覚醒しようとしている。

 この世界の主、創滅神は、娯楽を求めていた。

 だが、その少女はどうだろうか。

 神が娯楽で生み出した存在か。
 はたまた、この変わり果てた世界の運命を変えるための存在か。

———————————————————————

 この章も終わりということで、今回はこの世界の「魔法」についての話でした。
 まとめると、魔法じゃなくて人間が雑魚ということです。

 文化の発展とともに力は失われたわけです。
 もっと簡単に言うと、いい感じにこの章を終わらせるためのお勉強回です。


 今回、文字数が少ないのでショートストーリーで文字数稼ぎをしたいと思います。


 ショートストーリー第1弾

「学生トーク(?)」

 これは本編では語られなかった、空と恵理の女子トークの一部である。

「そういえば、ここ数年は日本のこと考えたこともなかった。」
「私は日本のことしか考えてなかった気がする。」
恵理は頬杖をつきながら、そんなことをこぼした。

「なにか日本に未練とかはないの?」
「未練……?……………あ、高校の制服、着てみたかった。」

「そうかー、高校の制服ね。確かに、私もアニメとか見てると、あぁいう制服着てみたいなーって思ったりする。」
「それは珍しいと思うけど……」
呆れたような目で見つめてくる恵理。でも、別に私は気にしない。

「高校選びの時、制服が可愛いなって思って、色々条件も良かったから選んだんだけど……もう着れない。」

「作ろっか?今その魔法も創ったし。」
「魔法を創るってなに!」
恵理が、手錠をはめられたまま体を前のめりにさせ、声を荒げた。

「ただの装備についてたスキルだよ。」

「それのせいで薄れてたけど、制服作るなんて無理でしょ?」
「それがいけるんだよね~。」
はいはい、制服思い浮かべてー、と窓をバンバンと叩いて催促する。

「お、思い浮かべろ?こっ、こんな感じ……?」
「そうそう。おー、可愛い。……え、え?スカートの丈短くない?」

「全部こんなものでしょ?」
「そうなの?あ、もっと集中集中!」
2人でわいわいと騒ぎつつ、新しい魔法、記憶念写で記憶を写真に写す。

「これ、今度作って送ってあげる。一応一言伝えはするけど、着る時は頑張って手錠外してもらって。」
「着るためのハードルが高いけど、私は本当に制服を着れるの?」
「多分?」とおどけながら、くすくすと笑う。

「なんで笑うの?」
「なんでだろう?」
こんな感じで、私達は話を続けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説や歴史の英雄話好きの高校生の洲河 慱(すが だん) いつものように幼馴染達と学校帰りに公園で雑談していると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は素晴らしいジョブとスキルを手に入れたのに僕のは何だこれ? 王宮からはハズレと言われて追い出されそうになるが、幼馴染達は庇ってくれた。 だけど、夢にみた迄の異世界… 慱は幼馴染達とは別に行動する事にした。 自分のスキルを駆使して冒険する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 現在書籍化されている… 「魔境育ちの全能冒険者は好き勝手に生きる!〜追い出した癖クセに戻って来いだと?そんなの知るか‼︎〜」 の100年前の物語です。 リュカが憧れる英雄ダン・スーガーの物語。 そして、コミカライズ内で登場する「僕スキなのか…」がこの作品です。 その作品の【改訂版】です。 全く同じな部分もあれば、新たなストーリーも追加されています。 今回のHOTランキングでは最高5位かな? 応援有り難う御座います。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

いるだけ迷惑な最強勇者 〜ハズレスキル『味方弱化』が邪魔だと追い出されたので、この異世界で好き勝手させてもらいます!〜

束音ツムギ
ファンタジー
【完結保証!】  ——気づけば、クラスごと異世界に召喚されていた。  そんなクラスの中でも目立たない、ごく普通の男子『梅屋正紀』も勇者として召喚されたのだが、《味方弱化》という、周囲の味方の能力値を下げてしまうデメリットしかないハズレスキルを引いてしまう。  いるだけで迷惑になってしまう正真正銘のハズレスキルを手にした俺は——その場で捨てられてしまう。 「そんなに邪魔なら俺から出ていってやる」と、一人で異世界を旅する事になった俺は、旅の途中で《味方弱化》スキルに隠された効果が、Sランクスキルをも凌駕できるほどの最強の効果であった事を知る。  いるだけで迷惑な最強の勇者『梅屋正紀』が、異世界で無双するッ! 【小説家になろう】【カクヨム】でも連載中です!

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。 異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...