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7章 魔法少女と過去の街
閑話 魔法の事実
しおりを挟むこの宇宙はひとつながりのもの。
異世界というものや、ある魔法少女の故郷である惑星のある宇宙も、不可視の線で繋がっている。
そのために発生する異世界転生。
この線を使い、生物の魂は行き来する。
神の娯楽のために呼び出される王道の転生。
別の世界の人々が、助けを求めて呼び出す召喚。
通常の魂が、たまたま経路から脱線して移動する出生。
これらが今現在確認されている別世界への移動手段。
神の気まぐれにより、ある魔法少女が転生した世界は魔法が最弱と呼ばれる世界。
なぜ、最弱なのか。
その理由を説明しよう。
魔法とは、イメージと魔力、詠唱で出現させる異能。イメージと魔力、どちらかがかければ威力は下がり、詠唱を間違えれば魔法は消える。
その中の魔力。人間は、その魔力が少ない。
別の生物の一部には、魔法を使う者もいるが、威力が違いすぎるため別物と考えられている。
そしてもう1つ。詠唱だ。
詠唱は魔法の中で必須とされているもの。その理由は、魔力の捻出の手助けをするものだからだ。
魔力の少ない人間は、その少ない魔力を搾り出して使う必要がある。
無くなりかけの歯磨き粉を振るようなものだ。
そのため、詠唱は強い魔法になればなるほど長くなり、戦闘用の魔法は戦闘に使えたものじゃない。
人魔戦争以降、魔物が人を襲うことも少なくなり、魔法が強くある理由も減った。
というより、この時代の人間(というより、現在も)は魔力によって身体能力が飛躍的に上昇したため、魔法を使う必要も減った。
戦闘しながら使えず、魔力が少ないため連射もできず、更には同じ理由で威力も弱い。
冒険者としての仕事は、ヒーラーしかない。それも、ポーション等で代用できる。
以下の理由で、「魔法は弱い」という烙印が押されてしまった。
これは現在のこと。
人魔戦争時代の魔法の印象というのは、一体どういうものだったのか。
まず、魔法というものは魔物が使うものであり、人間は使えない。
魔物は邪悪であり、邪悪なものが使うため邪なる力とも呼ばれる。
このことから、魔法に対する思いは悪いものであった。
そして、それらを相手取ったのは空力使い。
一部の選ばれたものしか扱えず、魔力が根付き始めたこの世界からは消えてしまった力。
だが、その力でも抑えるのが精一杯。
ならば、どのようにして人類は人魔戦争を切り抜けたのか。
これは諸説あるが、1番有力なのは全空力使いを集め、敵将を討ち取ったからだと言われている。
一部の者からは、ある1人の英雄が現れたからだという意見も出ているが、大半の人々は「そんな夢物語があるか」と、切り捨てている。
人魔戦争は終結を迎え、人々は平穏を手にした。
最初の数百年間は魔力が根付き始めたことに気づかなかったが、核石や魔物の研究が進み、発見に至った。
先程説明した通り、魔力は存在するだけで身体能力を高め、上位の冒険者は無意識に魔法を使う。
このような違和感も発覚し、それも発覚理由のひとつである。
この頃は魔法というより魔力に注目がいき、印象はそもそもが薄かった。
人間の魔法の起源は、人魔戦争から生まれた魔力溜まりに触れ続けたためである。そして、魔力だけで生まれた魔族。
現在の上位冒険者のほとんどは、魔族の子孫である。
そうして段々と魔力が馴染んできた。
魔力というのが一般化した結果、元から無意識で使われることが多かった魔力は認識から外れ、魔法、魔力の概念が薄弱になった。
そのため、イメージすら失われた。
魔法に重要な要素3点が、どれも欠如している。
これが世界の真実。魔法が弱いと言われる、その理由。
人間は後天的に身につけた魔力というものをうまく使いこなせず、量も少ない。認識も薄いため、魔力のイメージが掴めず、詠唱すら長い。
魔法が弱いのではない。魔力が弱いのではない。
人間がただ、怠慢なだけだ。
魔法は神が創造した、神を越えるための力。簡単に言えば娯楽だが、魔法は唯一平等なもの。
今、ある魔法少女は、神を越えようとしていた。
魔法が弱いという認識の世界で、魔法は邪と呼ばれる世界で、ある魔法少女は覚醒しようとしている。
この世界の主、創滅神は、娯楽を求めていた。
だが、その少女はどうだろうか。
神が娯楽で生み出した存在か。
はたまた、この変わり果てた世界の運命を変えるための存在か。
———————————————————————
この章も終わりということで、今回はこの世界の「魔法」についての話でした。
まとめると、魔法じゃなくて人間が雑魚ということです。
文化の発展とともに力は失われたわけです。
もっと簡単に言うと、いい感じにこの章を終わらせるためのお勉強回です。
今回、文字数が少ないのでショートストーリーで文字数稼ぎをしたいと思います。
ショートストーリー第1弾
「学生トーク(?)」
これは本編では語られなかった、空と恵理の女子トークの一部である。
「そういえば、ここ数年は日本のこと考えたこともなかった。」
「私は日本のことしか考えてなかった気がする。」
恵理は頬杖をつきながら、そんなことをこぼした。
「なにか日本に未練とかはないの?」
「未練……?……………あ、高校の制服、着てみたかった。」
「そうかー、高校の制服ね。確かに、私もアニメとか見てると、あぁいう制服着てみたいなーって思ったりする。」
「それは珍しいと思うけど……」
呆れたような目で見つめてくる恵理。でも、別に私は気にしない。
「高校選びの時、制服が可愛いなって思って、色々条件も良かったから選んだんだけど……もう着れない。」
「作ろっか?今その魔法も創ったし。」
「魔法を創るってなに!」
恵理が、手錠をはめられたまま体を前のめりにさせ、声を荒げた。
「ただの装備についてたスキルだよ。」
「それのせいで薄れてたけど、制服作るなんて無理でしょ?」
「それがいけるんだよね~。」
はいはい、制服思い浮かべてー、と窓をバンバンと叩いて催促する。
「お、思い浮かべろ?こっ、こんな感じ……?」
「そうそう。おー、可愛い。……え、え?スカートの丈短くない?」
「全部こんなものでしょ?」
「そうなの?あ、もっと集中集中!」
2人でわいわいと騒ぎつつ、新しい魔法、記憶念写で記憶を写真に写す。
「これ、今度作って送ってあげる。一応一言伝えはするけど、着る時は頑張って手錠外してもらって。」
「着るためのハードルが高いけど、私は本当に制服を着れるの?」
「多分?」とおどけながら、くすくすと笑う。
「なんで笑うの?」
「なんでだろう?」
こんな感じで、私達は話を続けた。
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