240 / 681
7章 魔法少女と過去の街
226話 魔法少女と勝利
しおりを挟む竜と戦い始め、数分経つ。若干押され気味なのは、魔法が使えないせいもが半分、天龍が普通に強いのが半分。
空力……結構扱いづらい。あの時は火事場の馬鹿力的なのがあってできたけど、今はうまく使えない。地龍さーん!ヘルプミー!
「ギャォォォォォォォォォ!」
「うおっ!」
腕を振り下ろされたかと思ったら、尻尾で薙ぎ払われ、木を折りながら吹き飛ばされた。
「ったぁ~っ!」
「キュキュッ!」
その拍子にコートからキューが出てきて、草に落っこちる。
背中、背中っ!背骨粉砕するって今の!
魔法少女服無かったら、天に召されてたね。
何ひとつ面白くない冗談で気を紛らわせつつ、途中で落ちたキューを探す。
……ちょっとまって。キューを使えばもしかして……よし。
「キュー!キュー!」
文字で見ると鳴き声にしか見えないキューの名前を呼ぶも、反応はない。
「キャオォォォォッ!」
「さすがに2度は当たらないよ。」
今度は腕、尻尾共に空中で体を捻って回避し、同時にほんの少しだけトールを混ぜて刀を握る。
「一閃。」
頭が地面方向に向いてる中、本気の斬撃を喰らわせた。
さすがに効果無かった泣くよ?いくらトールの方が加減されてても、傷くらいは……
「ギャォォォォォォ!ギャァァァァァァッ!」
その思考は、天竜の口から発せられる轟音によって掻き消され、咄嗟に耳を押さえる。よく見ると、鱗の表面が削れている。
「キュッ!」
その直後、私と天竜の間を白いふわふわことキューがジャンプする。空中で、自信満々にこっちを見ている。
え、え!?そんなキメ顔今は必要ない!
「キュー、こっち!」
私は轟音に顔を歪めながら、両手をキューの方に伸ばす。
届かない……ならっ!
そこで私も跳躍し、キューをお腹に抱き寄せ、肩から前転をして衝撃を殺す。
「大丈夫?ってか、危なすぎるから今後はやめて。ほんとに。」
「キュ、キュー……」
落ち込む素振りを見せる。
「キュルゥゥゥゥゥゥゥッ!」
その瞬間だった。一筋の閃光が走り、地面が穿たれる。
……は?
状況の異様さに驚愕し、同時に思考が止まる。
これは、突然の出来事に驚いたわけじゃない。
「さっきまで、私がいたところ……?」
そう。あの閃光が落ちたのはキューを助けるために飛び出した、あの場所だった。
「キュー!」
「もしかして、キューが助けてくれたの?助けられたの、まさかの私?」
嬉しそうにキュウキュウと鳴き、「もっと頼れ」と言ってるように見える。
そろそろ戦闘に戻ろう。もちろん、キューも一緒に。
キューを肩に固定し、天竜を睨む。
「知能は低い?何にせよ、一撃でどうにかしないと、またあぁなる可能性がある。」
大穴を一瞥し、苦い顔をした。
「行くよ、キュー。空力の方は頼んだからね?」
「キュウ!」
自信ありげに泣き声をあげ、「よし」と一言だけ呟いて自分を奮い立たたせる。
空力は魔法と大体一緒。過程が違うだけで、結果は一緒。……多分。
だから、魔法の時と同じだイメージが大切。
イメージイメージ。あ、狐人。
確か炎を使ってた。なら炎刀みたいな、炎を刀に付与したり、炎が伸びて刀の形になるとか。
「はぁぁぁぁっ!」
身体激化を一瞬脚に使い、思いっきり天竜に飛び込む。
「キュウゥゥゥゥゥッ!」
肩の上でキューが吠え、その瞬間に刀に炎が宿る。
空力、発動したね。
今の私は力も技術も全て神様に貰ったもの。なんだろう、私って……神様の脛をかじる虫?
でもまぁ、今は勝てればそれでいい。
天竜は同じように啼き、空を仰ぐ。すると、すぐさま雷が降る。
「斬れ、炎刀!」
必殺技のように叫び、歯を食いしばって脚に力を込める。雷に振れる直前に刀を頭上に振り、一瞬魔力が暴発する。
これ、結構キツイ……
でも、なんとか雷は消せた。
「次はこっちの番だよ、天竜!」
鋭い目で天竜を捉え、力の限り走る。
ステータスはあっても、魔法が使えなければ同格には勝てない。
魔法が使えない時の対処法、今のうちに学ぼう。
天竜は鱗に雷を纏わせ、矢のように射出したり、腕や尻尾を器用に動かして武器のように攻撃してくる。
私はそれを、刀で防ぎながら接近する。
「一撃で倒さないとダメ。でもそんな高火力な技持ってない……隙を作る?なんとか物理でできればいいけど……」
一抹の不安を抱え、額に汗が滲む。
「キュロォォッ!」
「はっ!」
刀を滑らせ、尻尾をいなす。その隙をついてステータス任せパンチを喰らわせる。
そして跳躍っと。
パンチで尻尾はあらぬ方向に飛んでいき、バランスが崩れた瞬間を私は見逃さない。
ステップを踏むようなリズムで攻撃を回避、防御を繰り返す。腕を薙いできても、それを足場にして跳ぶ。
「キャロォォォォォォォォォォォォォォッ!」
天龍の顔面に到達した頃に、天竜はそんな咆哮を上げる。
「まさか、ビーム!?ちょ、今避けれないよ!」
口を大っぴらに開けた天竜を見て、私はあたふたと焦り出す。
え、えぇ!どうすれば……
防ぎきる?さすがに無理。いなすなんて技術も無いし、どうすれば……
って、どうしてこんな場面でゆっくり時間が流れるの!
謎のゾーンに入り、脳内で文句を垂れる。いつものことだ。
「キュウッ!」
肩から、力強い声が聞こえてくる。
「キュー……?」
「キュキュッ!キュー!キューーーッ、キュッ!」
なんて言ってるかは分からないけど、とにかくやれと言ってるような気がする。
「何も分かんなかったけど、オッケー。魔法が無い私なんてただの変人なんだから、しっかりフォローしてね。」
一度しっかりと目を合わせ、信頼を確かめる。
今思い出したけど、確か私は雷に対する耐性を持ってる。だから、多少は無茶ができるってことだ。
冷静になると、色々思い出すものだね。
「斬れ!業火の炎刀。」
刀を鞘に戻し、体を丸くする。
「目の前の敵を薙ぎ払え!」
願掛けの必殺セリフを吐き、刀を鞘から抜く。すると炎は、数メートル程の長さまで伸びていた。
「キャロォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
天竜は口から光線を吐き出し、それが刀身に触れる。
「くっ……」
なかなかの圧がかかり、意識が投げ出されそうになりながらも唇を噛んで覚醒させる。
「はあぁぁぁぁぁっ!届けぇぇ!」
「キューーーッ!」
私とキューがそう声を張り上げると、炎の勢いはさらに増す。
ビームと炎刀の一騎打ち。
もちろん、負けるつもりはない!
徐々に光線が刀身に触れている部分から凹んでいき、最終的には全てがかき消される。
「今度は、私のターンだね。」
謎ゾーン、略して謎ーンの中、私はそう勝ち誇った笑みで言い放つ。
「覚悟してよ、天竜。」
切り返しの炎刀が、天竜の首に肉薄する。次のコマで、天竜の首は刎ねられた。首は空に舞い、地面に白い血が流れた。
これで討伐完了。あとは組合に任せるよ。
後処理とかめんどくさいことやりたくないし。
ストッ、と、事故ることなく綺麗に着地する。
「こういうところは主人公っぽいんだけどね。」
刀を鞘にしまいながら、そんな戯言を吐く。
誰かー、この私を主人公にしてくださーい。
「竜が死んだぞぉぉぉぉぉぉ!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」
思考を遮るように拍手喝采が起こり、辺り一面お祭りムードに包まれる。
そして、私が思ったことをただひとつ。
「え、見てたの?」
———————————————————————
最近気分が悪くて元から上手くない文章がさらに悪化した気がします。
どうか、温かい目でご覧ください。
こういう作品を書くのは、いつになっても小恥ずかしいですね。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる