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7章 魔法少女と過去の街

224話 魔法少女は討伐を始める

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 方向を間違えた件は記憶から消去し、私は改めて討伐ポイントへ向かった。

 討伐ポイントとは言っても、結構な広さがある。

「………ここの人って、こんな弱いの?」
うっかりそんな言葉が漏れ出ていた。

 血の匂いはあったけど、流石にここまでとは思わなかった。これは、私がなんとかしないと、とかいうレベルじゃない。守りきれない。

 目の前では、3対1で負けてるチームや、肉を食い荒らされてる人など、様々な地獄絵図が広がっていた。

「弱いんじゃない。魔物どもが化け物じみてるだけだ。」
「は、はぁ……」
ここの人達の弱さを痛感し、苦い返事と共に眉を顰めた。

 魔物の強さは変わってない。少し闘争心があるだけで、そこまで強くなってはない。

 魔力って、結構必要なもの?

 だったら魔法とかますます不憫じゃん。使いにくいって理由だけで最弱とか言われてさ。

「お前、どうやって魔物を倒したんだ?」
でかくで馬鹿そうなほうの男は、訝しげにそう聞く。

「え、魔法だけど。」
「「は?」」
2人の声が揃い、怪訝そうに見つめてくる。

「頭でも、狂ったか?魔法とは、邪なる力のことだぞ……?」
少し聡明そうなほうの男が、心配そうに眉を曲げる。

 え、何事?邪なる……?
 ………っ、あ。魔力は今の時代、人には備わってないんだった。今さっき考えたことじゃん。

「い、いやぁ、なんてぇ、ね。冗談冗談。」
分かりやすく汗が垂れるが、そんなことは気にしてられない。

「そ、そうだよな?」
「人間が魔法を……あり得ない。」
向こうも信じてないみたいで、なんとかなりそうで胸を撫で下ろす。

 これで目に見える魔法は使えなくなった……

 こんなの前代未聞だよ?魔法少女が魔法を使えないとか、それただの少女じゃん。

 使えるのは魔導法とか神速とか、目には見えない系統の魔法、スキル。
 身体激化は使いたくないから、出来る限り魔力付与でなんとかする。

 刀でも使おうか。

 そう思い至り、ステッキから刀を取り出す。それを、あたかもコートから出したように振る舞い、「ほ、ほんとはこれで、ね?」と刃をちらつかせる。

「確かに、体には見合った武器だ。」
「そんな薄いので斬れるのか?」
評価はぼちぼちだった。

 あとは……空力。流石に怪しまれるけど、いざとなったらそれしかない。

「それじゃ、行ってくる。助ける方を優先するから、あとはよろしくっ!」
魔力付与を四肢と胴体、刀それぞれに使い、組合連中が戦っている魔物に突進する。

 本音を言えば、ただこの気まずい空間から1秒でも早く逃げ出したかったからなんだけどね。

「技名とかあったらかっこいいかな?……って、そんな厨二思考する歳じゃないんだけどね。」
そんな小言を呟き、加速しながら1匹の魔物を斬り裂く。

 よっと、いっちょ上がりっ!

「核石とかは勝手にして!」
そうとだけ言い残し、次の魔物へ標的を移す。

 次は……って、なんかやばそうなのいる…… 

 横をチラ見すると、高さ2メートルちょいのカマキリのような生物が3匹、組合の人を襲っていた。

「なんでこうも襲われてるの、っ!」
腕の鎌が振り下ろされる直前で刀を滑り込ませ、なんとか防ぐ。

 セーフっ!なんとか防ぎきれた。それはともかく、大丈夫?攻撃当たってない?

 少し振り返ってみると、後ろを向いてダッシュで逃げてる男が3人いた。

「……助ける価値が、段々見当たらなくなってきたんだけど。」
鎌攻撃を抑えながらも、そんなセリフが口からこぼれ落ちる。

 人が死ぬのを黙って見てるのも嫌だけど、クズ達を守るのも嫌なんだけど。

 戦う理由が曖昧になるも、とりあえずこの状況くらいは打破しようと刀に力を込め、弾き返す。
 他の2匹の鎌もいなし、バックステップで距離を取る。

「ファイボル、って魔法は……っ!」
その一瞬の隙を突かれ、巨大な腕で吹き飛ばされる。

「このぐらい、なんとかなる!」
風魔法は見えないので、それっぽく抑えつつ、1回転で木の側面に着地。そしてカマキリに突っ込む。

 ただデカいだけで攻撃力はそこまでだ。これだったら、いくら好きを見せようと負けることはないね。勝ち確だ。

 片鎌を刀で弾き、その勢いを利用して後ろ回し蹴り。その間に攻撃しようとして近づいてきた2匹のカマキリの腕を身を捻って避け、相打ちにさせる。

 そうするとあら不思議。3匹の虫が地面に平伏している。

「やっぱり、魔法無いって不便だ、ねっと。」
地面にいるカマキリに1発ずつ刀を差し込み、トドメを刺す。

 結構呆気なかった。もう少し強い相手が……危ない危ない。ただの戦闘狂の少女に成り下がるところだった。

 お口にチャックをし、失言をしないようにする。

「他に魔物は?」
チャックを速攻で開け、大声で尋ねる。

 目に見える範囲で危ないのは今ので最後。出会っちゃったんだから、助けるしかないんだよ。この行動で、何か変わるかもしれない。
 旅は道連れ世は情けって、よく聞くでしょ。

「い、いや……大丈夫だと思う。それより、何もんだよ。見たことないぞ、お前みたいな組合員。」
近くにいた男がそう答える。質問付きなので、そこは「内緒。」と答えておく。

 こういうのは可愛いヒロインが、口に人差し指を添えてウインクをしながら、「ナイショ」っていうのがいいのであって、私が魔物の血に濡れながら低い声で言ったって何の萌えもない。
 ならなんで言ったっていう話だけど。

「私は別の場所行くから。保証はないけど助けに行くかもしれないから、危なくなったら呼んで。保証はないけど。」
言い切れなくてカッコ悪いけど、特にそんな要素は求めてない。

 カッコ悪くて結構。私には魔法という裏切らない存在がいるんだから。
 絶賛裏切られてるけど。

 ははっ、と、特に面白くはないけど小さく笑って、別の魔物を倒しに行く。

「道、間違ってないよね?」
小声で何度も確認する。

 結局、私は何をしても締まらない。

———————————————————————

 この世界線は戦争中。龍(竜)は魔物サイドついた。ということは、次回の話はそういうことです。
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