上 下
237 / 681
7章 魔法少女と過去の街

223話 魔法少女と討伐組合

しおりを挟む

 翌日。
 私は昨日の夜に東の方角に見つけた、謎の建物へ向かった。

「っつつぅ………直寝するんじゃなかった……」
私は腰をさすりながら、昨日の記憶を頼りに歩を進めていた。

 確かこの辺で変なのに襲われたんだよね。また襲われなければいいんだけど。主に、向こうの命が危ないからね。
 私、手加減とか苦手だからね。もし変なやつ来たら、容赦なく殴るよ。

 キューを片手にそう決意すると、なぜか目の前に砂が迫っていた。

「へぶっ……っ!」
勢いよく音を立て、鼻から思いっきりぶつかる。

 いったぁー!鼻、鼻!鼻はダメだって!

 あたふたと慌て、なんとか立ち上がって鼻を押さえる。

「ヒール…………ふぅ、なんとか治った。」
軽く涙目になって呟く。

 状況を確認しよう。うん、多分私は転んだ。それは分かるけど、どうして?

 うーむ、と頭を捻っていると、ふと地面に目が入った。そこにあったのは、見事に体がくの字に曲がった男がいた。

「あ、これ。昨日吹っ飛ばした男じゃん。」
自業自得すぎて、自分自身に呆れる。

 怒りの矛先が分からない……

 とりあえずキューを撫で、気を落ち着けつつ建物へと向かい直す。

「それにしても、廃れてるね……」

 逆にどうしたらあんな平和な街が作れるか、疑問すら湧き出でくるよ。

「もうちょっと先だったような……」
目を細めて少し先を見ると、それらしき建物が見える。円形で少し大きく、武装した人が入るのが見えた。

 ギルド発見?だとしたら嬉しい限りだけど、まぁまずは行ってみないと始まらないよね。

 そういう考えのもと、その建物に近づいてみる。

「おい、ここはお前のようなガキが近づくような場所じゃない。帰るんだな。」
「こんな子供相手に絡むな。羽虫程度、無視しておけ。」
なんかムカつくことを言う人達が、私の前に立ち塞がって言い放った。

 はぁ?何この人。

 というかさ、なんでこういうところでは毎回絡まれないといけないわけ?
 おかしくない?何この恒例行事。

 でも慣れないんだよね、これが。うざいものはうざい。

「私、こう見えても強いけど?」
「どうやって戦うんだよ、その細い体でよ!」
豪快に笑う男に腹パンKOしたいけど、グッと堪える。

 さすが大人な私。戦争中だからと言って器の小さい大人とは違うんだよ。

「ま、信じなくてもいいよ。私はただここを見に来ただけだから。」
「ははっ!意地張ってくたばるなよ。」

「おい、待て。こいつ、昨日の……」
「本当か?記憶の天才が言うなら本当なんだろうけどよ……」
2人がこそこそと話し出すので、私は待ちきれずに建物に入ろうとしたところ……止められはしなかった。

 そこは流れ的に止める感じだったことない?
 で、でも、変なことに巻き込まれずに済んでよかった……のかな。

「今日も討伐に行くぞ!化け物どもを排除しろ!」

「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
むさ苦しい空間に、鼻腔を突き刺すキツイ汗の匂いと雄叫びが充満する。

「うっ、何これ。」
鼻を摘み、キューを見る。さると、キューも嫌がってたので鼻?を押さえてあげる。

 何この数の人達。全員武装して、武器を構えてる。って言うことは冒険者?でもそれにしては品性のかけらもない。

「我々討伐組合の力量を、本隊に知らしめてやれぇぇ!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
全員の魂が共鳴するように叫び、武器を掲げる。

「よし!全員出発だ!俺に続けぇぇい!」
「「「「押ぉぉ忍!団長!」」」」
勢いよく扉が開かれ、ここにいた全員が駆けだす。当然そこにいた私も連れて行かれ、巻き込まれながら外に連れ出されてしまった。

 え、ちょっ!え?いや、やめ……
 ……もう、いいや。どうとでもなればいい。その時はその時。未来の私に任せよう。

 魔物討伐くらいなら、私も協力しよう。

 私が諦めて数分後、ようやく人波から離れられて、木の根元でひと休憩していた。

「血の匂い、咆哮、叫び声。人も相当数やられてるね。この人数はどう呼んだんだろう?毎回結構犠牲はあるはずだけど。」
「キュキュ~!」
そんな私の苦労もよそに、キューは木の上で走り回って遊んでいる。

 はぁー、私も討伐しますか。

 そう決意し、立ち上がった。

「おい女。どうやって生きて戻ってきた。」
突然そんな声が頭上から聞こえてくる。

「……今度は何?」
非常にめんどくさいという気持ちを顔に出し、呟くように尋ねる。

 これってさっき絡んできた人だよね。何回絡んで来るの。

「そんなこと言っても意味はない。順序を説明しろ。覚えてるか?昨日、お前は5匹の魔物に囲まれた。そこからどうやって抜け出したかを聞いてるんだ。」
もう1人男がやってきて、そんな説明をされる。

 えっと…………あ、逃げられたやつか。

「まって。そっちって、逃げた騎士もどき?」
「もどきってなんだよ。俺たちは討伐組合の一員だ。」

「そこじゃない。逃げたよね、助けに来たのに。礼のひとつもよこさずに、私に魔物押し付けて逃げたよね?」
捲し立てるような早口で問い詰めるも、知らぬ存ぜぬを突き通される。

 なんなのほんとに。謝罪もなければ礼もない。挙句に絡んできて上から目線で人を弱い者扱い。
 そっちの方が弱いじゃん!

「待て。だから礼として情報を渡してやろうと思ってる。なんでも言え。」
上から目線が腹立たしいけど、つついても何も出そうにないのでやめておく。

「じゃあ、その討伐組合ってのを詳しく教えて。」
無表情のまま頷き、「説明しよう」の一言で始められた。

「討伐組合とは、本隊である討伐隊のおこぼれだ。実力がない戦える者たちを集め、魔物を数で討伐する。加入者は100人以上団長が指揮をし、マスターと呼ばれる。その上にグランドマスターという両隊の頂点がいるらしいが、なんとも言えない。」
急なマシンガントークに驚きつつ、なんとか頭に入れ込んで眉を曲げて整理する。

 やっぱり、まだ疑問点はある。
 でも整理しきれないから待って…………

 うん、多分大丈夫。

「このくらいだ。」
「結構やられてるみたいだけど、補充とかってどうしてるの?」

「知るか。裏で動いてるんだろ。」
「何を言ってるかさっぱりだったが、こいつが凄いことは分かったな?」

「ワー、スゴイスゴイ。」
適当に返事をし、その場から立ち去ろうとキューを回収して反対に歩き出す。

 情報ももらったことだし、さっさと魔物を殲滅して帰りますか、っと。

 グッと1つ伸びをして、深呼吸で気持ちを整える。

「おい、どこ行くんだ?」

「決まってるでしょ?討伐に行くんだよ。」

 英雄は遅れてやってくるものでしょ。

「そっち、逆だぞ。」
男は自分の後ろを指差して、そう指摘する。

「………………………」
「「……………………」」

 ここで、私含め3人が思ったことを代弁しよう。

 ……締まらねぇ。

———————————————————————

 討伐組合という謎組織に連れられ、討伐をし始めるソラ。行く先々で絡まれるソラは、戦闘中にも絡まれるのか?

 次回、魔法少女は討伐を始める

 デ○エルスタンバイ!(怒られろ)
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記

ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。 これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。 1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ! いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります! 【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。

巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
時司巡(ときつかさめぐり)は制服にほれ込んで宮之森高校を受験して合格するが、その年度から制服が改定されてしまう。 すっかり入学する意欲を失った巡は、定年退職後の再任用も終わった元魔法少女の祖母に相談。 「それなら、古い制服だったころの宮の森に通ってみればぁ?」「え、そんなことできるの!?」 お祖母ちゃんは言う「わたしの通っていた学校だし、魔法少女でもあったし、なんとかなるよ」 「だいじょうぶ?」 「任しとき……あ、ちょっと古い時代になってしまった」 「ええ!?」  巡は、なんと50年以上も昔の宮之森高校に通うことになった!

ピンクの髪のオバサン異世界に行く

拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。 このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

ダンジョン・ホテルへようこそ! ダンジョンマスターとリゾート経営に乗り出します!

彩世幻夜
ファンタジー
異世界のダンジョンに転移してしまった、ホテル清掃員として働く24歳、♀。 ダンジョンマスターの食事係兼ダンジョンの改革責任者として奮闘します!

ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~

アオイソラ
ファンタジー
 おっす! 俺エルドフィン!(声は野沢雅子じゃねぇぞ!)  ぼっち現代が虚無虚無ぷりんでサヨナラしたらファンタジーぽい世界の18歳に転生してた!  転生後の世界って飯は不味いわ、すぐ死ぬわ、娯楽も少ないわ、恋愛要素ないわ、風呂は入れないわで、全っ然つまんないし、別にチートキャラでもなく雑魚だし、いっそまた次に逝ってもいいかな、なんて思ってたんだけど、そんなモブ人生がどうも様子がおかしくなってきたゾっ!  プラチナブロンドの睫毛をキラキラさせて、可愛い瞳のワルキューレたんが俺に迫るのだ。 「やらぬのか? 契約は成された。我のすべては汝の思うがままだ」  えぇーっいいの?! やりますっ! やらせてくださいっ! やらいでかっ! 「人間と魔物の戦いが始まったくらいの昔の話、大戦争にうちの祖先が関わってたって言い伝えがある。魔剣も、その時の祖先が持ってたもので、神から貰った神器だって話なんだ」  顔に恐怖を貼り付けたイケメンも俺に迫るのだ。 「助けてくれ…」   おうっ! 任しとけっ相棒!! だがあえて言おうっBLはねぇっっ!  一度死んだくらいで人はそんなに変わりませんっ…デフォは愚痴愚痴、不平不満ディスり節を炸裂し続ける、成長曲線晩成型?のひねくれぼっちが異世界転生したらの物語。  イケメンホイホイ、ヒロイン体質?の主人公がスーパーハニーなワルキューレ達と大活躍?!  北欧神話と古代ノルウェーをモチーフにした、第四の壁ぶっ壊しまくりの壮大な冒険譚! ※ カクヨム、なろうにも掲載しています。カクヨムにはおまけストーリー・作成資料なども紹介してます☺️❤️   「カクヨム」「アオイソラ」でどぞ☆彡

俺だけ展開できる聖域《ワークショップ》~ガチャで手に入れたスキルで美少女達を救う配信がバズってしまい、追放した奴らへざまあして人生大逆転~

椿紅颯
ファンタジー
鍛誠 一心(たんせい いっしん)は、生ける伝説に憧憬の念を抱く駆け出しの鍛冶師である。 探索者となり、同時期に新米探索者になったメンバーとパーティを組んで2カ月が経過したそんなある日、追放宣言を言い放たれてしまった。 このことからショックを受けてしまうも、生活するために受付嬢の幼馴染に相談すると「自らの価値を高めるためにはスキルガチャを回してみるのはどうか」、という提案を受け、更にはそのスキルが希少性のあるものであれば"配信者"として活動するのもいいのではと助言をされた。 自身の戦闘力が低いことからパーティを追放されてしまったことから、一か八かで全て実行に移す。 ガチャを回した結果、【聖域】という性能はそこそこであったが見た目は派手な方のスキルを手に入れる。 しかし、スキルの使い方は自分で模索するしかなかった。 その後、試行錯誤している時にダンジョンで少女達を助けることになるのだが……その少女達は、まさかの配信者であり芸能人であることを後々から知ることに。 まだまだ驚愕的な事実があり、なんとその少女達は自身の配信チャンネルで配信をしていた! そして、その美少女達とパーティを組むことにも! パーティを追放され、戦闘力もほとんどない鍛冶師がひょんなことから有名になり、間接的に元パーティメンバーをざまあしつつ躍進を繰り広げていく! 泥臭く努力もしつつ、実はチート級なスキルを是非ご覧ください!

処理中です...