222 / 681
7章 魔法少女と過去の街
208話 魔法少女は恵理の元へ
しおりを挟む大掃除が終わり、その翌日。
私は郊外に設置された、街が管理している刑務所へと向かった。
刑務所とは、牢屋とかが並べられたああいうのではなく、もっとこう、ドラマでカツ丼食べてそうなああいう部屋を、面会用の部屋にしたみたいな感じ。
それがたくさんある。
出入口なし。あるのは面会時に壊されないよう、耐魔ガラスが設置されているだけ。
何故そんなところに行ってるのかと言うと、それは恵理さんに会うためっ!キランッ。
……まぁはい。恵理さんのところに行くのは、情報を貰うためだ。
ギルド?そんなものあとあと。
って言うのは嘘で、12時に設定してもらった。
ちなみに今は10時越え。
この刑務所は、ガチガチエリートしか就職できない結構すごい所で、関係者以外は有力な貴族や領主の同伴がなければ入れないらしい。
ははっ。すごいところに来ちゃったね。
「あっ、フィリオ。」
郊外なはずなのにそこだけオーラの違う馬車を発見し、フィリオと気づく。
こういうところに領主がいるとか、なんか意外というか合わないと言うか、ね。
「随分と遅かったな、ソラ。」
「ちょっと予定が重なってね。」
フッと一息吐き、フィリオの隣まで歩く。
「そろそろ行くぞ。あの暗殺者も、ソラ以外と話をする気は無いそうだ。」
「そうだろうね。あ、盗聴とかはなしだからね。」
そう警告を1つ入れて、一緒に強固な入口に入っていく。
「そういえばずっと気になってたんだけど。」
「なんだ?」
「口調、領主のそれとは思えないけど。そこのところはどうなの?」
思ってることを言ってみる。
「……はぁ。この口調を他貴族に使っていると思っているのか?仕事は仕事だ。」
そう言い、また口を閉じる。
それ、私のは仕事じゃないってこと?
そう思ったけど、口を噤んだ。
人生で入ることのない場所に入れる私って、実はすごい?
謙遜を無しにすると、実際すごいよね。
刑務所の形は、X型になっている。真ん中は丸型で、少し広めに作られている。
で、残りのX部分が部屋になっている。
今は、その丸のところにいる。
そこには、なんか校長の銅像的なのが中央にあって、少し驚く。
「フィリオ、なにこれ。」
銅像を指差し、首を傾げてみる。
「あぁ。初代パズール領主だ。名はパズール・ブリスレイ。俺の先祖でもあるな。」
「ほへー。」
「伝承では、とても優しく、人情にも厚い善人だったそうだ。」
名を継ぐものとして誇らしい、そう自信がありそうに言い放った。
家名に誇りを持つのもいいけど、早く案内してほしい。
「あぁ、案内だったな。こっちだ。」
そう言われ、右斜め奥に向かって歩き始めた。少しの間、無機質な石造りの道を音を鳴らしながら歩く。
どこまで歩くの、これ。流石に長くない?
そんな風に思っていると、1番奥の部屋にたどり着く。
ようやく着いた?
「ここだ。面会時間は………ソラなら無制限でいいな。」
「それでいいの……」
警備のザルさに嘆息を吐きながら、ガッチガチの扉のドアノブに、手をかける。
5日ぶりのはずなのに、めっちゃ久しぶりな感じがするのはなんでだろうね。
フィリオとの約束で、ここから先の話は盗聴されてない。バリバリ日本語OKということだ。
まぁ自動翻訳だから無理だけど。
こっちは日本語喋れても、向こうは喋れないんだから。
ギシギシと音の鳴る扉の先には、腕のみを拘束された女性がいた。
「久しぶり。」
「……久しぶり。」
俯きながら、恵理さんはそう返す。
「まぁそう身構えないで。ちょっと雑談でもしようか?」
そういいながら、ガラス越しに対面する。
ちょっと窓に触れてみると、確かに硬い。衝撃、魔力、熱、いろんなのに強そう。
「なに?」
ジッと見つめていると、そう言われてしまった。
「なんでもないなんでもない。」
そう返しておく。
少し警戒心が強そうになってる以外、特に変化はないかな。
なに?拷問でもされた?陵辱?
……それとも?
「ちなみに盗聴とかは一切ないからね。領主との約束だから。」
一応、保険程度に何気なく伝えておく。
「ほんと?ならよかった。」
すると、急に警戒モードが切り替えられ、ぐったりと椅子にもたれかかった。
え?何この急な変わりよう。え?
この人、女優向いてるんじゃない?
「空以外の相手には、私は《女王》だから、ボロを出すにはいかないの。」
疲れを滲ませたため息を吐き、そのまま、それで、何の話?と聞いてきた。
「まぁまぁ、まずは雑談しようよ。日本学生の女子トーク。」
「私、成人だけど?」
「そういえば、いつからこの世界に?」
「5年前くらい……」
「中学生っ!?」
思わず大声が出る。
暗殺稼業立ち上げる中学生がどこにいるの!ここにいるよ!なんでだよ!
また脳内が荒れ始める。
「で、空は?」
「数ヶ月前。高2だよ。」
「高校ね。青春は結局訪れなかった。いいなぁ、高校。」
空なんてどこにもないけど、遠い空を見上げるように呟いた。
「そんないいものじゃないよ。学校は片道1時間半、60分くらいの長い授業を5回受けて、また1時間半で帰る。」
「そう聞くとめんどくさそうね。」
夢を壊され、少し目線を落とす。
「どうだった?」
「なにが?」
「家族だよ。」
「好きだった。お父さんも、お母さんも、妹も。みんなで笑って、友達にも恵まれた。」
「良かったね。」
家族のことを思い出し、微笑む恵理さんに、そう一言だけ送る。
「じゃあ、空はどうなの?」
「ちょっと、ね?まぁ始めての女性転生者だし、教えちゃおっかな。」
そう言って、チャールさんにしか教えなかった私の過去を打ち明ける。
今回は、濁しも無し。もちろん盛りも一切なし。ドロドロを完全再現してあげる。
おしどり夫婦のことを一通り話し、私の心境や状態を話した。
父は不倫、母は堕落、離婚後虐待を受け、そのとき実は、母が酒に溺れ、自殺。学校にも迷惑をかけ、その学校ではいじめられ、親クラスメイト含め、今まで褒められた瑠璃色の髪は悪魔と呼ばれる。
壮絶な一生を語った。
「……聞くんじゃなかった。演技がリアルすぎる……女優目指したら?」
「それ、さっき私が恵理さんに思ったことだけど。」
「ねぇ空。さんとかいらないから。」
項垂れる恵理さんが、キッパリと言った。そこから沈黙が続き、少し経って恵理が口を開く。
「その髪、地毛なんだ。」
「まぁね。」
そんな話を30分くらい話していると、そろそろフィリオにも悪いと思ってきたので、本題に入ることにする。
「で、本題のなんだけど、いい?」
「もちろん。」
いたずらっ子のような笑みを貼り、話し合いが始まった。
———————————————————————
ソラさんの過去エピソードを知る人が増えました。あらゆる不幸のハッピーセットですね。(矛盾)
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる