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7章 魔法少女と過去の街

207話 魔法少女は家に戻る

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「それじゃ、報告はよろしくねー。」
私は馬車を降りた後、そう言って家に戻って……というわけではなく、レイティーさんに引っ張られてギルドでカード確認を行われてしまった。すると、ギルド嬢は「今はまだ確認が取れないので、また明日お越しください」と言われてしまった。

 ま、流石にしょうがないよね。こんな大掛かりな依頼、パッと終了させるわけにはいかないんだから。

 ……行きたくない。またなんか言われそう。

 と、いうことで、色々あったけど自宅へ帰ることができた。やったね。

 そうして、私はギルド裏の小高いお壁とやってくる。
 すると、そこは私の家とは到底思えない、すごい綺麗なお花がたくさん咲いていた。

 見た感じ、魔力がこもってる。

「主、綺麗。」
「そう?お肌の手入れも欠かしてないからね。」
「……花のこと。」
「うん、知ってた。」
そんな軽口を混ぜ合いながら、花の道を進む。

 すると、花の影から音と人影が見える。

「侵入者っ!」
ツララは反射半分で、その侵入者(?)に飛びついた。

「ちょちょちょっ!待って!それ知り合いー!」
思いっきり攻撃耐性になってるツララを叫んで止め、神速で影の前に立つ。

 危なぁ……このままだと一生頭が上がらない、というかほんとに許してくれないんじゃない?

「ソラお姉ちゃん……?帰っていたんですか?」
ロアが、ジョウロを片手で持ちながら首を傾げていた。

「ツララ、この人はロア。私の恩人?みたいな。だから攻撃しなくていいからね。」
後半5文字に力を入れて言い、ツララはしょんぼりした顔でこっちを見た。

「あの、ソラお姉ちゃん?その人って、誰ですか?」
ロアは私の元へテクテクと歩き始め、チラッとツララの方向を見る。

 それにしても、私がいない間にこの花の世話、全部やってくれてたの?

「ロア、ありがと。」
「……はい?」
意味が分からなさそうに、小さく呟いていた。

「あ、紹介がまだだね。この子はツララ。まぁ簡単に言っちゃえば奴隷だけど、奴隷扱いはやめてもらうよ。」
「奴隷……?」
驚いたように私の方を見るロアを見て、ツララは弁解でもしようとしたのか、息を吸い込んだ。

「でも、ソラお姉ちゃんは優しい人だから、大丈夫ですよね。」
爽やかな笑顔と共に、そう答えた。

 こういうのを「尊い」と表現するのかな。なんか後ろから虹色の光が見えるよ。
 私もとうとう天使からお迎えが来ちゃったのか……17歳、短い人生だった……

「ソラお姉ちゃん?」
「あっ、幻覚か。」
自分の頬を3回たたき、気を入れ直す。

「それにしても、綺麗に育ったものだね。なんかコツとかある?」
話題でも変えようと、家に向かう花道を通りながら、周りを見てそう聞く。

「別に、特にありません。強いて言うなら、毎日花に愛情を込めることですね。」
恥ずかしそうに頬を掻く。

 テレスさーん、ロアの可愛いが止まりません。どうせればいいですか?

 脳内で叫びつつ、口に出ないよう必死に抑える。

「主っ!あたしもやってみたい!」
「はいはい、分かったから暴れない。」
15歳には見えないはしゃぎようで、ぴょんぴょん跳ねている。

 獣人って、他の種族よりも年齢の区別が変わってくるのかな?
 成人がもっと高いとか、寿命が長くて、成長するのが遅いとか。

「でも、やる時はちゃんとロアか私に声かけてね。慣れないことは、まず先輩に教わらないと。私の場合は一緒にやりたいだけだけどね。つまり、教えてください、ロア先輩!」
ノリで敬礼のポーズをとり、慌てふためくロア。

「ロア先輩!」
ツララも、私の真似をし始める。ロアは泣きそうな顔でおろおろとしていた。

 そろそろやめとくか。ロアがもうやばそうだし。
 流石に泣きそうな子供をほっといて、こんな遊びするほど私も子供じゃない。

「ごめんってば、ほらハンカチ。」
ちゃんと清潔なハンカチで涙を拭っていると、その時には家の前にいた。

 気になったんだけど、なんで泣いたんだろうね。いや、大体理由は分かるけど共感はできない的な?

 私はバリバリ領主を呼び捨てにしてるし、娘なんか連れ回してるよ。
 申し訳なさが天元突破でもしたのかな。

「ありがとう、ソラお姉ちゃん。」
そう返してくれたので、今は思考を放棄する。

 家を開けると、思いのほか家は綺麗になっていて、細かいところに埃は落ちてるものの、綺麗さを保ってる。

「まさか、これもロアが?」
「はい。でも、サキも一緒です。」
笑顔で応えてくれて、今度は私が泣きそうになる。

 たまにはこういう癒しも必要だよね。

 私は「ありがとう」と一言告げ、ロアに賃金を握らせた。もちろん2人分。

「そんなっ、勝手にやったことなのにお金なんて……」
「いいの。私の気持ち。」

「でも……」
「主がいいって言ってる。」
「……分かった。ありがとうございます。」
ツララの後押しによって、お金を受け取る。

 あー、久しぶりの我が家。実家のような安心感だ。
 実家はもうこの世にないけど。というか、あっても戻りたくない。
 あのおしどり夫婦の家なんて、死んでも行きたくないね。

 皮肉たっぷりにそう悪態を吐く。

 知ってる?おしどりって、毎年パートナーは変わるし、子育てはそのパートナーに任せて、別のパートナーを探しに行くんだよ。

 まさにおしどり夫婦。体現してるじゃん。

 いや、ダメだダメ。こんな純粋な2人の前で、こんな思考は悪だ。

「それじゃ、今日は掃除でもしますか。」

「はい!」
「主!あたしも手伝う!」
そう言って、それぞれやる気を表明する。

「終わったら、みんなでテレスさんのところでご飯でも行こうか。」
みんな元気に返事を返し、大掃除が始まった。

———————————————————————

 なんで最後にテレスさんのご飯を入れたか、それは、これを執筆時にお腹がとてつもなく空いていて死にそうだったからです。
 ご飯食べたいです。
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