219 / 681
7章 魔法少女と過去の街
205話 魔法少女は安否確認をする
しおりを挟むレイティーさんが手を振っていたところへ向かった私は、森の近く入り口辺りを探す。
「あれ?おっかしいな。こっち側だったはずなのに……」
「主、こっち。」
私が迷っていると、ツララがコートを引っ張って指を差す。
おっ、流石ツララ。私のツララはやっぱり世界1だよ。なんのかは知らないけど。
「分かるの?」
「うん。匂いがする。」
犬の嗅覚は人間の3000倍とか聞くけど、本当にそうなんだ、と感じた。
「ソラ、ツララちゃん……?」
「レイティーさん!?」
いつもとは雰囲気が違って、髪から少し色が抜けていた。
凄い体調悪そう……っていうか、そういう段階じゃないよね!?
なにこれ?衰弱死寸前の人って言われても疑えないレベルだよ?
焦りすぎて、脳内が荒れる。
私は今魔力無いし……えっと、どうすれば?ん?えーっと、うん。
「大丈夫よ。少し、魔力が無くなっただけだから。」
「……魔力無くなるだけでそんな風になるの?」
「あなた魔法使いでしょ……?経験あるでしょ?」
「あるけど、耐えられるレベルの脱力感と倦怠感だけだよ?今も現在進行形で魔力不足だし。」
千切れかけのフードを揺らしながら、ほらほらと体を晒す。
「ふっ……馬鹿じゃないの?そんなことしても、分からないわよ…………、」
まるでコンセントを抜かれたパソコンのように、レイティーさんの意識がプツッと切れる。安らかな顔で眠る姿から、安堵の気持ちが窺える。
このままだとただの綺麗なお姉さんなのにね。いや、性格が悪いとかじゃないよ?口調が姐さんチックというかなんと言うか。
まぁいいや。
「ねぇツララ。レイティーさんお願いできる?宿屋まで運ぶの、頼んでいい?」
隣をピッタリついてくるツララに、仕事を与えてみる。
「……やる!」
前のめりになって、鼻息をふんすっと出しながら言う。やる気があっていいことだ。
もうツララは、我がマジックガールコンポレーションの従順なる社員だね。
直訳でダサいって?黙っときなさい。
「ありがと。また後で合流しよう。」
頭にトントンと手を置いて、私はウェント達を探すことにした。
で、あの人達はほんとどこに行ってんの?
返事の1つでも返してくれないと分からないよー!
「ちょっとー、探すの手間だから自分で出てきてよー。私も疲れてるんだから、早くー。」
適当に3人を探しつつ、ため息を吐いて今度は休憩できるところを探した。
私の働きを考えたら……大丈夫だよね?
「おい……声聞いたから出てきてやったのに、なんで休んでるんだよ……」
「あ、ウェント。いたんだ。」
「いたんだ、じゃない。いたんだ、じゃ。」
呆れたような顔で私を見てくるので、私も同じような目で見る。
「見た感じ1人で歩けそうだね。宿に戻っていいよ。」
「心配ぐらいしてくれよ……」
「じゃ、あとの2人も探してくるから。ウェントはなんとかして。」
ウェントを通り過ぎ、手を後ろに振る。
感謝はしてるけど、こんなあちこちで倒れられてとね。こっちの身にもなってほしいよ。
え?こんな危険な仕事させられる向こうの身にもなれって?
私はめんどくさいほう選んであげたんだから、そこは感謝してほしいよ。
「危ない、ところだった。」
「もう十分危ない状況ですよ!」
私が歩いてると、そんな声が聞こえてきた。
ライとトイン、なんか話してるけど何話してるんだろう。
チラッと横目で見てみると、全身傷だらけのトインが、ライに薬を塗られている場面だった。
……いや、ね?私だって感謝がないわけではないですし、むしろどんどん感謝してますし?
こんなね?ことになって申し訳ないとも思ってますとも。
頭で言い訳をして、正当性を保つ。
「お、おーい?大丈夫じゃなさそうだけど大丈夫?」
日本語、じゃなくて異世界語がおかしくなったけど、今は気にしてられない。
「生きていたんですか?良かったです。」
こっちの声には気にも止めず、治療を施し続ける。なんかできる男っぽくてかっこいい。
「面目ない。間違いを起こし、少し手間取った。」
「いや、死者が出てないだけマシだよ。」
はい水、と水の入ったコップを差し出す。
「悪い。」
受け取ると、トインはごくごくと喉を鳴らして水を一気に呷る。
おぉ、豪快な飲みっぷり。ただの水だけど。
そう、我がマジックガールコンポ………
「魔法、いただけますか?」
ライの声で、決め台詞が途中で切られた。
「………ごめん、魔力無いから無理。」
手を両手に上げ、満身創痍であることを伝える。
といっても、大した外傷はないけど。でもまぁ、痛いものは痛い。
「レイティーさんとウェントは先に宿に戻ってるから、終わり次第2人も宿に戻ってね。私は今、眠気というアッパーと、倦怠感というボディブローと闘ってるから、帰らせてもらうよ。」
そうして私は、多少ふらつきながら目的地である宿屋へ向かう。
やばい、今まで戦ってきたどの敵よりも強いかもしれない……
だるさと眠さを兼ね備えた、見えざる敵。
実態がないから余計めんどくさい。レッ○ブルが翼でも授けてくれたらいいのに。
眠くて正常に働いていない頭で、おかしい思考送り返しながら宿屋を目指した。
「あー、ねむい……」
今日の最後の一言だった。
———————————————————————
ステータス
名前 ツララ
年齢 15歳
種族 氷狼族
レベル 28
攻撃620 防御390 素早さ500
魔法力320 魔力350
装備 魔力増強の指輪 付与の髪留め
魔法 氷結 氷華 雪礫 氷爪 氷瀑 氷槍
魔力識別眼
スキル スピード補正 物理上昇
魔法少女の庇護 超人体力 忍耐 獣圧 従順
調教度 レベル7
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる