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6章 魔法少女と奴隷商の国

199話 魔法少女と《特攻蜂》

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 どこかの世紀末にいそうな人の真似をしてから約3分、もう立っている人はほとんどいない。

 最初の方は調子良かったけど、私の妨害が気になるのか、集中力が続かないみたい。
 1回遊びで「ほいっ」とか言って手伸ばしたら、すっごい顔で後ろに飛んで弓に刺された。

 面白いね。

「で、これで終わり?」

「《女王》。ここは私が……」
「いえ、あなたは《特攻蜂》とやりなさい。連携が得意なあなたなら、できるでしょう。」
「はっ!仰せのままに。」
2人でそんな言葉を交わし、私の方を睨むように見てくる。

 なんでだろう。私が悪役のように見えてきてる。というか、実際やってることはほとんど犯罪なのよ。
 大義名分背負った人殺しだよ、私。

 何回も人殺して、もう慣れちゃった。……わけはないけど、抵抗は薄れてる。
 人として、大切なものを無くしてる気がする。悲しい。あの頃だったら、そう思ってたのかな?

 哀愁漂う雰囲気を出す。

「ひとり芝居は楽しいですか?」
「ちょっと黙って。悲しくなるから。」

「なら、やらなければいいだはないですか。……仕方ありません、冥土の土産として見せさせてあげます。」

「なにそれ。私が死ぬ前提?」
ちょっとイラッときたけど、なんとか耐える。眉は少し曲がったけど。

「えぇ。《特攻蜂》、これが私の最大戦力です。」
楽しそうな笑みを浮かべた《女王》は、まるで買ったと言わんばかりにそう言った。

 いや、たしかに……空気がピリついてる。

 そんな感覚に陥ったときには、目の前に5人の男性と3人の女性が立っていた。

 1人は……少年?が、2メートル近くの刀を持ってる。どうなってるの、それ。

 ムキムキな男はトゲトゲのボクシングのグローブみたいなのを嵌めて、不遜な笑みを張り付けてる。

 他にも全身黒装備の、見るからに悪役な人だったり、少しぽっちゃりな青年が棍棒をもったりして、女性の方は双子でマシンガンチックな銃器をもっていたり、花魁みたいな人がキセルを蒸して笑ってる。

 なんだこの人達。
 変な人だね。

「《特攻蜂》とは、幹部が集まった最高のチーム。あなた如きに、倒せるでしょうか?」
隣にいた3刀流の人も降りてきて、自身の長い髪を切り落とした。

「全力を出すため、このようなものは要らない。」
「髪は女の命だよー。」
そんな言葉を無視し、大きく踏み込んで一太刀を喰らわせてきた。この攻撃を始めとして、他の人達を行動を開始した。

 もちろん、攻めのバックステップで回避しつつ、ステッキで牽制もした。

「避けつつ攻撃とは、やるな!」
3本の刀を、まるでおもちゃのようにぐるぐると振り回す。

 うおっと。この人だけでもだいぶキツイ気がする。
 殺すだけなら簡単だけど、無力化とか言われたら無理よ。
 でも幹部は捕まえなきゃいけないんだよね。めんどくさい。

「っておい!横槍やめて!」
ムキムキがグローブを突きつけてくる。

 8対1だけど、今までで1番キツイでしょ。これ。

「わたしたちも忘れちゃ「ダメですよ」」
双子の娘に挟まれる。目の前に刀娘、真横にグローブ男、真後ろに双子ちゃんの構図になる。

 ……これ、どう切り抜ければいいの?教えて欲しいんだけど。
 ヘルプミー。

 こんなところで使いたくはなかったけど、流石にこの数に挟まれるのは聞いてない。

 よし、使おう。———運命。

 運命には、もうひとつの使い道がある。運命を変える能力と、運命を見る能力。
 攻撃の運命を見て、回避する。

「運命よ、眼に宿れ。見えざる光で導かん。」
頭にポッと浮かんでセリフを呟き、その場は時が止まったように静まり返る。

「何を言って……」
その直後、3本の刀は地面に固定されていた。

 このスキル、ほんと便利。この使い方発見できた私は神だよ。
 鑑定眼だけじゃ、分からないこともあるものだね。

「抜け、ない?」
両腕で無理矢理引き抜こうとする刀娘。手に汗が滲んでる。

 抜けるわけないじゃん。それ、地龍魔法なんだから。もう固定されちゃってるよ。土ごと振り回せば?

「おい、動きが変わりやがったぞ!」
グローブ男は、相変わらずスピード任せに拳を放ってくる。私はその攻撃を、汗ひとつ垂らさず回避する。

 私は、このに見えたものをただ信じるだけ。

「隙だらけですよー!」
その言われる頃には、刀身が頭上に現れていて……私は少し驚きながら、刀を掴んで鉄棒の要領で半回転して飛び上がる。

 はいよ、置き土産の岩槍極大。

 ステッキを少年に向け、縦横2メートル程の岩の塊を射出した。

 子供を殺すのは忍びないけど、仕方ない。うん、そうだ。仕方ないんだ。

「これで7人。どっからでもかかってきて。」
挑発をすると、警戒するように皆が視線を送ってくる。

 まんまと私の策に引っ掛かってくれちゃってまー、みんな詐欺に弱いタイプでしょー?あ、飴ちゃんいる?

 大阪のおばちゃんみたいな感じを出す。

 運命を見る力。まぁ運命眼とでも言いましょうかね。制限時間と使用回数があるし、見えてないと発動しない。
 結構制約が多い。

 しかも、ある程度の実力がないと見えても避けられないっていう。
 私はステータスのおかげで臨機応変に対応できるけどね。

「あたしにゃ誤魔化しにしか見えないがなぁ?」
女性にしては少し太い声が響き、そっちの方向を見る。そこにはキセルを持った花魁チックな女性がいる。

 ちょっと待って?私の脳内イメージと合わないんだけど。見た目とセリフが一致してないんだけど。

 ありんすとかありんせんとか、もっとそういう言葉じゃないの?花魁って。

「ねぇ《女王》。こいつ、花魁してないよ。」

「気安くお名前を呼ぶな!」
「そっちには言ってないから!」

「こんな安いコントを見せないでくださいませんか?」
無視を決め込んできた。少し悲しくなる。

「どれ、あたしが一肌脱ごうかねぇっ!」
着物のような服がするりと落ちたと思ったら、運動するのに最低限の布しか付いてない服になっていた。

「一肌脱ぐって、本当に脱いでどうするの!」
「なに言ってんだ?」
大口叩いただけあって、もうすぐ隣にやってきていた。

 普通に速いし……なんとかならないでもないけどさ。

「死にな!」
「嫌だよ。」
キセルがこの人の武器なのか、ニヤリとした嫌な笑みをして、喉元目がけて突き刺そうとしてくる。

 喉元じゃなくて、狙うなら頸動脈とかその辺りを狙うのがセオリーじゃないの?

 そんな疑問を胸に、左足を軸に思いっきり回転して避ける。そのまま右足を振り抜き、顔面めがけて勢いを増させる。

「ぐはっ………ぁっ!」
顔蹴りからの地面にキス。普通に痛そうで顔を顰めるけど、そのまま万属剣を肩に刺す。

 これを後6人かぁ。骨が折れる。

「で、どうする?全員でくるなら、別にそれでもいいけど。」
その場は、時が止まったかのように何も起きず、ただ時間が過ぎていった。

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 今回なぜかいつもより長いですね。
 それでも入り切りませんでしたが。では、次回も謹んで執筆いたしますので、何卒よろしくお願いします。
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