上 下
209 / 681
6章 魔法少女と奴隷商の国

198話 魔法少女と《軍団蜂》

しおりを挟む

 地龍の魔法やスキルをフル発動させ、何とか一撃目の奇襲を防ぎきった。

「何この数の暴力……」
冷や汗と脂汗の混ざったようなものが、だらりと垂れる。

 地龍スキルの強固な鱗を纏った魔力壁を付けた、土槍。太めにして、5本下から生やす。
 そのせいで、女王の間がぐっちゃぐちゃになってる。いきなり穴だらけ。
 可哀想にね。
 
 《女王》は苦い表情をしていた。

「岩槍!」
土槍を変化させ、30センチ代の尖った岩を土槍から放ちまくる。キュインッ、キュインッ、と、とてつもない速度だ。

 さっすが地龍。やばすぎでしょ。
 私のステータスと合わさって、凄いことになってて笑えない。

 私は苦笑いしつつ、そう思う。

 あ、笑ってた。てへっ。

「近づけません!」
「死傷者多数!」

「放っておけ!今は目の前のことだ!」
黒マスクをした指令官のようなくノ一が、まるでボールペンのちっこいバネみたいに、予測不能な跳躍をしながらそう言い放つ。

 うわぁ、仲間見捨てるなんてひどーい。それをやったのは私だけど。

 ま、流石のプロも私の奇天烈攻撃には意表を突かれるってことですわ。
 それでも10人くらいしか倒れてないし……まるで弾幕ゲーム風に避けてく。

 「攻撃方法変えなきゃな」と、小声で呟く。

 立て篭もり作戦は続行し、岩槍を止める。

 今だ、と言わんばかりに50人くらいの暗殺者が私の頭上目がけて飛んでくる。
 残りは、隙間を狙ってる。

 まずは多勢を葬ろう。

 そうして構えたのは相棒のミョルスカイ。

「軌道修正、完了。出力調整、100%。……魔弾装填、発射準備オーケー。」
ブツブツと、詠唱するように言葉を発する。一文字一文字に力を込め、言葉を紡ぐ。

「トール、射出。発射まで、3、2、1……」
バチバチと雷が荒れ狂う。定期的に点検してるはずのミョルスカイが、今にも壊れそうに見えた。

「発射!」
刹那。ドゴォォーーーンッ!!と、空気を切り裂くように轟音がなる。その次に聞こえてくるのは、バチバチバチッ!という電撃音。そして、とてつもないGと風。

 いや、Gっていうのは冷蔵庫裏とかにいる、1匹見たら~的な謳い文句の虫のことじゃないよ?
 重力だから。そこんとこ、よろしく。

 周りをよく見ると、地龍の魔力壁をも突破して土槍はボッコボコに崩れていた。

「————————————!!」
誰かが何か叫んでいたのを見たけど、なんと言ってるか全く分からない。

 音と光のせいで何が起きてるか全く分からない……
 これが過ぎるまで五感がほとんど機能しない。

「なんなんですか?あれは!チートじゃないですか。」
ミョルスカイをステッキに収納していると、《女王》がそんな恨み言のような物を吐いていた。

 あなたに言われたくありませんよーだ。チートがチートって言うんじゃありませーん。

「ふぅ。こんなもんかな。……魔力消費が凄い。3分の1以上持ってかれた……」
魔力水を片手に、息を吐いた。

「48名ピッタリ死亡。各自、持ち場で備えろ!」
指令官みたいな人が状況判断後、指示をする。その姿は、焦りが滲んでるように見えた。

 私もちょっとやりすぎたかな?
 一掃しすぎた感は否めない。

 ま、まぁ?これは仕方ないことですし?
 向こうから仕掛けてきたんだから、仕方ないでしょ。

 ルルー○ュだって言ってたよね。
 撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ。ってね。

 ってことは、私はレールガンを撃たれる覚悟があるってことなの……か?
 いや、撃たれたくない。

「下がれ!盾は崩れた。あれは何発も撃てるような物じゃない!」
体制を立て直させる指令官。

 流石プロの技は違う。的確だね。
 ま、あと何発か撃てるけど。

 そんな余裕ぶっこいてたら、残りの暗殺者達がぐるぐると私の周りを走り回った。

 撹乱?いや……

 違う、そう思った時には、大量の毒刃が投擲されていた。

「はっ?こんなの避けられるわけ………」
急いで跳躍する……と見せかけて、私はぐるっと方向転換してステッキを地面に向けた。

 各種地龍魔法×一級建築魔法

 一見なんの関連性もないように見えるけど、まぁ見てなって。

 地面の一部が隆起する。それがウネウネと動き出し、隙のない家と化す。

 土槍じゃ隙間が多いからね。家を作ってみた。
 一級建築魔法を使えば、構想があれば一瞬で組み立てしてくれる。

 便利なことだ。

「なっ?本当に人間か?」
指令官はそんな酷いことを言ってきた。

「人間だよ!この姿見てよ。人間以外の何者でもないよ!」

「どうでもいい!」

 うわひどっ。この人、私嫌いだ。

 もういいや。いちいち魔法使うのもめんどくさいし。
 暗黒弓ー、万属剣ー!

 煙突を出現させ、そこから雨のように大量の魔法を降らせた。
 魔力付与してあるから、1個ずつなら動かせるよ。

「私の魔力総量を舐めないでもらいたいっ!」
そんな謎の自慢と共に、大量の矢と剣が放たれていた。

 もうこの家もいっか。
 そのまま外に出たら危険だし、頭上に私よりひと回り大きい土板作るか。よし、そうしよう。

「上ばっか見てたら、足元すくわれるよ。」
にこやかな笑みでそう言ってやり、すかさず足をかけて躓かせる。

 1名様、ごあんなーい。

「ウィンド!」
エアリスリップのスリップ部分をレジストし、風部分だけを発射させる。

 こう言うのにも使える魔法分解は神と言っても過言じゃないね。

 おっと。また1人やられた。
 このままネチネチ戦法続けよう。

 片腕が常に塞がってるのは痛いけど。

 あれだけ大口叩いたけど、ここまで魔法を使うと魔力もやばい。
 魔力水をちまちま飲んで回復させてるけど、1本目はもう終わりそう。

 数の暴力には、数で対処しないのがきついね。

「おらおら~!汚物は消毒だー!」
小物感溢れるセリフを叫びながら、ノリノリで魔法を放ち続ける。

 案外楽しいね、これ。

———————————————————————

 《軍団蜂》は流石に簡単にやられます。
 だってポニテとかボブの人レベルの人が集まってるだけですから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こんなとき何て言う?

遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

異世界でイケメンを引き上げた!〜突然現れた扉の先には異世界(船)が! 船には私一人だけ、そして海のど真ん中! 果たして生き延びられるのか!

楠ノ木雫
恋愛
 突然異世界の船を手に入れてしまった平凡な会社員奈央。私に残されているのは自分の家とこの規格外な船のみ。  ガス水道電気完備、大きな大浴場に色々と便利な魔道具、甲板にあったよく分からない畑、そして何より優秀過ぎる船のスキル!  これなら何とかなるんじゃないか、と思っていた矢先に吊り上げてしまった……私の好みドンピシャなイケメン!!  何とも恐ろしい異世界ライフ(船)が今始まる!

【猫画像あり】島猫たちのエピソード

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~ シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。 2024年4月15日午前4時。 1匹の老猫が、その命を終えました。 5匹の仔猫が、新たに生を受けました。 同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。 島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート! ***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!

泥酔魔王の過失転生~酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない!~

近度 有無
ファンタジー
魔界を統べる魔王とその配下たちは新たな幹部の誕生に宴を開いていた。 それはただの祝いの場で、よくあるような光景。 しかし誰も知らない──魔王にとって唯一の弱点が酒であるということを。 酔いつぶれた魔王は柱を敵と見間違え、攻撃。効くはずもなく、嘔吐を敵の精神攻撃と勘違い。 そのまま逃げるように転生魔法を行使してしまう。 そして、次に目覚めた時には、 「あれ? なんか幼児の身体になってない?」 あの最強と謳われた魔王が酔って間違って転生? それも人間に? そんなことがバレたら恥ずかしくて死ぬどころじゃない……! 魔王は身元がバレないようにごく普通の人間として生きていくことを誓う。 しかし、勇者ですら敵わない魔王が普通の、それも人間の生活を真似できるわけもなく…… これは自分が元魔王だと、誰にもバレずに生きていきたい魔王が無自覚に無双してしまうような物語。

処理中です...