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6章 魔法少女と奴隷商の国
195話 魔法少女は諦める
しおりを挟むレモネードもどきを片手に、私はエレベーターを見上げる。
「うぅ~む。どうしたものかね。」
ズズズという効果音と共に、そう一言呟く。
これだから嫌なんだよ。こんなエレベーターを作る変人の考えることなんて分からない。
なに?私の方が変人だって?
いい?私が変人なんじゃなくて、神様の趣味がおかしいの。アーユーオーケー?
イエスかはい以外選択肢はないよ。
「似たような話、何回するつもりなんだろう。」
自分でも呆れてくる。
でもなぁ。もうどうしよもないんだよね。
結構ヤバめな状況なのに、呑気にストローに口をつけていると、何かツーーッという甲高い機械音のようなものが響いた。
「えっ、はっ?何?」
慌てて立ち上がり、その拍子でレモネードもどきはこぼれ、グラスは割れた。焦りで少し目を泳がせて辺りを見回す。
赤い紋章が光ってる?
何かが反応してるとか……まさか、ボス?
『あー、あー、テステス。聴こえていますが、侵入者さん?外でもここでも、好き放題やってくださっているそうで。』
次いで、清楚系お嬢様と言った感じの声が聞こえてくる。
はっ?……テステス?やっぱり……いや、そこはどうでもいい。今重要なのは、敵に私のことがバレてるってことだ。
『私は《女王》。知っての通り、《黒蜂》のボスです。以後、お見知り置きを。』
「え?《女王》?《黒蜂》?」
聞きなれない単語に、首を傾げる。
『説明する義理はないですよ。それも、敵に。あなたには、苦しみに溺れて死んでもらいます。絶対に。』
殺意の篭った言葉を言い放たれ、私の耳は痺れる。
何、これ?私がビビって??そんな、はずはない……と思う。
でも、ここからでも実力差を感じる。
「いやいやいや、私は私。神様パワーを使えばなんとかなる。」
そう自らを鼓舞し、エレベーターを睨む。
万能感知で見えないのがなんだ。もうバレてる。コソコソ行く必要はない。
本気の本気、マジのマジだ。
私が負ける義理は……ないといえば嘘になるけど、負けるとは思ってない。
これは調子に乗ってるんじゃなくて、確信。
勝ってみせる、フラグブレイカーとは私のことだ。
自称、というのをボソッと付け足す。
「やっぱり、ゴリ押しが1番だね。」
右手にステッキを握り直し、大きく深呼吸を挟む。魔力が集まり、槍をつくようにしてステッキを突き出す。
「おりゃぁぁぁぁぁっ!!」
思いっきり叫ぶ。その声と一緒に響くのは、ドゴォォーーーッ!という破壊音。
「舐めてもらったら困るよっ!」
大きく穴の空いたエレベーターを通り、更に魔法でドカドカ壊していく。
器物損壊?不法侵入?この世界にそんな法は無い!訳ではないけど関係ない!
フィリオの力でなんとかしてもらおう。
またフィリオの不安の種が増えたのである。
「方向は……分からない。落下死は避けたいから斜めに壊していこうかな。」
そろそろステッキのみはキツイので、物質変化で柔らかくしてから刀に持ち替えて斬っていく。
ひぃー、疲れる。この作業後どのくらいだろう。
目を細めて下を見る。何でできてるかさっぱり分からない。
「まぁいい。進めるんだから進もう。強行突破は最強、はっきり分かる。」
何せ今回は準備万端。レールガン2発分という大量の魔力水をライに調合してもらった。
材料はアボルデルの村の最奥にある地下洞窟。最奥と言っても徒歩で行けるレベル。朝から夕方くらいかかるかも……だけど、まぁ行ける。魔物もいないしね。
そこの奥にあった魔力溜まりの原因の魔力水。核石が膨張して岩から取れることで魔物に変化する。その時魔力の保有量が多いと、ヌチャヌチャ生物が生まれる。
うっ、想像しただけで気持ち悪い。
あのなんとも言えない吐き気を覚える姿を思い出し、口を抑える。
ごほん。話を戻そう。
その魔力水をライに渡し、効果を増やしてもらった。
だから、レールガンは何発か撃てる。
まぁ、使い所は考えないといけないけどね。
「光槍光槍光槍っ!」
適当に流星光槍をぶっ放し、どんどん床を削っていく。
これ、地龍でもギリギリくらいの硬度あるけど、《女王》って人はどれだけ強いの。怖くなってきた……いや、だから考えないようにしないと。
うん、いける。
「混合弾っ!」
最後の1発を放ち終え、轟音と共に床が大きく揺れる。
うおっ、出口……かな?危なっ…!
床にミシミシと亀裂が入り、視界がぐらっと揺れる。それに遅れて、体が落下していることに気づいた。
「ちょ、まっ、落ちるなぁぁー!」
そんな、無駄だと分かりきってることを叫びながら落下する。
床の崩れ落ちる音が鳴る。
「痛た…‥くはない。ステータスはやっぱりありがたい……」
落下した腰をさすりながら立ち上がる。
完全に失敗した。変な風に降りなきゃよかった。
もっとこう、普通に?
なに?アバウトすぎるって?知らないよ。
そんなことを考えながら前を見ると、そこにはたくさんの暗殺者が、ナイフやらなんらやらを構えて立っていた。
陽動作戦、失敗みたいだ。
「もういい!どうとでもなれ!」
そう叫びながら、ステッキを振るった。
————————————
「ふぅ。一体なんなのでしょうね、あの人物は。」
侵入者に一言浴びせたのち、女王の間でため息を吐く女性がいた。
《女王》だ。
「軽々倒す辺り、なかなかの実力者でしょうが……この街では見かけませんし。」
顎に指を添えて考えている。
この少女のことをよく知らない《女王》は、怪奇の目で少女を見ている。
一貫しない行動、よく分からない言動、一挙手一投足に不信感を抱く。
「私が対応する他、ありませんか。」
首から下がった翡翠色のペンダントを握りしめ、隣の部下に指示を出す。
「あの人物に突破手段はないはずです。バレているのだから、無理矢理にでも侵入すると考えられる。連携を取りつつ、降りてきたところで仕留めなさい!」
「了解しました。」
部下の1人が頷き、14番と27番をもう1度配置する。
今度こそ、確実に仕留められるという確信を持ちながら。
———————————————————————
なんか途中グダグダな感じになったような気もするようなしないような感じですが、次回から戦い漬けです。
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