204 / 681
6章 魔法少女と奴隷商の国
193話 魔法少女は侵入する
しおりを挟む「これ、どうしよう。」
目の前に転がった、4人の死体(多分……?)をステッキでツンツンしながらそう漏らす。
死体ツンツンなんて、死者を冒涜してるんじゃないかって言われるかもだけど、暗殺者だからセーフセーフ。
セーフじゃない?セーフだよ。いいね?
画面の前のみんなに、ミョルスカイを向ける。
「はぁ。ネタは置いてきたはずなのにね。」
自分の脳内に嫌気がさし、ステッキを腰に挿す。
ここからは全く分からない、未開の大地。迷宮みたいなもの。
それが、後から来るはずのツララのためにも、印をつけとかなきゃいけない。
物質変化っと。赤チョークからのバッテンマーク。
「ここにつけても意味なくない?」
どうでもいいことに気がついてしまったので、忘却の彼方へ送ってやる。
やって悪いことなんて、世の中あんまりない。
後悔先に立たず。やっておかないと、後から後悔しても遅いしね。
謎の理論を唱え、暗殺者の拠点という名の『迷宮』に侵入していく。
「まぁいきなり入るのもあれですし、準備運動でも………すいません、行きます。」
どこからか圧のようなものが見えた気がして、身震いをする。
まさか、顔パスないと通れないとか無いよね……警備はザルだけど、ボスの所とかは厳しい……
うーん、その辺も後々考えていかないとなぁ。
前世の知識を振り絞り、うんうんと唸りながら歩いていく。
「何者だ、貴様ァ!?見張りはどうした!」
「あちゃー。バレちゃったか。」
うんうん唸ってたせい?まぁどっちみち気絶させてさよならだけど。
「何者だと聞いている!」
「うるさいなー。それを聞いて答える人間がいると思ってるの?無駄だと思わない?あっ、下っ端だからわかんないかー。」
適当に煽って、隙をついて倒す作戦に移行。ニマニマと笑みを浮かべて、煽り散らす。
こんな所で、レイティーさん直伝煽り術を使うとは思いもしなかったよ。
役に立つんだね、ウェントをからかう以外にも。
「……ッ!?何…、黙れ!」
「図星?ねぇ、もしかして図星?」
「違う!」
「へぇ~、違うんだ。じゃあ、なんでこんな所で警備してるのかな~?雑用だよねぇ?あっ、もしかして、怒ってる?怒っちゃってる?」
ニマニマ顔は継続、身振り手振りも加えて、突く勢いで指を差す。
沸点が低いなぁー。あ、やば。脳内まで煽りモードになってた。
影響つよ……気をつけないと、余計めんどくさくなりそう。
「死ね!」
「ボキャ貧とはこのことだね。」
スルッと攻撃を回避し、無心でステッキを後頭部に向けて振り下ろす。
ナイスシュート!
見事に後頭部にヒットし、ホームラン!無事気絶に成功させました!
全然無心じゃなかった。
「これ、脊椎とか折っちゃって無いよね?」
一瞬不安になり、脈に指を当ててみる。
あ、よかった。生きてる生きてる。
「ちょっと静かにしておかないと、こんな感じで襲って来るかもしれないしね。」
チョークで跡を付けながら慎重に進んでいく。
それにしても……道が分かんない。これ、迷うんじゃないの?
万能感知が使えないのが痛い。
どうしようかと、絶賛迷子になりながら考える。それは遅かったかもしれない。
今のところ、分かれ道が4個ぐらいあった気がする。しかも、ボスとかどこにいるか分からない。
侵入に気づかれてない……と信じたいけど、確定したわけでも無いから、不安が残る。
「あ、そうだ。魔力を循環させよう。」
妙案が浮かぶ。場所の都合上、最低限の声しか出してない。
エアリスリップを、魔法分解で水の部分だけ分解して、魔力を風の流れにそって全方向に流す。
そうすれば、私の魔力が循環して万能感知が使えるようになる。
そもそも、万能感知ができない理由は完治する魔力がないからだ。
ほとんどの物は、魔力が宿ってる。
でも、出入り口でシャットアウトされてる。
「あ、だからレイタースタートの威力が、中からだと低かったのか。」
あの時の謎が解けて、少しスッキリした。
やったね、また1つ賢くなった。
「エアリスリップ。」
小声で呟く。
最近、案外詠唱破棄が高性能なことに気がついたんだよね。
ほら。戦闘中に詠唱したたらその瞬間ドカンだし、こんな中で長々詠唱したたらバレちゃう。
そもそも、詠唱が長いっていうのも魔法が弱いとされる一因だし…‥その節は、大変申し訳ありませんでした。
かつて、微妙なスキルだと思った自分を恥じたい。
魔法分解は、自分に使うにも相手に使うにも便利なのは、今も昔も変わらないことだ。
なんの話だっけ。
あ、そうそう。魔力を循環させるって話か。
「もうそろそろいいかな?」
色々考えてるうちに、少し時間が経っていたので万能感知で確認してみる。
見づらいけど…‥成功!
うっすらとした地図が完成し、ヤッホイと喜ぶ。
「やったね私。やればできる!」
万能感知に視線を傾けけながら、出来るだけ抑えめな声で喜ぶ。
人…‥明らかに少ない。陽動効果が出たか、それとも……考えないようにしよう。
成功して、人が少ない。そう考えよう。
不安な気持ちを、グッと押し固める。
「ちょっと情報欲しいな~。」
少しだけ大きな声で呟いてみる。後ろにいる暗殺者を、油断させるために。
まぁ喋ったことは事実だけど。
気配察知と万能感知の同時使い。地味に大変だけど、そこんところは頑張る。
気配察知にて、ナイフが肉薄するのを感じる。
「見え見えだよ。」
ステッキをくるっと取り出し、トールを出して受け止める。
避けて何かに当たって、警報でも鳴られたら嫌だからね。
え?そんなもの異世界にないって?可能性はあるよ。そもそも、ここのボスの正体、地味にだけど分かった気がする。
「《女王》に手を出す気か?やめておけ。お前は、お世辞にも強いとは見えない。侵入できたのは、事件の混乱に生じてだろう。そもそも、女王の間に行けるのは、この赤の紋章を道の奥の魔導具に翳さなければならない。」
「すごーい。ペラペラと情報喋ってくれるー。」
ここまでバカだと、私までバカになってくる。
え?なんだって?《女王》?赤の紋章?
吐かせる必要すらない。
こいつ、絶対新入りでしょ。
「ありがとね。勝手に情報吐いてくれて。手間が省けたよ。」
「…‥なんだ?」
そう疑問の声が上がった時、神速にて蹴り飛ばした。
相変わらず、「カハッ」という乾いた嗚咽を出す。みんな、どうしてそうも……って、それは私もか。
「はっはっはっは」と1人で笑いながら、隅っこに縛っとく。
動かれたら困るしね。
———————————————————————
側から見たら、ただの不審者なソラさんです。
勝手に侵入してきて、人をバンバン倒して。暗殺者じゃなければ即逮捕ですね。
まだ犯人が暗殺者たちとは限りませんし。(9割黒)
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記
ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。
これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。
1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
時司巡(ときつかさめぐり)は制服にほれ込んで宮之森高校を受験して合格するが、その年度から制服が改定されてしまう。
すっかり入学する意欲を失った巡は、定年退職後の再任用も終わった元魔法少女の祖母に相談。
「それなら、古い制服だったころの宮の森に通ってみればぁ?」「え、そんなことできるの!?」
お祖母ちゃんは言う「わたしの通っていた学校だし、魔法少女でもあったし、なんとかなるよ」
「だいじょうぶ?」
「任しとき……あ、ちょっと古い時代になってしまった」
「ええ!?」
巡は、なんと50年以上も昔の宮之森高校に通うことになった!
ピンクの髪のオバサン異世界に行く
拓海のり
ファンタジー
私こと小柳江麻は美容院で間違えて染まったピンクの髪のまま死んで異世界に行ってしまった。異世界ではオバサンは要らないようで放流される。だが何と神様のロンダリングにより美少女に変身してしまったのだ。
このお話は若返って美少女になったオバサンが沢山のイケメンに囲まれる逆ハーレム物語……、でもなくて、冒険したり、学校で悪役令嬢を相手にお約束のヒロインになったりな、お話です。多分ハッピーエンドになる筈。すみません、十万字位になりそうなので長編にしました。カテゴリ変更しました。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる
ファンタスティック小説家
ファンタジー
モンスター使役学を100年単位で進めたとされる偉大な怪物学者の孫アルバート・アダンは″天才″と呼ばれていた。将来を有望な魔術師として見込まれ、大貴族で幼馴染の可憐なる令嬢を許嫁としていた。
しかし、おおくの魔術師に期待されていたアルバートは【観察記録】という、「動物の生態を詳しく観察する」だけの極めて用途の少ない″外れスキル″を先代から受け継いでしまう。それにより周囲の評価は一変した。
「もうアダン家から実績は見込めない」
「二代続いて無能が生まれた」
「劣等な血に価値はない」
アルバートは幼馴染との婚約も無かったことにされ、さらに神秘研究における最高権威:魔術協会からも追放されてしまう。こうして魔術家アダンは、力をうしない没落と破滅の運命をたどることになった。
──だがこの時、誰も気がついていなかった。アルバートの【観察記録】は故人の残した最強スキルだということを。【観察記録】の秘められた可能性に気がついたアルバートは、最強の怪物学者としてすさまじい早さで魔術世界を成り上がっていくことになる。
ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~
アオイソラ
ファンタジー
おっす! 俺エルドフィン!(声は野沢雅子じゃねぇぞ!)
ぼっち現代が虚無虚無ぷりんでサヨナラしたらファンタジーぽい世界の18歳に転生してた!
転生後の世界って飯は不味いわ、すぐ死ぬわ、娯楽も少ないわ、恋愛要素ないわ、風呂は入れないわで、全っ然つまんないし、別にチートキャラでもなく雑魚だし、いっそまた次に逝ってもいいかな、なんて思ってたんだけど、そんなモブ人生がどうも様子がおかしくなってきたゾっ!
プラチナブロンドの睫毛をキラキラさせて、可愛い瞳のワルキューレたんが俺に迫るのだ。
「やらぬのか? 契約は成された。我のすべては汝の思うがままだ」
えぇーっいいの?! やりますっ! やらせてくださいっ! やらいでかっ!
「人間と魔物の戦いが始まったくらいの昔の話、大戦争にうちの祖先が関わってたって言い伝えがある。魔剣も、その時の祖先が持ってたもので、神から貰った神器だって話なんだ」
顔に恐怖を貼り付けたイケメンも俺に迫るのだ。
「助けてくれ…」
おうっ! 任しとけっ相棒!! だがあえて言おうっBLはねぇっっ!
一度死んだくらいで人はそんなに変わりませんっ…デフォは愚痴愚痴、不平不満ディスり節を炸裂し続ける、成長曲線晩成型?のひねくれぼっちが異世界転生したらの物語。
イケメンホイホイ、ヒロイン体質?の主人公がスーパーハニーなワルキューレ達と大活躍?!
北欧神話と古代ノルウェーをモチーフにした、第四の壁ぶっ壊しまくりの壮大な冒険譚!
※ カクヨム、なろうにも掲載しています。カクヨムにはおまけストーリー・作成資料なども紹介してます☺️❤️
「カクヨム」「アオイソラ」でどぞ☆彡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる