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6章 魔法少女と奴隷商の国

185話 魔法少女は調教を施す

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「もしもーし、ツララー?」
目の前(結構遠い)のツララに、優しい声音で問いかけるように言う。

「……………」
プイッ、とそっぽを向いてしまう。

 えぇ……会話すらなしですか。あ、そもそもまだ名乗ってなかった。
 そういうこと……かな?そうと信じたい。

「私の名前はソラ。一応、ツララの主人?なのかな?これからよろしく。」
「…………」
無視して聞いてくれない。

 いや、聞いてはいるんだろうけど、不機嫌そうな目で睨んでる。

「別に、すぐに私に慣れろとは言わない。それだけ酷い目にあって、嫌なことを見てきたんだから、しょうがないよ。」
チラッと目が動いたのを、私は見逃さない!

「だから少しの間だけ、私と一緒にいてくれない?それで、私が信用に足る人物かどうか確認していい。もう1回言うよ。ツララ、よろしく。」

「……よろ、しく……」
「うん、よろしくね。」
ようやく口を開いてくれたことに、歓喜の声のひとつでも上げたいのを必死に堪え、心の中でガッツポーズをする。

 よっし、第1関門の手前突破!あ、そうだ。確か特殊能力か何かで、ツララもステータスを使えるようになったらしいんだ。

 善は急げと言うし、早速言ってみる。

「ねぇ、視界の端に何かマーク見える?」

「……うん。」

「オッケー。それを押してみて。私の奴隷になったことで出るはずなんだけど……出た?ステータス。」
「…………!」
画面が開けたのか、ビクッと肩を震わせた。

 反応が新鮮でかわいい。さらにケモ耳ときた。完璧だ。

「書いてある通りだと思うけど……気になったら聞いて……って、聞いてない。」
画面を食い入るように見るツララ。

 ちなみに奴隷系統のスキルが私も増えてた。

 ステータス画面共有
自身の奴隷とステータス画面を共有可能。

 奴隷能力補正
自身の奴隷の能力値が上昇しやすくなる。奴隷個人の望みにもよる。

 奴隷成長共有
奴隷が成長する度、その成長値分のステータスが自身にも入る。

 ちなみに、地龍さんのでレベルが上がったのにスキルは手に入ってない。
 理由は、足し算的にしか加算されてないからだと思う。
 詳しいことは知らない。

 一応だけど、ステータス画面共有でもしてみよう。

「これ、私のステータス。」
使った途端、画面が立体で出てくる。それに自分自身で驚きながら、画面を裏返す。

 我ながら、頭おかしいステータスしてる……
 色々上がってるけど、説明はまた今度にしよう。

「…………」
突然、むすっとし表情になるツララ。

「ちょ、痛い痛い、攻撃しないで。」
「むっ……効いてない。」
不機嫌そうに睨み、引っかきまくってくる。

 いや、普通に痛いよ。心が。
 だって、何もしてないのに攻撃してくるんだよ?

 体の方は自慢のステータスの高さでどうとでもなる……というかなってる。

「氷爪っ!」
「いきなり魔法使われた!?」
氷の爪が飛んできて、避けたら避けたで宿屋が壊れるので体で防ぐしかない。

 ボフッと、コートが可愛らしい音を立てる。

 服がちょっと凍りついた。
 普通の冒険者、それか騎士以上に強いと思う。

 人種がまず違うから、魔法も使えるみたい。

「効かない……」
「ステータスに差があり過ぎるからね。頑張ってあげてこう。」
わしゃわしゃと頭を撫でると、嫌そうな顔する。逃げ出せないのが分かってるのか、素直に撫でられるツララ。

 耳とか尻尾を触るのは、また今度にしよう。確実に嫌われる気がするから。

 一通り撫で終わり、明日の言い訳を考える。

「ステータス上げたい。」
ツララがそっぽを向いてそう漏らす。

「ごめん。また明日でいい?」
「………」
無言を肯定と見做す。

 明日は、5人で集まって話し合い。ツララを連れて行ったらどうなる?
 もちろん、レイティーさん始め、ウェントもなんか言ってくると思う。

 ライは「可愛いですね」とか言いそうだけど、私にはそんなの分からない。

 何も思いつかない。ま、休日を満喫しようかな。

「あ、ツララ。やっぱり今日行く?レベル上げ。」
「……行く。」
そう言ってくれたので、私はツララを抱えて外に出た。

「離せっ、やめろっ!」
ジタバタするも、私の能力を前にして勝てるわけがない。

 あんまり動かないのが得策だよ。何せ、今から神速を使うんだし。
 魔力も十分、レベル上げはツララがするし使ってもいいでしょ。

「舌噛むから黙っててね。」
足に魔力を込めると、光のような速度で進んでいく。

 南商から街の外へ。神速を使えば数10秒でなんとかなる。

「よし、もういいよ。」
ツララ地面に立たせると、呆然としたように外を見てた。

 結構ごっそりいった……
 便利だけど、使い所とその時間も考えないとね。

 1人反省会をしていると、子供のようにキャッキャとはしゃぐツララがいた。

「久しぶりの外!」

 ずっと奴隷として売られて、自由なんてなかったはずだ。
 でも、まだ子供なんだから遊びたかったはずだ。

 今後は私がしっかり面倒見ないとね。

 親心が芽生えた瞬間だった。

「この辺、そんなに危険な魔物はいないと思うけど、ヤバかったら言って。助けるから。」
「うん。」
久しぶりの自由を噛み締めるかのように力強く歩き、私がいることを忘れてるみたいだった。

 戦闘役として使う(そんな風に使うつもりはない)にも、まだステータスが心もとない。そういう意味も込めて、今のうちに強くやってもらおう。
 子供の時の方が、物覚えはいいはず。

「色々試してみて。気になることはとにかくやって、何かして欲しかったら言っていいからね。」

 私はそれまで、徹底的に傍観者になるよ。

「…‥分かった。」
女の子にしては格好いい、鋭い声を鳴らして四足歩行で飛び出した。

 嗅覚のおかげなのかな?ほんとにあっちに魔物いるんだけど。

 我が子(奴隷)の才能に一驚しながら、成長を願う。

———————————————————————

 ステータス

 名前 ツララ
 
 年齢 15歳

 種族 雪狼族

 レベル 10

 攻撃250   防御180 素早さ230

 魔法力110 魔力160

 装備 魔力増強の指輪 付与の髪留め

 魔法 氷結 氷華 雪礫 氷爪

 スキル スピード補正 物理上昇
魔法少女の庇護

 調教度 レベル2

 ツララのレベル上げを始めたソラ。どれだけレベルが上がるのでしょうか?
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