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6章 魔法少女と奴隷商の国
179話 魔法少女は大暴れ
しおりを挟む「どうだ、街の様子は。」
筋肉の分厚い、深紅を基調としたジャケットを着た男がいた。体躯が良く、2メートルはあるのではなかろうか。
「へっへっへっ。今日も荒れてやすぜ、旦那。」
「東商の具合はどうだ。」
ドスの効いた低い声で、手下らしき男に聞く。
「警戒は怠らない方がいいでしょう。へへっ、でも旦那には関係ないでしょうねぇ。」
「その慢心が隙となる。」
「注意しときます。」
手下は下がり、ボスらしき男はタバコのような物を口元に運ぶ。
「東商は危険すぎる。特に———」
その寸前、タバコのような物をを吸う。
突然立ち上がり、住処に使っている建物を見上げる。
ここは、誰も通りかからないような裏道。
そして、赤狼烈火の拠点でもある。
彼らは知らない。この赤狼烈火が、これから崩壊するということを。
そして、それが彼にとっては僥倖でもあった。
————————————
モヒカンモブ野郎が言っていた方向の裏道に入り、赤狼烈火とかいう厨二グループを探していた。
「誰だ……………グフェッ!」
通りすがりのヤンキーもどきをグーパンで黙らせ、そそくさとその場を後にする。
さっきから柄の悪い人多くない?さすが裏道、そして赤狼の牙の拠点のあるところ。
「侵入者だぁぁ!!捕らえろぉぉぉ!」
「ボスに報告しろぉぉ!」
何人もの男が私の前を行ったり来たりし、私を止めようとしている。
なんか厄介になってきたね。ちょっと1発ドカーンとしてみようかな。
ここでやるわけにはいかないけど。
「賊は1人、しかも、女だぁ!」
「殺してでも捕らえるんだぁぁぁ!」
あーあー、うるさい。いちいち叫ばないと生きてけないの?
魔物といい、この人達といい、騒がしいことこの上ない。
「ちょっと気絶しててもらえます?」
ステッキに魔力を纏わせると、バチバチと音がなる。
トール!
心の中で叫ぶと、周囲に雷が漏れ出る。それは一瞬で辺りに広がると、バタバタと人が倒れていく。
「やりすぎた?」
明らかにちょっとではない状況に、多少焦りを覚える。
ほんとに気絶してるだけだよね?そうなんだよね?
一抹の不安は拭えないけど、生きてることを信じて先に進む。
赤狼烈火までは、そう遠くない!
「よーし、蹂躙タイムの始まりだー。」
おー、とステッキを空に上げ、地面を蹴った。バッタバッタと人が倒れ、人がゴミのようだ。
今の私なら、擬似バ○スも使えるんじゃないかな?
ここまで好戦的な性格ではないけど、少し気分が乗ってきた。
最高にハイってやつだ。
「おい、やんちゃしてる子供っていうのは、お前のことか?」
突然、赤いジャケットを羽織る男にそう聞かれる。多分こいつがボスだ。
「そうだったら、どうする?」
「軽くお灸を据えてやるだけだ。」
「なら、死なないようにしないとね。」
「そうしたらいい。」
「あ、何か勘違いしてない?死なないように気をつけるのは、そっちの方だよ。」
そう言った瞬間、激しい音が鳴る。
止められたっ!?
ステッキと拳が鬩ぎ合い、なんとか勢いに任せて空を飛ぶ。
空中歩行で空を蹴り、縦横無尽に動き回る。
ただの筋肉バカじゃないんだね。
「舐めたことをぬかす。」
巨腕が迫り、なんとか回避行動をとる。
私には未来を読む力も、思考を早める力もないよ!できるのは、ステータスでのゴリ押し。
なんとか攻撃を避けつつ、体を逸らしながら暗黒弓を6発ほど連射する。
最大同時数は3発だから、2回弓を引く。
腕で攻撃を受け止め、流れた血を地面に振り落とす。
何この人。魔法も何もないのに、筋肉で全てをなんとかしてる。
魔力激化みたいなもの?筋肉を膨張させ、止血や攻撃の貫通を抑える。
厄介だね。ぶっちゃけめんどくさい。
「でも、勝てないとは言ってない。」
万属剣を10本生み出し、レイタースタートのトールと絡める。
いくら魔法少女の私でも、多重捜査は難しい。先にセットされてなければ、の話だけど。
「くっ………」
歯を食いしばる男。流石に、半分近くを受けきっては、力も出すに出せない。
あとは、アースアイスー!
地面が揺れ、逆ツララのように氷の棘が突き出る。魔力で位置を操作し、それは道を形作る。
「暇な時に作るコーナーその34、手錠。」
ちなみにあの時の眼鏡は、その6ぐらいだよ。
「魔力を纏わせて、施錠や解錠ができる手錠さ。」
キリッとキメ顔をとり、テクテクと歩き出す。
地面が揺れて動けない男はに対し、私は動ける。理由を答えなさい。
ブッブーですわ。……ネタはさておき、正解は空中歩行を地面スレスレでやってるだけ。
残念だけど、魔法少女は自然災害には逆らえない。
「はい逮捕。さ、情報をもらおうかな。」
「………………………」
自分が捕まった事実を受け止めきれないのか、呆然としていた。
おーい、情報もらいにきたのに、もらえなかったら損じゃん。
「赤狼烈火ってののボスなんでしょ?この街の怪しいところに関して、教えてくれない?」
「……無理だ。」
「えぇー。」
「話は最後まで聞け。」
そういうと、深く息を吐き、また深く考えるように目を瞑った後、男はゆっくりと口を開いた。
「……共闘しろ。お前のせいで、赤狼烈火は見ての通り壊滅状態だ。でもお前は、それ以上の力を持っているように見える。」
地響きのような低い声が、耳を揺らす。
「オレはこの街を知り、お前は力を持つ。共闘すれば、これ以上いいことはないはずだ。」
そんな提案を投げかけてくる。
確かに、情報屋的な存在はあって悪いことはない。
信用はあるか分からないけど、信じてもいいんじゃないかとは思う。
「突然だね。でもまぁ、いいよ。見た感じ、利害は一致してそう。この街に、何か不満でもある?」
「そんなところだ。」
私はクスッと笑い、万能感知にマークしておく。
この後、少し話し合いをした。急展開でついていけない部分もあるけど、そこは取り繕ってなんとかした。
男はルーヴと、めっちゃ発音しずらい名前だった。
赤狼烈火は街に不満を持つ人達で構成され、今回のことで私を利用してるんだと思う。
利用されてるのは気に入らないけど、ここは黙認してあげよう。
これが、大人の対応。ってね。
———————————————————————
北商のネタは思いつきましたが、東商のネタが思い浮かばないという事案が発生しました。大変です。
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