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6章 魔法少女と奴隷商の国

178話 魔法少女と潜入捜査(北商)

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 やってきました、北商!

 その名の通り、エンヴェルの北の方にある街で、なかなかに荒れている。
 ほら、そこでも。

「オイコラァ!どこ見て歩いてんだ、アァァン?」
「それはコッチのセリフだボケェッ!」

「アァァン?」
「アァァン?」

 これよ、これ。バカみたないなのしかいない。何この無法地帯。

 ここで何をどう調べろっていうんだろうね。
 そもそもさ、こんな人達にあんなことできると思う?思わないよね、うん。

「潜入調査とは言ったものの、どうすればいいんだろうね。」
歩きながら、眉を小さく曲げる。もちろん、誰にも聞こえないように言った。

 ひぃ。視線を感じる。

 私は、フードを被る。今更だけど、よく見ると耳がついてる。
 最近はフード封印してたけど、さすがに目立ちすぎるのは良くないので、久しぶりに解禁する。

 猫耳?まぁいっか。アニメとかでもよく見るし。

 判断基準がおかしいのは、ご愛嬌ということで。優しい目で見ていただきたい。

「どこから回ろうかな~。やっぱり暴力団とかいるものなのかな?確か『冒険者ギルドは北商、商業ギルドは南商にあるから知っておいて』って、レイティーさんが言ってたね。」
そんなことを考えながらフラフラと歩き、途中で姐さんが抜けてたことに気づく。

 面倒だし、もういいかな。飽きたし。

「冒険者ギルドは後回しかな。色々大変そうだし。」
大雑把に、今日の行動を決める。まずは町の観察、そして人の観察だ。

 人や動きをや見た目を見るより、足元や口元、目元や視線を注意深く見たほうがいい‥‥気がする。

 2度と会うことはないんだし、少し怪しくてもバレないでしょ。バレないよね?

 チラッと道の横を見る。どこも、荒々しい字で書かれた看板に、怪しい雰囲気のある色をした建物で不気味だ。
 ここ、やっぱり誰かと来た方がよかったかな……

「言い出しっぺは私だ。ちゃんと完遂しなくては。」
自分の頬を叩き、気を入れ直す。

 午前は適当にぶらついて、ご飯食べた後にギルドに行けたら行って、色々観察……最後は帰ろう。

「にしても、いつまで経っても‥‥ボロいな。もう少しまともなとこはないの?」
小声で愚痴を吐き捨て、トボトボと歩く。

 どこ行こう。消去法で迷ってるんだよね。どこもまともじゃないから、セーフのところを探すのが難しい。

「オイお前。見慣れない顔だなぁ?」
突然、そんな風に声をかけられた。気になって振り返ってみる。

 ザ・モブキャラって感じ。モヒカンに、顔に傷があって、少しヒョロイ。
 何これ。ここまであからさまな人、存在するの?

「昨日来たので。」
まずは謙って喋ってみる。

 何か組織のこととか、ポロってくれてもいいんだよ?

「ハァ?一般人がこんなとこ来てんじゃねぇぞ?」
「冒険者なもので。」

「ハッ!こんなガキが冒険者だぁ?」
「魔法が使えるので。そもそも、歳は関係ないのでは?」

「口答えしてんじゃねぇー!オレを誰か知って言ってんのか!?」
「知らない。」
そろそろモブの下手に出るのも嫌になり、いつもの調子に戻る。

 あと、何か吐いてくれそうだし。

「オレはここらを取り仕切る暴力団、赤狼烈火せきろうれっかのの一員だぁ!」

「……………ワー、スゴーイ。」
ぱん、ぱん、ぱん、と非常に不定期に手を鳴らし、死んだ魚の目で見つめる。

 赤狼烈火、ね。オッケー覚えた。もし見つけたら、簡単に交渉フルボッコにしてボスに情報もらおう。

 ついでに、どこにいるかも吐いてもらおう。

「赤狼烈火ハ、ドコニキョテンガアルンデスカ。」
「おう、気になるか?それはだなぁ、あの路地の先の先にある、とたん屋根の家だぜ!」

「フーン、ソウナンダー。モウカエッテイイ?」
「仕方ねぇな。特別に解放してやるよ。」
そう言って、モヒカンモブ男は去っていった。それを、まだ死んだ魚の目で見つめる私。

 ふぅー。演技疲れたー。
 さっきの、名演技なんじゃない?ドラマ狙えちゃう?
 まぁそんなわけないけど。

 でも、しっかり情報はもらった。そういう人は、何かいい噂を持ってるものなんだよ。


 ぐーぎゅるるる。

「その前に、ご飯済まさないと。」
自分のお腹に手を当てる。さっきまで地味にシリアスそうな雰囲気を醸し出してたけど、一気に消え去った。

 そして私は、奇行に出ていた。

「すいませーん、美味しいご飯屋さん知ってますかー。」
吹っ切れたような笑顔(フードで見えない)を浮かべ、そんなことを口に出していた。


「おぉ、ワイルド。」
少し大きめの肉が、ただ焼かれたものが出てきた。いわゆるステーキみたいなものだった。

 食欲って怖いよね。お腹空くと、あんなことしちゃうなんて。
 たまたま声をかけた人が他の街の冒険者だったからよかってけど、そうじゃなかったら街中で怪我人が出るところだった。

 どうしてって?あんなモヒカンが絡んでくるんだよ?手ぐらい出るよ。

 今思ったけど、私って捕縛めっちゃ難しいね。

 「ほんとに今更だね……」と口にしながら、もきゅもきゅと口を動かす。

 さすがは北商、豪快だけど美味しい。

「ふぅー!お腹いっぱい。」

小銀貨2枚のステーキだったけど、2000円って高いのかな?
 ステーキなんて食べにいったことないから、全然分からなかった。

 覚えてたらまたこよう。

「今度こそ、赤狼烈火の元へ……レッツゴー!」
1人だから、そういうテンションも勝手に変えられるので楽だ。当分、パーティー組むのははいいかな、と思いつつある。

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 こんなような話が、あと7話ほど続きます。頑張って読んでくださると今後の励みになりますので、是非、よろすすおねがいするます。(流行りに乗った)
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