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6章 魔法少女と奴隷商の国

175話 魔法少女と事件

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「「「「「「「…………………………………………………………………………………」」」」」」」
全員が沈黙し、ただ一点だけを見つめていた。もちろん、森の方向に。

 今の、あの商人の声だよね?
 これ、助けた方がいい系?

「どうすればいい?これ。」
「ワタシに聞かれても知らないわよ。」

「でも商人なんでしょ?関わりはあった方がいいでしょ。私も商人の端くれだし。」

 エンヴェルとの関係を持つ商人と関わりがあれば、いい情報が手に入るかもしね。

「ソラ、あなた冒険者じゃなかったの?」
「違法と言われちゃしょうがないでしょ。商人には仕方なくなったんだよ。」

「何その理由……」
そんなことは置いといて、話を戻すことにした。

「言わんこっちゃ無い。俺には助けられねぇぞ。」
困ったような顔で、向こうの御者さん?が呆れ声で言う。

 なら私が助ける?まぁいいけどさ、めんどくさいって気持ちは変わらないんだよね。

「仕方ない。出会ったっていう縁もあるんだ、助けてやる。」
「急に真面目キャラっ!」
今世紀最大の大声を今出してしまった。(まぁ嘘だけど)これは仕方ないことだ。だって、あのウェントがそんなことを言うんだから。

「おい、今までどういう目で見てたんだ。」
「え、こういう目。」
奇行をする、見ず知らずの小学生を見るような引き攣った目をする。

「酷いな、おい。」

 まぁ、細かいことは置いといて。私は私で頑張りましょうかね。
 さすがの魔法少女でも、死にそうな人間を見て見ぬ振りして逃げる真似はしないよ。
 ………本当だよ?

「そうですね、ウェントさんは置いていきましょう。せいぜい護衛役を努めていてください。」
レイティーさんに毒されたか、そんな辛辣な言葉を投げかける。

「そうだ。御者の護衛がいなければ、馬車を操作することができぬ。重大な仕事。」
「暴れ出さないといいけれどね。」
からかう気満々の顔で、レイティーさんは言う。

 なんかみんなの性格がレイティーさんに侵されてる気がせるんだけど、気のせい?
 私は私の意志をしっかり持とう。うん、もう侵食具合半分くらいな気もしないでも無いけど、頑張ろう。

 そして、言い出しっぺをほっぽり出して、声の聞こえた森に行く。

 ちょっと遅かったし、死んで無いよね?

「こっちだったかしら?」
魔道具を数個構え、目を忙しなく動かす。野生の間は備わってないみたいだ。

「誘引剤でも使いますか?」
「余計に魔物増えるでしょ、それ。」

「そうね。地道に探しましょう。」

  ……えー、そう張り切ってるところ申し訳ないんですけど、もう見つけてます。

 ここ、見てください。万能感知の一部です。

 脳内で教師のコスプレをした私が、棒を持って場所を差す。

 魔物、4匹。そしてなんか強そうな反応。必死に逃げる商人。遅い。

 それとなく誘導しようかな、と思って、早歩きで先頭を奪って先に進む。

「……むっ、向こうから声聞こえない?」
実際には何も聞こえないけど、方角的にはこっちなので、適当言っておく。

「聞こえないわよ?」
「同じくだ。」
「ぼくも聞こえません。」

「いっ、一応……ね?ちょっと見ておこうよ。」
全員、訝しげな顔で私を見る。嘘はバレてないみたいだ。

 性格に言うと嘘では無いけどね。心が叫んでるんだし。知らないけども。

 すると、突然足音が近づいてくる。

「……まさか?」
「そうね、そのまさかでしょう。」
そう呟いた時、商人が茂みから飛び出してきた。それに乗じて、レイティーさんの豊満なバストに飛び込もうとしていたけど、華麗に避けられ地面に倒れた。

 この小太りのうすらハゲ、助ける価値あるのかな。

 不安に思えてくる。

「助けてくれっ、魔物が、魔物が!」
私の観測通り、4匹の魔物が飛び出てくる。

 うんうん、一般冒険者じゃ難しいレベルの魔物だね。まぁ、この人達なら余裕かな。

「1人1匹ずつ、それで大丈夫?」
「問題ないわ!」

「ぼくも同意ですっ!」
「すぐに終わらせる。」
全員、森にいてはいけなさそうな、狂気全開の3メートル級クマに飛び込む。

 私はいつでも勝てるし、みんなの見ながら頃合いを図るかな。

 クマを翻弄しつつ、そう考える。

「イリュージョンレーザー!」
横3列に並べられた八卦路のような魔法具から、レーザーが飛び出る。その瞬間、カクカクと曲がり出した。

 おぉー!凄い。どういう原理なんだろう。

 次に、ライのいる方向に目を向ける。

「調合、投擲!〈刺激毒〉!」
投げると、クマの毛が一気に溶けて皮膚が爛れていく。怖い。

 絶ッッッ対喰らいたくないね。さすがの魔法少女でも、あれは無理だよ。

 そろそろ私も片付けような。

「トールっと。」
クマは声すら上げられず、地に倒れ伏す。

「ソラ、そっちは終わった?」
「ご覧の通り。」
「流石ね。ライくんは?」
「僕ももうすぐ終わりますっ!〈麻痺毒〉!」
パリンッ!というガラスが割れる音が響き、その次に地面が揺れた。

「もうじき終わる。」
トインは剣を高らかとあげると、

 最強最悪の、ヒット&アウェイ。
 絡みつくような剣の一撃、水のように流れ、避ける。

 終わった頃には、首筋から大量の血飛沫を上げた魔物の姿が映る。

「これで終わりだ。安らかに眠れ。」
1分も経たぬ間に、4匹の魔物が全て倒れた。

「……………れっ、礼お言おう。」

 上から目線で腹立つね。

「それはどうも。ワタシたちも暇じゃないの、早く立ち上がりなさい。」
ゴミを見るような目で商人を見つつ、馬車の方へ歩き出す。

 そりゃね。助けに来てやったら、いきなり胸に飛び込もうとしてくるんだもん。
 生ゴミだよ。生きるゴミ、略して生ゴミだよ。
 
「ぼくたちは忙しい中、助けたんだよ。何かお礼の品とかないの?」
辛辣ライくんモードになり、小太りの商人に問いつめる。

「分かった!仕方ない、私が出来る範囲でなら何か手伝おう。それで勘弁してくれ。」
「言ったね、言質とったからね。情報とか吐いてもらおうか?」
怯えた表情になる商人を蹴るようにして戻り、ウェントと御者さんたちを回収する。もちろん、商人はこれから情報を吐いてもらうけど。

 商人の運命やいかに。

———————————————————————

 大丈夫です。商人は死にませんよ。ただ、ちょーっと、情報を頂くだけです。
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