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6章 魔法少女と奴隷商の国

172話 魔法少女と移動

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 全員が集まり、準備が整う。流石にフィリオまで外に出ると騒ぎになるため、ギルドにまだ止まっている。

 馬車って地味に酔いかけるんだよね。道もしっあり舗装されてないし、ガッタガッタしてる。
 ま、魔法少女服のおかげでほとんど感じないけどね。

 今日も今日とて、魔法少女服は強いのであった。

 私達は馬車に乗り込み、出発した。これから、2泊3日の馬車の旅が始まるそうだ。

「ウェント、性格がなんとかなれば相性いいと思うのよね。」
馬車の中で、レイティーさんが呟いた。

「は?」
「私は遠距離型、ウェントは近距離型。相性いいでしょ?」
嫌そうな顔のウェント、楽しそうにイジっているレイティーさん。面白い構図だ、見てて飽きない。

 このまま安泰で終わればいいのになー。でも、終わるわけないんだよなー、それが。
 前みたいに、どうせ魔物が襲ってくるんでしょ。知ってる知ってる。

 1人で勝手に諦めていた。

「ウェントってどんな武器なの?武器使う前に倒しちゃったから。」
「嫌な思い出掘り返すんじゃねーよ。」
機嫌が悪そうに悪態を突き、「槌と鎌の混合武器だ」とため息混じりに答えた。

 なにそれ。なんか気になる。
 っていうか、なんでみんなそんなに特殊な武器使ってるの?

 調合、八卦炉、槌鎌……じゃあ、トインの武器はなんだろう?

「回転式大剣ですよ。遠距離から近距離、なんでもいける万能型。ぼくなんかより、よっぽど凄いですよ。」
笑いながら、仲間の凄さを語るライ。子供っぽいけど、それはそれでいい。癒し枠的に。

「というか、今私の心読んだ?」
「顔に出てましたし。」
しれっととんでもないことを言われたけど、スルーしておいた。ふと窓を覗く。

 景色、変わらないね。横を見ても木しかない。

「お前、魔法使いだったな?魔法ってのは強いのか?弱いものだろ、普通。」
色々聞いた身からだから、断りづらかった。仕方ないので答えることにした。

「魔法は強いよ。人は魔力保有量が極端に少ないから弱いだけで、魔力を持ってる人にとっては十分強いんだよ。」
重要そうなワードは書くし、当たり前のことを言っておく。人神やら水竜さんやらに教えてもらったことは、心に留めておく。

 ま、何を言おうとこの人達が魔法を使うことは無い……というかできない。
 1発万属剣をぶちかますくらいしかできないよ、多分。

「ちょっと使ってみろよ。」
「うむ。気にならないことは無いな。」
「確かにね、珍しいから見てみたいかもね。」
「ぼくも気になります。」
全員。満場一致で見てみたいと言われた。

 そんなこと言われてもさ、こんなところで使ったら凄いことになるよ。
 
 えーっと、今使えそうな魔法……

 一級建築魔法。これなら使えそうだ。物質変化で魔力を他の物質を変え、組み立て、模型を作る。
 このぐらいなら余裕そうだ。

「言っとくけど、攻撃魔法なんて使ったら馬車ごと消し飛ばされるから無理だよ?」

「どんなバケモンだよ。」
目を細めて私を見る。どこか、ディーを彷彿とさせる。

「はいはい、私は化け物ですよー。」
そう言いながら、魔力がプラモデルのような部品を形取っていく。

 よーし、後は嵌め込むだけだ。

 板を生み出し、くっ付けていく。
 数分後には、立派な冒険者ギルドの模型が完成した。

「はい、私の使える魔法で安全100%のやつ。建築魔法と変化魔法。」
その模型を椅子の中心に置き、そのまま私は静観する。

「精巧な品だ。」
「よく出来てるわね。」
ちらほらと感想が漏れる。

「ま、この中ではこんくらいしかできないよ。」
これで満足?と言い、模型を収納する。

 その後も、まばらだけど話は続いた。
 冒険者が5人も集えば、それなりの話題もあるし、そこから派生した話で盛り上がることもある。

 ランク当て合いで、私はまたもや満場一致のランクCだった。

 ランクAだよ、一応。

 ライとトインは一応ランクS認定らしい。(臨時パーティーの際のランク)個々だとAと言っていた。

 ややこしいね。

 ウェント、レイティーさんもAらしく、ウェントのほうはめんどくさくて昇級試練を受けてないという。

 ランクSになるには試練とか必要なんだね……と驚いた。

 これから行く、エンヴェルの話も出てきた。
 以来で何度か訪れ、ライは調合用の毒薬を購入したという話だ。

 薬を使うだけあって、家ではいろんな薬草を育ててると聞いた。

 レイティーさん曰く、エンヴェルは4つの街にそれぞれ1人ずつ、合計4人の領主のようなものがいて、それで国をまとめてるらしい。
 そして、そのどこかに特殊な機関があり、それが関わってるかも、と言っていた。

 この日は特に何もなかった。まだ街の近くだし、当然といえば当然だけど‥‥逆を言えば、これからはそうじゃないってことだ。

 もう暗くなり、私達は夕食を食べ始めていた。

「明日からは気を引き締めないとな。」

「そうだな。魔物の数もあの一件で減ったとはいえ、まだ安心はできぬ。」
「何かあれば、ぼくも援助します。」

「一掃するなら私に任せてくれていいわよ。やってあげる。」
硬いパンを齧りながら言っていた。

 遠征は、非常食しか食べられないので困る。でも、私は私でカレーを作っていた。

「えっと、スパイスの分量これでいいかな?」
鍋に水、大きめに切り分けた野菜、(にんじん、玉ねぎ、じゃがいも……のようなものだ)残ってたウルフ肉も入れ、そこにスパイスの瓶をパッパと振って入れていた。

 この世界では、鳥も牛も豚もいるにはいるらしいけど、育てるのが難しくて高級らしい。
 一般家庭に並ぶのは、ウルフ系列の魔物肉だ。ケルベロスも、実は美味しいらしい。

「何作ってんだ?……って、どっから出してんだその食材は!?」
馬車にはなかった品々を見て、驚きを隠せないウェント。

「ん、カレーだよ。食べたかったら私が監修したカフェにでも行って食べたら?」
お玉でぐるぐるとかき混ぜながらそう言う。スパイスの香りが鼻腔を刺激し、唾液が分泌されているのが分かる。

 うーっん、やっぱりアウトドアにはカレーだね。校外学習で作った気がするけど、切ったにんじんを地面にばら撒かれたのは懐かしい記憶だ。

 生産者さんと野菜に謝りなさい。

 暗黒時代(厨二とは違う意味で)を思い出し、薄く笑った。

 何が楽しかったんだろうね、あれ。

 パンは仕方なく硬いパンで食べるけど、カレーに浸すから関係ないね。

「熱っ、あっふ。ふー、ふー、……はぁ。」
出来立ては熱く、舌が死ぬかと思ったけどなんとかなった。

「だから何作って……」
「あ、レイティーさん食べる?」
「いいの?ならいただくわ。」

「僕ももらいたいです。」
「食欲を掻き立てる、良き香りかな。」
2人にもよそい、私も食べるのを再開する。

「ちょ、俺にも食わせろ。」
「頼む時は?」

「……食べさせて、ください……」
「はい、よろしい。」

 レイティーさん直伝のからかいは面白いね。ウェントすら敬語を使う。……ぷっ。

———————————————————————

 何もない、はずだった。なのになんでここまで長くなったんでしょうか。
 不思議でたまりません。

 カレー食べたいです。
 ちなみに執筆時の前日の夕飯は、焼肉のタレで炒められた野菜どもです。(どうでもいい)
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