上 下
172 / 681
6章 魔法少女と奴隷商の国

164話 魔法少女は招待する

しおりを挟む

「ふぁ~……んぅぅ…………」
ベットの上で、大きく伸びをする。

「ここ、どこ?」
ピンク色が目立つ天井が見え、なんだここ、となる。

 えーっと、窓をまず開けよう。

 バッと窓を開くと、目の前には広い野原が広がっていた。
 そこで思い出した。ここは私の家、小高い丘の上にある、そこそこの豪邸ということに。

「あー、うん。私のお家だ。」
ベットから降りる。その場でぐるぐると歩き回り、コートを着ていないことに気づいた。

 おっと、危ない危ない。厨二コートを着てなかった。

 このコート、ロア達にちょっとツッコまれたけど、「かっこいいですね!」と言ってくれた。可愛いね。頭なでなでしたくなって来たし、ロア呼ぼうかな?

「よし、ロアのところに行こう!」
そう言いつつ、朝食を用意する私。

 食材生成ってものすごい楽だよね。加工品が出ないのは辛いけど、パンくらい買えばいいしね。

 私がうろ覚えで作り出したオーブンにパンを突っ込み、核石に触れる。
 あとは味付けが既にされた肉を用意し、スープを作る。

「家具やら細かい雑貨、食材費諸々でだいぶお金が飛んでいった……土地は貰って正解だったね。」
切り分けたお肉をつまみ食いしながら、あの日のロアとネルに感謝する。

 ありがとう、2人とも。私の敷地に、何か好きなものを作る権利を与えよう。

「まぁ、そんなことは置いといて、ご飯でも食べよう。」
ちょうど焼き上がったパンを取り出し、肉を挟み、お椀にスープよそった。

「いただきます。」
初めての家での食事だからか、何故か少し緊張する。

 んー、まぁ美味しい。うんうん。

 もぐもぐと食事を摂りながら、出かける準備をする。掃除はめんどくさいから、また今度で。

 ま、まぁ?まっ、魔法で、なんとか?なるし?

「特に準備するものは無いけどね。」

 大抵の物はステッキに入ってるし、特別に用意するものなんて無いよ。

 ドアを開き、丘から朝日を見る。

「まだ朝だけど、もう起きてるよね。」
そんなことを呟きながら、ロアのいるアパートに向かう。

 最近思うけど、そろそろお金溜まってるだろうし、引っ越したらいいのに。狭いでしょ、あの部屋。

「今はお金が心もとないから………うん、また今度援助してあげよう。もちろん利子はなし。」
と、1人で笑っていた。変人だ。

 私はゆっくり散歩しながら、日がほんの少しだけ昇った頃に、アパートに向かった。
 ロアの部屋に、コンコン、とノックをし、「ロアー、いるー?」と聞く。

 ドアが、キィーっと音を鳴らして開いた。

「ソラお姉ちゃん?」

「おはよ、ロア。」
笑顔で手を振る。

「おはようございます。朝から、何か用ですか?」
不思議そうに首を傾げている。

「ちょっと見せたい物?招待したいところ?があるんだけど、ロアとサキはどうかなーって。」
「見せたい物、ですか?」
「そうそう。」
2人で話してると、奥から元気な声が聞こえてくる。

「お姉ちゃん、どうしたの?」
玄関で話してるロアが怪しく感じたのか、サキがロアの背中をトントン、と、眉の先を上げてロアを見ていた。

「お姉ちゃん?」
サキは私を見て、もう1度首を傾げた。

 もうその呼び方は固定なんだね。話の流れを読めば、まぁなんとか……?

「とりあえず、私たちはまだご飯を食べてないので、食べてからでいいですか?」
「うん、いいよ。こっちこそごめんね、こんな朝から来て。」

「もっときていいよ、お姉ちゃん!」
ロアの面影が残る顔でそう言われ、嬉しくなる。

 ロアが小さいときは、こんな感じだったのかな?見てみたいかも。

 「お邪魔しまーす」と一言言い、ロアの家に入る。

 机を見ると、2人分のご飯が作られている。簡素だけど、初めの頃よりかはいいものを食べてると思う。

 テレスさんは、今頃お店でせっせと働いてると思う。お疲れ様。月給、増やそうか?なんならポケットマネーから出してもいいけど。

 本当だったら、稼いだお金は全部テレスさん達に割り振りたいけど、必要なお金以外は全て私のギルド口座に入るんだよね。
 別にいいのに。っていつも思う。

 ロアとサキが美味しそうにご飯を食べ、笑ってる姿を横で見る。

 この笑顔を、守りたい。

「ソラお姉ちゃんはもう食べたんですか?」
「うん、食べたよ。」

「ソラさんって、普段どんなものを食べてるんですか?」
「宿屋のご飯だね。エリーが私の好みを把握し始めて、今度は私の体調に合わせて作ってくるから、食べる手が止まらないんだよね……」
えっへん、と胸を張るエリーが頭に浮かび、微笑を浮かべた。

 お金も笑顔も落としていくから、いい鴨だと思われてるのかも。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん。見せたいものってなぁに?教えて教えて!」
気になって仕方ないと言う風に、机に乗り出して聞いてくる。

「私も気になります。」
ロアも目を輝かせて、私の方を見る。

「分かった、分かったからその期待の眼差しはやめて。」

「分かりました。」
普通の目に戻り、私は息を吐いた。

 謎のプレッシャーかけられたあの状態じゃ、話しにくいしね。2人はそれでいい。

「私、この前貰った土地で家作ったんだけど、来ない?花とか植えようと思ってるんだけど、一緒にやったら楽しいと思って。」
短めに要件を伝えた。

「おうち?行ってみたーい!」
「ソラお姉ちゃん、家を作ったんですか!?」
三者三様ならぬ、二者二様の反応をした。

 いい反応だ。その反応なら、言った私も満足するってものだ。

「で、どう?来る?」
「行く行くー!」
サキは即答した。大きな笑顔を作り、飛び跳ねていた。

「……今日はすることは無いので、行ってみたいです。ソラお姉ちゃんの家に。」
ふんす、と言うテロップがつきそうなポーズで、訴えかけるように言う。

 よし、決まりだね。

「じゃあ行こう!私の新居へ。」
大きさに驚くことを期待して、3人で家を出た。もちろん皿洗いと掃除を手伝ってから出たよ?

 魔法少女が家政婦みたいなことをしてるって?家政婦じゃないよ、ベビーシッターだ。

 それじゃあロアとサキに失礼かな、と思いつつ、ギルド裏の丘へ向かった。

———————————————————————

 6章が始まりました。もう投稿し始めてから結構経ちましたね。
 今章は書いてある通り、あの国に行きます。章名でいきなりネタバレですね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?

アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。 ネット小説や歴史の英雄話好きの高校生の洲河 慱(すが だん) いつものように幼馴染達と学校帰りに公園で雑談していると突然魔法陣が現れて光に包まれて… 幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は素晴らしいジョブとスキルを手に入れたのに僕のは何だこれ? 王宮からはハズレと言われて追い出されそうになるが、幼馴染達は庇ってくれた。 だけど、夢にみた迄の異世界… 慱は幼馴染達とは別に行動する事にした。 自分のスキルを駆使して冒険する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。 現在書籍化されている… 「魔境育ちの全能冒険者は好き勝手に生きる!〜追い出した癖クセに戻って来いだと?そんなの知るか‼︎〜」 の100年前の物語です。 リュカが憧れる英雄ダン・スーガーの物語。 そして、コミカライズ内で登場する「僕スキなのか…」がこの作品です。 その作品の【改訂版】です。 全く同じな部分もあれば、新たなストーリーも追加されています。 今回のHOTランキングでは最高5位かな? 応援有り難う御座います。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

いるだけ迷惑な最強勇者 〜ハズレスキル『味方弱化』が邪魔だと追い出されたので、この異世界で好き勝手させてもらいます!〜

束音ツムギ
ファンタジー
【完結保証!】  ——気づけば、クラスごと異世界に召喚されていた。  そんなクラスの中でも目立たない、ごく普通の男子『梅屋正紀』も勇者として召喚されたのだが、《味方弱化》という、周囲の味方の能力値を下げてしまうデメリットしかないハズレスキルを引いてしまう。  いるだけで迷惑になってしまう正真正銘のハズレスキルを手にした俺は——その場で捨てられてしまう。 「そんなに邪魔なら俺から出ていってやる」と、一人で異世界を旅する事になった俺は、旅の途中で《味方弱化》スキルに隠された効果が、Sランクスキルをも凌駕できるほどの最強の効果であった事を知る。  いるだけで迷惑な最強の勇者『梅屋正紀』が、異世界で無双するッ! 【小説家になろう】【カクヨム】でも連載中です!

『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行
ファンタジー
 ぼっち高校生、冷泉刹華(れいぜい=せつか)は突然クラスごと異世界への召喚に巻き込まれる。スキル付与の儀式で物騒な名前のスキルを授かるも、試したところ大した能力ではないと判明。いじめをするようなクラスメイトに「ビビらせんな」と邪険にされ、そして聖女に「スキル使えないならいらないからどっか行け」と拷問されわずかな金やアイテムすら与えられずに放り出され、着の身着のままで異世界をさまよう羽目になる。しかし路頭に迷う彼はまだ気がついていなかった。自らのスキルのあまりのチートさゆえ、世界のすべてを『殺す』権利を手に入れてしまったことを。不思議なことに自然と集まってくる可愛い女の子たちを襲う、残酷な運命を『殺し』、理不尽に偉ぶった奴らや強大な敵、クラスメイト達を蚊を払うようにあしらう。おかしいな、俺は独りで静かに暮らしたいだけなんだがと思いながら――。

クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。 異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...