159 / 681
5章 魔法少女と魔物襲来
154話 魔法少女と決戦
しおりを挟む勝ち目がない?絶対にダメ?そんなわけない。そんなわけがない。
威風堂々たる、威厳を持つ地龍。でも、弱点がないわけじゃない。どんな生物にも、弱点は絶対ある。
大地を揺らしたものは、青みがかった黒色をした鱗を持つ、地龍。
何が起こったって?そんなの簡単。
「空力。聞こえてるか分からないけどね。」
わざとらしく首を曲げてみる。
「空力は、力がほとんどない人間が、強者に勝つため生み出された。狐人が私を圧倒しかけたのは、魔力防御が高かったから。」
自分の考えを噛み締めるように、言葉にする。
簡単に説明すると、龍は魔法に対して圧倒的な防御を発揮する。その中に、魔法を入れたらどうなる?
硬い鱗と、体の間。出ることはできない。できるのは、ただ自分を傷つけることだけ。
私の魔法少女装備一式は、魔法に対して全体的にとてつもなく効力を発揮できる。
狐人の空力は、それに反応したんだと思うよ。
「どう?自分の防御力の高さのせいで食らうダメージは。あっ、なんかやる気出てきた。」
ようやく勝機が見えてきたことで、自然と頬が緩む。眉も丸い八の字を描いていた。
でも、万能感知で見る限りあんまりダメージ食らわせた感がないんだよね。
「そろそろ立ち上がったら?私も私の攻撃の威力くらいは把握してるから、この程度で地龍がのされるなんて思ってないよ。」
その言葉に呼応したように、のそっとした動きで立ち上がり、背中の赤い紋章が光る。
ほんとに、なんだろうね。あの赤いの。
「ギュルゥラァァァァァァァッッッ!!」
思考はその咆哮で遮られ、「もう、なんなのさ……」と呟きながら後退する。
「ギュルォゥゥッッ!」
その巨大では考えられないスピードで、四方八方に跳んで移動する。もちろん土槍も一緒に飛ばしてね。
とうとう本気を出したかな?流石のスピードだね。
「じゃ、避けてみて。」
空中歩行で空を駆け、両手を横に伸ばす。空間の力が集まり、見えない球が形成される。
狐人みたいに、形にしちゃうと避けられやすい。私にしか分からなくていいんだよ、空力なんて。
音にしたらボォンッとか鳴りそうだけど、全くもって音は鳴らない。実態が無いしね、当然っちゃ当然か。
「ほらほら、どうしたの?さっきまでの強さはなんだったのかな?」
数値化したら挑発能力53万を超える私に、挑発できるような状況を生み出すなんてね。
これは煽ってくださいって言ってるようなものだよね。
土弾も土槍も検討ハズレの方向にしか飛ばない。いくつか当たったのもあるけど、破壊されていく。
「ギュラゥッ!!」
「新しい攻撃っ?」
地面から意志を持ったようにうねうねと動く、土の棒が何本も生み出されていた。
「ギャウラァァッ!」
それぞれが空間を埋め尽くすように動き回り、そのうちの1本が私へと肉薄する。
………っ!危な…………、なーんてね。
ボッと視界が青く燃える。
「ざーんねん。想定済みでした。」
空力で発生させた炎が、ゆらゆらと煌めく。その隙間からニヤッと笑みを浮かべた。
アニメや漫画を読み漁った私に、地龍の攻撃パターンや種類が分からないわけないんだよね、これが。
よくあるよね、こういうやつ。
「私が空力を使えるなんて思わなかったでしょ?京成逆転だね。」
意味は無いけど、適当に暗黒弓を放っておく。
魔法少女が攻撃に魔力を使わないっていう、よく分からない状況だね。
魔力の方が使いやすいから、空力はサブになる予定だけどね。
「ギュラウゥゥッ!ギャァァォッ!!」
今度は、大きい土の塊をいくつも宙に飛ばし、私はそれを眉を折りながら観察した。
なんだろう?爆発するとか?
「というか、未だ空力は当てられてない。これが歴戦の猛者たる龍……」
そんなことを言ってると、耳に刺さる音が聞こえる。
なにっ?
急いで音のした方を見ると、土の塊が割れて細かくなったものが全方向に飛散していた。
「そんな攻撃聞いてない!」
空力を固め、盾を作る。
さっさと当てないとダメなのに、こんなところで足止め食らうなんて……
「あぁ!もう!魔力喰らい。」
飛散した土の塊を、魔力喰らいで全て食い尽くす。力を食い尽くす魔法なので、頑張って空力は避けた。
接近戦でなんとかしよう。じゃないと、攻撃を当てられるビジョンが見えない。
「おっと、神速のある私に逃げられるとでも?」
土槍を出現させ、華麗な動きで飛び移って逃げる地龍を、神速で追いかける。
速さで勝てると思わないことだね。
刀を再度取り出し、ステッキと一緒に空力を纏わせる。
両足で強く踏み込み、跳躍する。回転する土の塊を生み出す地龍に接近し、その瞬間に土の塊は刃を形成し、飛んでくる。
「効かないよ、そんなの。」
刀でキンッと1度弾くと、内側からヒビが入って無くなる。
攻撃が全て効果的な私に対し、攻撃の全てが意味を成さない地龍。形勢逆転だ。
「ギュラァァァァァァッッ!!!」
前足で地面を叩くと、ドドドドドッと地面から鋭い槍が連なって出現する。
「当たったらひとたまりもないね……でも、当たらなければどうということはないのだよ。」
どこかで聞いたことのあるセリフを吐き、跳躍。槍の側面を足場に蹴り進む。
私と地龍の差。残り10メートル弱。
「流星光槍!」
斜め打ちで光の槍を飛ばす。その間に、空力の壁を地龍の後ろに作っておく。
「ギャォォッ?」
何かにぶつかったみたいに、血流の体はそれ以上進まない。
「ギャォォォ……」
光槍が腹部に刺さり、眩い光を発して地龍を蝕む。
「チャンスっ!」
空気を両手に握られた武器に流し込み、斬撃と弾丸を撃ち放つ。
空気を切り裂いていくような動きだけど、実態はないからね。誰が思いついたのかな?人神?
「ギュラオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!」
傷口は避け、力が逃げられないようなところに2発とも命中。苦痛に耐えきれず、地龍は轟音を発してのたうち回る。
これで勝った……?
スタッとかっこよく着地し、「ふぅー」と息をつく。
「はぁ……………結構疲れた。もう動きたくない。……魔力も回復させないと。」
瓶を取り出し、さっさと飲み干す。1本では足りる気配がないので、最後の1本も飲み切る。
空力を使うには、結構神経を使う。体が重くなるし、無理矢理体を動かすと、その分負担も大きい。
地龍は動き出しそうもないし、体を休めてから移動を開始することにする。
神経すり減らしたなぁ……と思いながら、私は木のそばに腰掛けた。
———————————————————————
地龍、案外あっけなかったですね。
ソラ「あっけない?こっちは死ぬほど疲れてるんですけど!?」
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる