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5章 魔法少女と魔物襲来
144話 魔法少女は地龍と戦う
しおりを挟むこの事態に、他の冒険者は気づいてるのかが気になるところだけど、今は他人に気を遣ってなんかられない。
だって無理じゃん!竜を目の前にして、人に気を使うなんて不可能なんだよ!
「……これってまさか……地龍とかだったりしない?竜超えて、龍だよねこれ!?」
目の前の事実を受け入れたく無くなってきた私は、一旦目を瞑る。
瞑想しよう。瞑想だ。迷走じゃないよ瞑想だ。
うん、迷走してる。
orz……この一言に尽きるよ。
「グギャァ゛オ゛ォ゛ォォォォォォォォ!!!!」
耳が壊れるかと思うほどの轟音が鳴り響き、それはおよそ生物が出せる音じゃないと感じた。
この咆哮からして、絶対龍だ。水竜もここまでのうるささは無かった。
これは逃げ出したくなるやつだ。
「勝つ方法……裏技が1つあるけど、倒すことはできないと思うし……」
今までに無く本気に、どうしようかな悩んでいる。
裏技とは、魔法分解のことだ。あれは盲点だった。自分の魔法を分解して統合するってのはやってたけど、魔法分解の本質を理解してなかった。
いや、見たら分かるはずなんだけどね。裏を読みすぎちゃった。テヘッ。
「魔法分解。それは魔法をそのまま消す、まぁ私が制御できる魔法までだけど。」
さっきの変な言葉は忘れてもらって、まじめモードに戻る。
魔導法。私のチート能力ランキング候補。これ強すぎる。
他者の魔力や、別種の魔法を使いやすくなる効果もついてるから、魔法分解にも反映される。
だから何って話だけどね。
「はぁ……やるからには本気、出させてもらうよ?」
特異体質、影薄。
私を見失いやすくなり、攻撃が当たりにくくなる。適当だけど、この場合は結構役に立つと思う。
地龍といえば、いろんな作品で地面、そして壁すら立てなくなるみたいな話を聞いたことある。
だから、当たらなければいい理論で地龍と戦う!
「魔力超化、万属剣!」
流石に地龍相手にレイタースタートなんて舐めプにも程があるので、本気の本気でいく。
使ってもいいけど、ちょっとうざいくらいにしかならないだろうね、きっと。
いくつもの剣を飛ばし、それぞれを魔力で強化していく。
「グルゥワ゛ァァァァァァァァァァヴ」
耳を魔力で覆い、なんとか音を遮断する。そのまま聞いたら、立ちくらみでまともに戦えたものじゃない。
その咆哮だけで、魔力超化された万属剣は破壊される。恐ろしい。
「でも、動きを止められれば勝機は見える……!」
言葉が分かる可能性があるので、作戦は口に出さない。
水竜さんがそうだったようにね。
まずトールで動きを乱し、空を飛んで上から炎を降り注ぐ。その瞬間、神速でこの物質変化で作り替えた拘束縄で捕まえる。
これがある程度の流れだ。
私は思いっきり踏み込み、トールの雷を練る。
もっと魔力の濃度を濃く、爆発力を高めた方がいいよね。
ステッキからバチィッと雷がもれ、色も変色していく。
「そもそも地龍相手に雷って聞くのかな?」
怖くなってきたので、エアリスリップで濡らしてやろうと竜巻を起こした。
あんまり長すぎると魔力の消費がきついし、直ぐに消すよ。
「そろそろっ!」
竜巻を消した瞬間に、ステッキが纏った蒼い雷を飛ばした。
「ギュル゛ヴゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
水に濡れて嫌そうな顔をする地龍、そして迫り来る雷。
感電しろー、動きよ止まれー!
ファイボルトの必要がなくなりそうで、少しだけ安堵の息を漏らして観察する。
これで動きが止まれば、ミョルスカイの一撃で沈められると思う。
相当確率は低いと思うけど、今回のトールは皮膚を溶かすって役目もある。なんとか行けるでしょう。
そんな時、轟音が2つ同時に鳴る。
1つは、バチィィィッッ!っていう雷の音。
もう一つは、「ギャグヴゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!」という咆哮。
「よし、当たった!」
一歩後退し、作戦通りにミョルスカイを手に持つ。
出力全開、150%!標準、そして弾道予測完了。魔力充填、魔弾装填。トール、投擲!
ミョルスカイの銃口の先に、レイタースタートで作ったトールを用意し、空中でも速度を上げられるようにする。
「発射準備完了!レールガンッ!いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
小さな銃口から出る音では無いような、ドゴォ゛ォ゛ォ゛ンッッッ!!という爆音で自分でもダメージを喰らう。
うっるさ!耳壊れるかと思った!
覆ってあった魔力が、なんの役にも立っていなかった。
辺りは私の雷によって焦げつき、灰となっていた。木や葉、地面など、いろんなものが抉られ、消えていく。爆発の影響で、煙も立っていた。
人神によって強くなった魔力が、ここまでのものとは思わなかった。
余波だけでこれ。一体レールガンはどんな威力なんだろう。
膝が震えてきた。
木とかにヒールかけといた方がいい?ほんとに環境破壊になっちゃったよ。
うわぁ、と顔を顰めていると、ようやく煙が晴れる。
「………へ?」
地龍が倒れてる。
完璧に倒れてるよね?伏せちゃってるよね?え?
完全に困惑する。
いやね、倒せたんだったら嬉しいよ?これ以上なことはないよ?でもね、あり得なくない?私の一撃で倒れるなんて、地龍としての威厳がなくなるよ!?
「おーい、地龍さーん。生きてらっしゃいますかー?起きませんか?」
ステッキの柄でつんつんと触るも、反応なし。ペチペチ往復ビンタをする。反応なし。
ひんやりしてる……本当に死んだのかな?辺りの魔物は地龍の覇気が消えたことにより、活発になってきた。
「これ以上ここにいるのは危ない。回収は回収班に任せよう。」
そんな班は無いけど、と空を駆けた。
———————————————————————
地龍、倒れましたね。これはただの置物だったんでしょうか?
レールガンで倒れてしまった地龍の行方は……?
ちなみにですが、この後「ごめんねー」と言いながらヒールをかけました。
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