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5章 魔法少女と魔物襲来
135話 魔法少女はお礼を言われる
しおりを挟むキッチンに入ると、テレスさんはやっぱり料理をしている。ハンバーグを焼いてるようで、肉の香ばしい香りがしている。
「ソラさんすみません。聞こえてきてたんですけど、手が離せなくて……」
綺麗に肉の塊をひっくり返し、とても様になるなと感じた。
「いや、いいよ。私もタダ飯食らってるようにしか見えないし、しょうがないよ。あ、やっぱりレジにお金入れとくから。」
「別にいいですよ、お金なんて。」
「いや、だめ。お金の辺りはちゃんとしてこう。」
私らしくは無いけど、ちょっと真面目な顔をして言う。
私だってお金の大切さくらいは理解してる。私が必死こいて魔物を倒したのに、お金を貰えなかったらブチギレ案件だ。
せっかく料理を作ってくれたんだから、それに敬意を示してお金を支払ったほうがいい。
「あ、そうじゃなくて。スペアステッキの使い心地、どう?私は定期的に食材入れるだけだから、楽でいいんだけど……どう?」
ハンバーグ作りがひと段落つき、レインが盛り付けて運んでいる間に、そう聞いた。
私も手伝った方がいいかな?時間取らせちゃってるわけだし。
「使いやすいですよ。簡単に取り出せて、俺も楽でしていますし。」
ステッキから、手慣れた手つきで食材を取り出して笑ってみせた。
「それならよかった、改良点が見つかったら教えて。それは私が指定した人しか触れないから、防犯もバッチリだよ。」
親指を立て、私も包丁を手にした。冒険者をやってるせいか、包丁を指でクルッと回した。
もちろん手は洗ったよ?食材に触るんだしね、手指消毒は大切だ。
「ありがとうございます。」
「え?」
オーダーを待ってると、テレスさんが唐突にお礼を言ってくる。
「ソラさんがいなかったら、ちゃんとしたお店で働くことも叶いませんでしたし、ロアにも自由に遊ばせることできませんてました。」
なにか、物語の終盤にでも出てきそうな言葉が繰り出された。
急になに……?ここで私の物語を終わらせるつもりかっ!?私には冒険させないというこ……そろそろ、真面目に行こう。
「私がしたくてしてるんだから、お礼はいらないよ。」
「じゃあ、俺がお礼を言いたくて言ってるんです。」
やり返されてしまった。
もうやることが無くなってしまったので、手伝いに戻った。
いっつも働かせまくってるので、少しはオーナー(仮)の私も働かないといけない。
あと、これからもスイーツとか増やしていきたい。パンケーキ食べたい。ショートケーキ食べたい。モンブラン食べたい。
チョコレート欲しい。糖分が足りない。
「そうだ、カカオを作ろう。」
「なんですかそれ。」
よく分からなささそうに私を見てくるテレスさん。
「いや、独り言だから気にしないで。」
薄く笑って、はははー、と誤魔化す。
アイスにチョコがあるけど、あれはチョコであってチョコではない。
アイスに入ってるのは、チョコ風味のアイスだ。
だってさ!テンパリングとかよく分かんないんだもん!工程とか知らないよ!?誰かチョコの製造方法知ってる人いないの?
はぁ、はぁ……取り乱した……
今日もそこそこ繁盛し、営業時間終了となる。軽く片付けを手伝い、遅い昼食をとって終わった。
そのあとは屋台を冷やかしに行ったり、(買わされてしまった物も多々ある)ギルドの依頼をチェックりしたりもした。
あんまり面白そうなのは無い。竹林の村発見の件については、結構面白い依頼だった。
そのおかげで、マリンさんとフィリオに重荷がのしかかったけど。
「ま、まぁ?この街の発展ためと思えば、ギルマスと領主なんだからさぁ?ねぇ。」
小声で言い訳をする。
一通り時間を潰し終わると、宿屋に帰ろうと足を運ぶ。昼食が遅かったため、エリーの夕食は軽めのものにしてもらおうかな、と考えているとデジャヴを感じる。
目の前には、少しお怒り気味の白髪の少女が1人。
「ソラさん、騙しましたね!お父様からの伝言を大人しく受け取ってください!逃げないでください。」
「まぁまぁ。おー、よしよし。ネルはいい子だー。いい子だから、ちょっと待とうか。」
そう、ネルだ。やっぱりネルだ。
「待ちません。って、いきなり逃げようとしないでください!そろそろ傷付きますっ。」
手を伸ばして私を捕まえようとする。流石の私もここまで子どもをいじめる趣味なんてないので、宿屋に入れる。
「ただいまー。エリー、今日は軽めでいいよ。」
「おかえり。また何か食べてきたの?健康に悪いから、ちゃんと考えて食べてね。」
「はーい。」
歳はほぼ同じなのに、ここまで差が出るというのはどうしてだろう。特に胸部。
「お邪魔します。」
しっかりお辞儀をして入ってくる。
ここは宿屋だからそんなのいらないと思うんだけどね。
「何も無いけど、くつろいで……え?領主様の、娘さん……?」
「ん?2人は面識あるはずだけど。」
「だからって!なんで人を連れてきてるの!」
エリーは私の肩をガシッと掴み、耳打ちする。
別に何かあるわけじゃないんだし、いいでしょ。
「ソラさん?どうかされました?」
「いや、どうも。部屋行こうか。」
「はい!」と可愛く返事をし、横をてくてくついていく。一方エリーは「しょうがない。もうしょうがないんだ」と頭を抱えてる。
お母さんにバレた時は、説明よろしく。
全ての役目を押し付けた。
部屋に入ると、ぐるっと周りを見た。
「ここに泊まっているんですね。」
「ベットにでも座って。」
もうネルには魔法少女服はバレてるから、上着を脱いでハンガーにかける。
ふー、なんかこの格好だと風通しも良くて気持ちいね。普段着にはしたくないけど。
「ソラさん、その格好……?」
「ん?魔法少女だけど。」
「え?」
「ん?」
「「…………………………………………」」
まさかと思い、記憶を掘り返してみる。
私のこと学校を知ってる人は何人いる?
まずロア。エリーに上着買った時のおばさん。門番に冒険者ギルドのギルド嬢。エリカにゼンに、チャールさんとアボデル村長。
あれ?ネルは知らないんだっけ。
「あ、今のは見なかったことに……」
「出来ません!」
———————————————————————
とうとうネルにも魔法少女服を見られてしまいました。
思い返してみると、まぁまぁな人にバレてますね、ソラの格好。
どこかの「真実はいつも一つ」でお馴染みの名探偵コ○ンみたいですね。
あの少年も実は結構な人にバレてますよ。
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