135 / 681
4章 魔法少女と人神の祠
131話 蓮と人神
しおりを挟む「余はこれからやることがある。用があるなら、さっさと言ってくれ。」
目の先にいる神が、こちらを振り向かずにそう言ってくる。
岩陰に隠れていたはずなんだがな……流石は神と言ったところだ。
感心しながらも無視をする。
俺は蓮。転生させられた元日本人だ。俺は神を恨んでる。こんな地に転生させたことを。
力があるのはありがたいが、金も権力も無い。
どうしてこの俺が、コソコソ冒険者業なんてしなきゃならない。
俺は、元の世界に戻してもらう。
そんな中、神のことを話す他の転生者がいた。俺はそいつにマークをつけておいた。
顔は悪くなかったからな。ついでに1度くらい抱いて、捨てようかとも思う。
俺は、神定魔法の他に3種の魔法を貰った。
1つ、《補助能力》
2つ、《常時能力》
3つ、《主要能力》
《補助能力》は、身体能力や細かな技術方面のスキルだ。
《常時能力》は、名の通り寝ていようが発動されるスキルだ。
《主要能力》は、1番よく使う、攻撃系統のスキルだ。
神定魔法は、特殊だったり高火力過ぎたりする。だから、基本はこの3種で補っている。
もう転生して数ヶ月。永遠にレベルとスキル上げに勤しみ、盗賊業に手を出したりと死ぬ気で生きてきた。
今ここで、神を仕留める。
神定魔法、乞食者。この手で殺した者の力を、そっくりそのまま奪い取ることが出来る。
「人と話すときは、目を合わせた方がいいぞ!」
岩陰から《補助能力》の超跳躍と超加速で飛び出し、奴の懐に入り目を合わせる。
神定魔法、対面殺し。
「効かないよ。余にも、魔眼は付いてる。」
紅い眼がギラギラ輝き、その閃光が俺に向いていると気づくのに、時間はかからなかった。
俺の能力を相殺、いやそれ以上にした。これは脅しもハッタリも通用する相手じゃなさそうだ。
対面殺しは、目を合わせた相手を殺すスキルだ。
俺は、後退しながら殺し方を考える。
スキルも神定魔法も、十分に増やした。都合のいいスキルの、1つや2つあるはずだ。
「其方も転生者かな?さっきも転生者の女の子を相手にしてね、疲れてるんだよ。」
「じゃあ、その内容を全て教えろ。でないと、お前を殺す。」
殺気を思い切り出し、威圧する。少なからず意味はあるはずだ。
俺の絶対聴覚も、神の前で使う真似はしたくない。神の前で使えば、見つかる可能性が高い。だから、あの女(ソラというらしい)と人神の会話は聞けていない。
「へぇ。なんでだい?さっきの転生者の言うことだと、この辺りで余を知っているものは、ある漁師だけだったと聞いたけど……其方はどこで余を?」
「言うと思うか?そこまでお人好しじゃない。」
情報は金と同じだ。知らん奴にポンポン渡せる物じゃねぇんだよ。
「じゃ、力ずくでもやらせてもらうよ。其方には、手加減は必要ないみたいだしね。」
ニヤッと、好戦的な笑みが見えた。
「人間も、変なのが増えたらその分間引かないといけない。主の頂点として、其方を間引く。」
そう言った途端、目の前から人神が消える。
は……?いや、怯むな。《補助能力》思考加速。
でも、もう遅かった。その時には、もう目の前まで来ていた。とてつもない殺意を漏らして、腕が振りかぶられた。
「オートバリア!」
音を立てて割られ、無様にも吹き飛ぶ。
くっ……舐めやがって。
「神の攻撃を、まともに防げると思ったの?こういうのは避けるのが鉄則……って、無理か。」
嘲笑うように煽る。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す!
《主要能力》獄炎鎖、火龍!
「死にやがれ。テメェらのせいで、俺はこんなところに転生させられてんだ。」
「なら、怒りの矛先を間違えないことだ。」
余裕そうにジャンプで後退し、逃げようとする。
逃すかよ。獄炎鎖で封じれば、何とかなる。
四方に獄炎の鎖が射出され、海水はその熱に耐えきれずに蒸発していく。
条件が悪けりゃ、水蒸気爆発でも起きてたんじゃねぇか?
「おっと。あちゃー、捕まえられちゃったなー。」
棒読みで両腕を斜め上に上げる人神を見て、自然と怒りが湧く。
はっ、引っかかった振りか?そんな余裕が、命取りだと分からないなんて、馬鹿だな。
そのまま全てが炎の火龍が、人神に向かって肉薄する。
ボゴボゴと、水の音も聞こえるが無視だ。
「はっ、死ね。」
異世界に来て、だいぶ口調も変わったな。突然そんなことを思う。
「別のことを考えてる暇が、果たして君にあるのかな?」
その声は、鎖で縛られた人神から聞こえたものだった。
おい、どういうことだ。火龍は、火龍を殺して手に入れたものだ。龍ってのは、神同レベルじゃなかったのかよ。
そもそも、その鎖は拷問用の物だ。何平気な顔で俺を見てんだ。
怒りより、戸惑いが勝っていく。
「こうなりゃ、神定魔法しかない。」
小さな声で呟く。
「なに?他の技を見せてくれるのかい?余は楽しみだなー。」
その言葉が、更に俺の力を強くする。
戸惑いより。怒りが勝っていく。
神定魔法、紅蓮電火蒼恒星。眩く燃え上がる、炎の恒星。
手を伸ばすと、小さな塊が現れる。それは、全ての魔力を吸い尽くすようにして大きくなり、炎を纏う。
次第に温度は上がり、青色になっていく。
一気に水が荒れ狂う。いつか、大爆発でも起きるんじゃないかというほどに。
「これで最後だ。跡形もなく散れ。紅蓮電火蒼恒星!!」
蒼き恒星が、瞬きながら進んでいく。そのスピードは、人が対処できるものではない。
相手は拘束された神。いくら神とはいえ、これで確実に死ぬ。
「これは……定期神集会は待ってられない。緊急で開かないと……」
何かブツブツ呟いているが、何も聞き取れない。
刹那。
ドゴオオォォォォォォォンッッ!!!
そんな轟音が海の中でも響き渡る。水の流れが変わり、向こうでは津波が起きるんじゃないかというほどの威力だ。
「これは確実に死んだな。」
そう思うのは必然だ。
目の前には、完全に溶けきって原型が残っていない鎖と、殆ど溶けてなくなった腕があったからだ。
———————————————————————
蓮、ものすごく強いですね。ソラと戦わせたら確実に負けます。
のんびりと異世界ライフを楽しむ女の子と、神を恨んで殺すことだけを考えて生きてきた青年、そこで差が生まれたんでしょうね。
神定魔法の強さ、間違えたかもしれません。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる