上 下
128 / 681
4章 魔法少女と人神の祠

124話 戦闘開始

しおりを挟む

「余は人を統べる神、人神。名をエディレン=メヴィスという。余に恐れ、慄き、そして後悔するといい。」

「私はあなたに転生させられた魔法少女。私をこんな格好にして転生させたこと、詫びてもらうよ!」
意味の分からない言葉が交差し、沈黙が訪れる。

「は?」

「え?」

「「……………………………………………………………………………………………………………………………………」」

 私と相手の目がパッチリと合い、固まる。

 今の私なら言えるけど、神様がこんな簡単に目線合わせてもいいの?
 「目を合わせるだけで即死系チート!」とかも、漫画とかにもあったような気がするけど。

 一体何があったのか、簡潔に説明しよう。


 まず、5分くらい前のところから始めたいと思う。だって、ここに来たの数分前だし。

 私は神様に会えるとルンルンで歩いていた。歩いているうちに、景色が薄く色づいてきた。
 何かと思ったら、目の前には子どもがいた。

 でも、魔力の反応の強さとオーラで、それが人神なんだとすぐに理解する。

 ここまで、3分の出来事だ。あと2分を説明すると……必要無い?知ってた。

 え、これ襲っていいやつ?戦ってオッケーなやつ?

 これが今の心情だ。

————————————

 エディレンは焦っていた。

 あの少女が、予想より早くやってきてしまったからだ。

 今、エディレンの心の中は(ちょ、余の元に辿り着くの早くないか!?)だ。
 そのままの勢いで言ってしまった、自己紹介。それはまた、相手の少女も言っていた。

「余は人の神、人神。名をエディレン=メヴィスという。余に恐れ、慄き、そして後悔するといい。」

「私はあなたに転生させられた魔法少女。私をこんな格好にして転生させたこと、詫びてもらうよ!」

 少し会話が噛み合っていない。

 (え、何この娘。転生?余はこんなメルヘンな格好をさせて、その辺に置いとくような変人じゃない)

 エディレンは疑問に思った。映像で見ても思ったが、目鼻立ちが完全に日本人のそれなのだ。
 透視で姿を除き見ても、見えるのは上着の下のメルヘンチックな服だけだ。

 魔法少女と語る少女と、人神の少年。

 今ここに変なコンビが相対する。

————————————

「あなた、人神?ならやっちゃうよ。」

「余は人神のエディレンだが……そ、其方はなんなのだ?訳をが分からぬ。」
思った通り人神だったみたいだ。思ったより幼い見た目をしていて、困惑している。

 私の頭はハイになっていて、なんだろう。産後ハイって言葉があるように、神様を目の前にテンションが狂ってた。

「問答無用。この憤りは物理的にぶつけさせてもらうよ!」

「……だからなんの話だ!?余は何も……」
言う前に私は、セットしておいたレイタースタートの魔法を連射する。その数、およそ10。

 旋回したレイタースタートの魔法は、バチバチと雷に変化する。

 これはトールの魔法だ。直接では無いので、多少威力は落ちるものの、それ以上に便利だ。

 さっすが私。天才だ。

「新種の魔法……っ!?本当に其方はなんな………話を聞、もういいっ!」
何かキレてるように見えなくも無いけど、私の見間違いとして目を瞑る。

 現実逃避は、私の特技だ。何か言ってるけど、私の耳には聞こえなかった。

 前半の言葉は嘘だ。実際は、トールの音で聞こえなかっただけだ。

「余に魔法が効くと思うのかい?」
トールに手を触れるだけで、雷がかき消される。その光景に、私は目を開いて唖然とした。

「どうやって……?」

「余は人神ぞ?人に出来ることが、余に出来ぬとでも?」
その姿とは裏腹に、嗜虐的な笑みを湛えて言う。

 ……嘘をついてる味……なんてものは感じ取れないけど、嘘をついてる。
 だって、さっきのは魔力に分解しただけ。(魔法動力でチラ見して確認した)

 それなのに、なんで「人に出来ることが~」なんだろう。
 この神、ちょっと抜けてる……?

「余に襲い掛かってきたこと、後悔させてあげよう。勝てると思うなら、かかってくるといい。」
そう言って指をクイっとしてくる。

 ……勝てるんじゃない?この神だったら、なんとか勝てそうな気がする。

 勝てなくとも、認めさせて謝らせてやろう。そして最後は質問攻め。
 これが出来るよう、頑張ろう。

 私は強くステッキを握りしめた。刀はまだ使わない。使い所は考えた方がいい。一撃必殺の技を、簡単には見せられない。

「其方は少し特殊だ。余もほんの少しだけ、力を見せよう。」

「そんなに余裕ぶってたら、隙をつかれてやられちゃうかもね。」
私はブラフをかましてみるも、あんまり効いてる感じがしない。

 ここから、神との戦いが始まる。

 私には大抵の耐性があるから、並の攻撃じゃびくともしない。そう、なら、だ。

 だから神相手には全然機能しないってことだよ!
いくら耐性があろうと、強過ぎる攻撃は防ぎ切れるわけがないんだよ。

 落ち着こう。やらなきゃいけないことを順にやれば、可能性はまだある。
 そうだ、残しておいた特異体質を使おう。

 どんな体質にしようと悩んでたら、人神が大きく飛んで波動のようなものを撃ち込んできた。

 危なっ!……これ、当たってたら死んでたんじゃないの……?ひぃぃ!

「余の前で考え事とは、中々肝の据わった奴だ。」
面白いものを見るような視線で、私を直視する。

 ちょっと、人が考えてる時に攻撃って神としてどうなの?ヒーローが変身してる時に攻撃する悪役なんていないでしょ、それと一緒だよ。
 私は魔法少女だけど。

「鬱陶しいからやめて。」
本音を言うと「死ぬからやめて」だけど、そこは強がっておく。そして、牽制のための万属剣をいくつか生成し、適当に投げておく。

 本題だけど…………思いつかない。神に効きそうな体質……?
 あ、私にぴったりな体質があるじゃん。

 私はニヤリとほくそ笑む。

 世界は主人公に甘い。私は魔法少女だけど、魔法少女が主人公になれないなんて、誰が言ったの?

「ここからは、私のターンだよ。」

 ここに、1つの勝利フラグが立てられた。

————————————

 突然戦闘が始まってしまい、エディレンは混乱する。
 妙に話が噛み合わず、相手の少女は怒りとまではいかずとも、多少の憤りを感じていた。

(どうしてこの娘は余に敵意剥き出しなのだ?)
そんな疑問が絶えない。

 少女が襲ってきてしまって、もう後戻りが出来なくなった。

(仕方ない。ここは人神として、余がこの娘を倒し、勘違いをただそう。)
そう考え、目を開いたところで見たことのない新種の魔法を放たれた。

 魔法の術式だけを飛ばし、魔法の発動を遅らせて放つ技のようだ。

 通常、魔法にはそれぞれスピード差があるが、この魔法の使い方なら、使い手が実力者な場合飛び抜けたスピードになる。

(威力も人間にしては高い……?余はここまでのチートは生み出さないと決めているのだが。)
やはり彼は、この娘を知らない。

 転生者であることは確かだが、エディレンが転生させたものでは無い。

 特殊過ぎるのだ、この少女は。

 短時間しか見ることが出来ていないから、詳しく分かるわけでは無いが、特殊な人物ということは分かる。

(余の攻撃を避けた?)
軽い反撃とはいえ、人間が視認できるギリギリのスピードのはずのだ。それを少女は軽々避けた。

(面白い。これは久々に余も楽しめそうだ。)
好戦的な笑みが浮かぶ。

 どの神が転生させたのかは分からないが、今はそんなことは気にしてられない。
 目の前の少女と戦う。まずそれが今やるべきことだ。

———————————————————————

 一体ソラはどんな特異体質を選んだんでしょう。
魔法少女のソラ、主人公として負けるわけにはいかない。

 そして地味に楽しんでる人神。そして、人神はソラを転生させて無かった!?

 当たったらほぼ即死VS当たってもほぼ無傷
戦いのゴングは今、鳴らされました。
 







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした

カレイ
恋愛
 「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」  それが両親の口癖でした。  ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。  ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。  ですから私決めました!  王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。  

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...