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4章 魔法少女と人神の祠

122話 魔法少女は変人と会う

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 ———日本には、天国と地獄という概念がある。なんでそんな変な言い方なのかは、単に事実である証拠が無いから。
 神や天使、悪魔の概念もあり、色々な生命体を人々は想像により生み出していった。
 いつしか人は、自分で作ったその想像上のキャラクターを崇めるようになる。———

 私はこんな考えをしていた。別にこれを意識しているわけじゃないけど、ほわわんと、そう考えている。

 でも、異世界に転生し、神様の力に触れて考えは変わる。

 少し飛ばして今の状態を見よう。

 というか、なんでこんな真面目な感じに始めたかというと、さっきも言った通り今の状況を見てほしい。

 あら、綺麗な花園。紅茶でも飲みたい。
 あらあら、神秘的な神殿。壮大そうだね。
 あらあらあら、危険そうな生物。逃げたい。

 何を言ってるか分からないって、うん。私も分からない。
 言ってる事も分からないけど、これじゃ理由も分からないって?そんなの現実逃避のために決まってるでしょ!

 あんな考え適当だよ!机上きじょうの空論だよ!

 さっきも例えたけど、天使と悪魔を足して神で割った感じ。

 黒い翼だけど、天使のようにふさふさ。黄色のツノに、紅めの尻尾。
 神みたいなオーラを放ちながら、武器は鎌。禍々しい。

 俺の最強キャラ(厨二病オンリー)とかに出てきそうな殺伐な感じ。

「厨二病って、悪魔の方強くしがちだよね。知らないけど。」
感情の篭ってない、目に光が無い。

 ……ちょっと見てるだけで臓器をかき乱してくるような、そんな不愉快な気分になるね。
 オーラが強い……

「守護します。守護します。守護します。守護します。守護します……………」
同じ言葉を繰り返し、女性のような声で悠然な態度をとる。
 
 姿で分からなかったけど、女の人……なの?

「チョットワカラナイナー。」
私も真似して、落ち着いたカタコトを放つ。

 そうじゃないって?私だって、こうなるとは思ってなかったんだよ!私だって、私だって……

 私の超絶完璧演技に、全米が泣いたところで戦いましょうか。
 ここまで時間を結構使ったし、こんなところでごちゃ混ぜ変人(にも慣れなかった生命体)に時間を食われるわけにはいけない!

 まじまじと鎌女を見てみると、今まで脳が見ることを拒否していたものが見えるようになる。

 この鎌女、見る人全員が視認するのを拒否するようになっている。
 私にはその力は効かないけど。

「それが、どうしたって話だけどね。」
私と同じようにフードを深く被った鎌女は、私を見定めるような視線を向ける。

「常識を逸脱しています。守護します。守護します。守護します。……………」
同じことを淡々と繰り返し、感情の抑揚が掴めない。

 一歩、一歩、鎌女は近づいてくる。カシャン、カシャン、と鎌を引きずる不気味な音が鳴る。

「私、怪しくない。私、安心安全神様印の魔法少女。私、襲っても何も出ない。」
神殿は膜に覆われていて外に出れそうもない。入る専用だったみたいだ。

 一歩下がるたび、一歩近づかれる。より大きい歩幅で。

「あのー、この人ヤっちゃっていい?言っておくけど正当防衛だからね!?」

「守護します。守護します。守護します。………」

 いつまでそんなこと言ってるの?ちょっと、静かにしてくれない?

 魔法動力で見た感じ、この鎌女は暗殺に特化してるみたいだ。

「こんな風にねっ!……ッ!」
ステッキから刀を取り出し、逆手で持って後ろからの鎌を防ぐ。

 突然後ろに出現して、一瞬にして消える。これがこの鎌女の能力だと思う。
 分かった理由?体に流れる魔力が薄過ぎる。あんなんじゃ、私のパンチで簡単に崩れちゃう程弱い。

 こんな守り神みたいなのが、弱過ぎるなんておかしいから、暗殺系だと思っただけ。

「私だって直前にしか分からない。威力も凄いから、防ぎ切るのがやっと。……どう一撃を入れよう。」
防御力が低過ぎるが故の一撃必殺、攻撃力が高過ぎるが故の一撃必殺、2つの一撃が交差する。

 ギィィンッ!………ギィィンッ!ギンッ!ギィィィィィッ…………ガギィンッ!

 刀と鎌が何度もぶつかり合う。私が振り向けば、そこには鎌女がいる。
 鎌女が鎌を振るえば、背後に回られる。

 少し広い神殿の中は、もう闘技場のようになっている。

「このままじゃ埒が開かない!一旦戦略的撤退。」
鎌をギィンッ!と弾き、その勢いで後退する。

 さっきから戦闘続きで、魔力はあっても精神力が保たない。
 戦いで使うのは、魔力と体力だけじゃないんだから。精神面のケアも必要よ、戦闘では。

「守護します。守護します。守護しまぁ、、、…」
「うるさぁい!なんか言えば気がすむの、その言葉!要らないから!1回言えば分かるから!黙ってて!」

 戦闘続きのストレスは、こんな感じで発散しよう。私の場合は独自合金を投げつけたよ。

「守護、し、ま、……す。……………………」
機械が壊れるかのように、プシューと音が鳴り、膝から崩れ落ちる。

「・・・へ?」
そんな情けない声が大きく漏れ、目が点になってパチクリと瞬きする。

 ………………………………え、待て待て待て待て待て待てーい!なんでやねん!いや、なんでやねん!

 エセ関西弁である。

「え?は?ん?」
いきなり鎌女が倒れたことで、戸惑いを隠せない。

「……あ、投げた。当たった……」
そこで私は、鎌女の脆さと合金が当たったことを思い出す。

「……納得できない。手応えがなさ過ぎるよ。折角いい感じの戦いだったのに、私のストレス発散攻撃に当たって、倒れるなんて。」

 というか、本当にこの鎌女が人を襲ってたの?……いや、普通に襲えるだけの力はあったね。あの攻撃力なら、私でも当たったら血がプシャーするよ。

 この世界で、ほとんど血が出たことの無い私が保証する。

 この状況に呆然と立ち尽くすこと約5分。戦闘時間を含めれば10分も経っていない。

 こんな短い間に、意味不明なことが何回も起こるあたり、神様パワーを感じる。

「うわっ……え、キモっ。」
顔から不愉快な気持ちがダダ漏れる。「JKに言われたら傷つく言葉」暫定1位、の言葉がつい出てくる。

 仕方ないから描写すると、鎌女がドロドロに溶けて魔力塊になって、形がぐにゃぐにゃ変形して空間を切り取ったような通路を作っていく。

「これだから描写したく無かったのに……頭の中に、記憶が戻ってきて……」
顔色が少し悪くなった。

 そして私は思った。
 これ、絶対蘇生される系のキャラだ。

———————————————————————

 はい、次もまた戦闘です。戦闘続きで参っちゃいますね。
 それはそれで尺が稼げるので問題ありませんが、敵が多い問題が発生してます。




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