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4章 魔法少女と人神の祠
121話 魔法少女は再認識する
しおりを挟む「あ゛ぁ~~、極楽ー。」
アニメとかだったら、かっぽーんっみたいな効果音が鳴りそうだなぁ、と思いながら目を細めて温泉に浸かる。
こんな変なところにある温泉に、変な魔法少女が警戒心0で入ってるって……
「側から見たらどう思われるんだろうね。まっ、気持ちいいんだから大丈夫だ。」
逆にここで私が負けることはまず無い。理由?レールガンをいくらでも撃てからに決まってるじゃん。
「手袋はめて、ミョルスカイを持って、このままドーン、と。」
やることは無い、というのは言うまでもないことだ。
うん、やっぱり強行突破が最強だ。理不尽には理不尽が効果的ってことが、よく分かったね。
あ゛~~きもちぃ………
「……………………………………………………はぁ……」
体の汚れが溶かされて、最近ずっと満タンになっていなかった魔力が、どんどん満たされていく。
あー、魔力がマックスになるって、めっちゃいい。凄くいい。とってもいい。
語彙力も一緒に溶け出てる気がするけど……このとろけた脳みそでは思考が出来ない。
「もう少しー、あと1時間ー。」
溶けきった脳みそ、乱れきった髪の毛、とろけきった顔。モゴモゴと口を動かし、意味不明な供述をする。
私は犯人じゃないぞー。
「ま、冗談はここまでにしてそろそろ出ようかな。」
エアリスリップ(水無いバージョン)を私の周りに出現させ、水気を綺麗に飛ばしていく。
あばばばばばばばば………さっ、寒い……
調整……ミスった……はぁ、はぁ、はぁ………
「………魔力も回復したし、もう行こう。」
くしゅん、とくしゃみをして服を着る。
魔法少女服に慣れてしまった私は、もう手遅れなのかもしれない。
「サッパリしたところで、壁の向こう、行っちゃいますか。」
あっち側にゴールがあると信じて、疑わないようにする。疑ってしまったら、レールガンまで撃った意味が無くなる。
そう思って穴の空いた壁を目指して歩く。
いくつか先を超えた時、数枚の壁が重なったところがあり、その1つ先の壁に微かに光が差し込んでるのが見えた。
「あれ?レールガンでも壊れて、ない……?いやいや、あの壁の材質だったら、レールガンで壊れないなんておかしい。」
コンコン、と壁を叩いてみても、別に違和感は無い。意味が分からず考えあぐねる。
1発ステッキでぶっ叩いてやれば壊れるかな?
欠けて、光が差し込んでいる部分に向かって「ていやー」とステッキを叩きつけた。
すると、ドガッと鈍い音が鳴る。
「ここから先はボスの部屋ですって?そのくらい硬いよ、この壁。」
今の私ならダイヤモンドでも潰せると思ってたけど、「私にも壊せないものがあったなんて」と驚く。
……よく考えよう、あともう少しで通れるようになる。うん、壊せないわけでは無いから。
ツルハシのようにステッキを持ち、何度か叩いてようやく壊れた。
「ふー。こ、壊せた………い、いや、よ、余裕だったし?」
言い訳をするように強がり、空いた壁を見上げる。(片膝を床についてるためだ)
「え。」
それが、光の先を見た私の言葉だった。
もう1度確認しよう。ここは海、それも深い海底。そこに大きく構えられた祠の中、それが今私のいる場所だ。
本来、光なんてあるはずの無い場所。
「なに、これ?えっ……?」
目の前の光景に戸惑い、自分の目を疑う。何度も目を擦り、その度に目が丸くなる。
そこは、光の壁で覆われた場所。燦々と照りつける太陽と、一面に咲き誇る草花。1番奥には物々しい雰囲気を放つ遺物のようなものが1つ。
その途上には、優雅に紅茶でも飲めそうな日傘付きのテーブルがあった。
短く言い表すなら、花園と、神殿だ。
「なんか、最後って感じだ。」
あの神殿に人神がいるのかと思うと、少し緊張気味になる。
お、お、落ち着こう。まず、紅茶でも飲んで落ち着こう。
何故かポツンと置かれたテーブルにあったティーセットを掴み、カップに注ぐ。
手が震えてこぼれまくるけど、全く気にしない。口に運ぶ頃には、もうほとんどなくなってる。
「……過度に怯える心配は無い。私は、普段の私でやればいい。」
両頬をぺしんっ、と叩き、顔を引き締める。
ふぅー、はぁー。落ち着け、私。いつも通りの私を取り戻せ。神様相手だからって緊張を隠せなかったら、呆れられちゃう。
「この神殿、何も無いなぁ。」
軽く見た感じ、何も無くて首を傾げたけど、実際に見ても何もない。あるのはなんか凄そうな神殿本体のみ。
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お電話番号は………へぶっ……誰かに殴られた気が……?気のせい?
「それにしても何もない。何が目的で作られたんだろう?あぁ人神のためか。」
疑問を自己解決していくスタイルを決め込み、ゆっくり目を閉じる。
最後の疑問。本当に、ここに人神がいるのかを魔法動力で調べる。
「魔力の流れが荒い。ひとつひとつが濃いし、正解かも。」
道中色々あったけど、ここに人神が……頑張った甲斐があったね。
何か変わるかもと思い、神殿に足を踏み入れる。透明な膜を破ったような感覚があり、振り返る。
「……気のせいじゃないよね。」
さすがの私も、そこまで鈍感では無い。眉を顰めて辺りを見回す。
何がある、何が無い?どこに違和感があって、どんなふうに感じる?
こんな場所、突然現れたんだとしたら都合が良すぎる。元は地上にあって、それを持ってきたと考えるべきだ。
そして、何も無い。そんな神殿を不審に思った。人神なんて大層な神、なにか祀るための絵や文字、それと一緒に高価なものも贈られるはずだ。
誰も来られないから?いいや、違う。
「こんなところに祠があるのに、それにみんな気づかない。隠蔽と言っても意識を逸らさせるだけで、あそこを歩けば落っこちる。」
最初から違和感をかけ集め、1つの推論を出そうとする。
知ってるのに、行かない。知ってるのに、調査はされない。行こうと思えば普通に行ける。特殊な魔法でも使えば、なんとかなると思う。
攻撃魔法が弱いだけで、普通に軽い支援魔法なら結構存在してるし。
噂があるってことは、誰かは行ったはず。誰かは帰ってきたはず。
「人神を、避けている?」
自分で出た推測に、自分で首を傾げる。
アトさんみたいに、知ってる人もいる。人神なんて神を、他者に伝えないのはおかしすぎる。
なんで避ける必要があるの?人神を。人間が避けること。恐怖、不安、絶望、悲しみ……死?
「太陽に背き、月に従う獣。」
突然そんなワードが思い浮かび、その獣の末路を思い出す。
私の、ステッキの中。死体となってる。
太陽が表。月が裏。表裏一体の関係?
表に背くと、獣のような未来が訪れる。すなわち死。
「人々は死を恐れ、間接的に人神を避ける。人神を、恐ろしいと思った人物がいる。」
ハッとしたように前を向き、目を見開く。
我ながら酷い暴論だとは思うけど、今回はそんな解釈も掠ってそう。
同じ人間でも、表から外れる者は排除される。私に殺された、獣のように。
目の前には、死神と天使が混じり合ったような、巨鎌を握った者がいた。
———————————————————————
ソラさんの上着をリニューアルしようかと思っている今日この頃。
ソラさんの想像、スケールデカすぎます。本当に掠ってるだけですよ、ソラさんの考え。
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