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3章 魔法少女と水の都

98話  誕生会当日 1

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 そんな感じでまた翌日。

 最近テンポ良く進んでする気がするけど、実際何も無いんだから仕方ない。

 今日はハリアの誕生会、流石に子供だからか沢山貴族が来るわけじゃないけど、来ないわけでもない。

 ネルとロアは、この前の誕生会出席してるから今回で2回目だ。

 ロアは、この短い間でこんなに濃い時間を過ごして、気疲れしてないかと不安になるけど、本人にはそんな様子は無いし、杞憂ということにしよう。

「ちょ、これほんとに着なきゃダメ?着ないって選択肢は無い?」
「ありません、着てください。」
「……あ、はい。」
私は手に握られているドレスを見て、ため息を吐く。

 白と青を基調とした、まぁ膝より下くらいまでの長さのドレスを着せられそうになってる……というより、着ないとダメになった。

 ロアは前回でもう慣れたのか、抵抗無くドレスを着ていた。

「ロアは抵抗無いの?ほんとに大丈夫なの?」
「何がですか?多少スースーしますが、慣れますよ。」

「慣れ、るの……うん。分かった。ロアが言うなら、まぁ。」
本当に!仕方がないから!私はドレスに体を通し、カーテンを開く。

 うぅ、これはこれで魔法少女服と違った恥ずかしさが……上着欲しいけど、流石に着て行くわけにはいかないし。

「似合っていますよ、ソラお姉ちゃん。とっても可愛いです!」

「ソラさん忘れ物ですよっ、と。」
「えっ、ちょ……」
ネルが、ジャンプで花の髪飾りをちょんと付けてくる。

「ちょっとネル?なにこれ。」
頭を指を差して、ネルの方をじっと見つめる。

「髪飾りですが?」
「うん、知ってる。」

 まぁいいや。もう髪飾りなんてあっても無くても変わんない。

「よし、早く行こう?」
ステッキが無いとなにも出来ない、無能な私はステッキを回収し、ドレスになんて挿せないので手に握る。

「分かりました。ソラさんがドレスを着るのを渋っていたので、時間がありません。」
「それはごめんって。」
「怒っていませんよー。」
楽しそうにロアの手を引き、私はそれについていく。初めてきた服だからか、めっちゃ動きにくかった。

 ねぇネル。それ嘘だよね?怒ってるよね、それ。

 私達が会場に着いた時には、もう人が集まっていて、一言謝ってから席に着く。

 少し経つと、フィシアさんともう1人男性(多分お父さん)と一緒にハリアが出てくる。
 みんな花吹雪みたいなのを降らせて、ハリアは喜んで手を振る。

 横を見ると、ネルも楽しそうにハリアに手を振っていたので私もそうすることにした。

「皆さん、今日は我が息子の誕生会に出席いただき、感謝申し上げます。」
フィシアさんが先陣を切り、張った声を出す。

「連続となってしまったことを申し訳なく思いますが、楽しむことが出来たなら幸いです。」
お父さんらしき人も、フィシアさんに続いて挨拶を済ませた。

 それからあともう一言くらいあったけど、私は聞いてなかった。

「2日ぶりね、ネル、ロア。」
何かスイーツでも取り分けようかと考えて立ち上がると、そんな艶やかな声が聞こえてくる。

 燃え上がるような火をイメージさせる、赤色のドレスに、ワインレッドって言うのかな?のショールみたいなのを付けている。

「ライナ様……?おっ、お久しぶりです!」

「ライナ様……あぁ、誕生会の時に良くしてくれたっていう女の子。」

 この人のことだったんだね。……にしても、この世界の女の人は、どうしてこんなに可愛いんだろう。

 出るところは出てるし、引っこんでるところは引っこんでる。引き締まるところは引き締まってて、完璧な美ボディとはこのことか?ってぐらいのものだ。

 私?私は……出るところも、引っこんでるところも、全部引っこんでるよ。

「貴方とは初めましてね。わたしはライナ。気軽にライナと呼んでもらえれば結構ですよ。」

「私は空。私のことは普通に呼び捨てでいいよ。」
「ソラね。覚えておくわ。」

 それからは、ハリアのところに行って、みんなで「誕生日おめでとう」と祝いの言葉を言って、プレゼントを渡そうとしたけどそれはその時間があるということなのでやめた。

 席に戻ると、私は美味しそうなのをたくさん皿に取って、1人もしゃもしゃ頬張っていた。

 ロアは3人でミニ女子会みたいなのが開かれていて、こっそり耳を澄まして聞き耳を立てた。

「ソラは冒険者なのね。」
「凄いんですよ、ソラさんは。この間も、強そうな魔物を1人で倒していったんですから。」

「私も、初めて会った時は魔物に襲われていて、ソラお姉ちゃんが助けてくれたんです。」

「ランクはどれくらいなのかしら。それだけの強さがあれば、有名でしょうね。冒険者も何かと大変そうね。」
と、私の話題で大盛り上がりを見せていた。

 うん、私のおかげで話が盛り上がってるんだったら、もうそれでいいよ。
 私のプライバシーが侵害されるだけで、何も被害は無いし……

 ロア達の幸せな時間>>私のプライバシー

 これを見て分かる通り、優先すべきは完全にロア達の幸せなのだ。

 私は甘いスイーツでそのことを忘れようとする。

「ソラさんもお話ししましょうよ。食事するのもいいですが、一緒の方が楽しいですし。」
ネルは輝く笑顔を私に向け、太陽の方向に歩くアリのように3人の輪に入る。

 誕生会も折り返しになってきたし、そろそろ私もお話に花を咲かせましょうか。

 最新で面白そうな話題といえば、水竜のお話しかないので私は話すことにした。

 もちろん、精霊術の話もしたよ。

 私と共に犠牲になろう、ルリィ。

 3人の反応はまちまちで、「そんな凄い魔物がいるんですね」だったり、「そんな未知な技を持つ冒険者がこの街に……」とか、「いつも通りですね、ソラお姉ちゃんは」と言われた。

 冒険者カードのことは、内緒にしておいた。水竜の話だったら、強さなんて戦った人にしか分からない。
 でも、カードの場合はその強さが真実のものになってしまう。

 貴族様のライナには、何かこの特殊なカードについて知ってるかもしれないから、言うのはやめた。

 そんな話をしてるうちに、時間が経ってプレゼントの時間になったようで、私達はそれぞれ目配せをしてお守りを握る。

 実はまだあれ、ほんとの完成品じゃないんだよね。

 まぁ、それは最後のお楽しみってことで。

———————————————————————

 誕生会続きで、誕生日ネタが尽きてきた今日この頃の私です。
 しかも、私の話調整のミスで81.5話とか、前編後編で無理矢理同じ話数にしたりと、いろいろすみませんでした。










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