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3章 魔法少女と水の都

96話  魔法少女はランクを上げられる

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 なんとか連行されることは無く、私は鋭い視線の中で縮こまる。

 私は一応確認のため、目の前の赤黒い物体を見つめ、観察眼で見てみる。

 水竜の心臓(欠片)

水竜の心臓は様々な用途に使用される。多くの魔力が込められていて、欠片だとしても大金が動く。

 うんうん、うん。うん、うんうんうん。
水竜さんが小声で言ってたのって、まさかこれ?

 水竜さん?なんで自分の心臓渡しちゃうの?えっ、ん?言っちゃなんだけど、馬鹿なの?

「取り敢えず金を用意しろ。ありったけのだ。」
隣のお付きの人みたいな人に、早口気味になって言う。

 ん?なんかやばそうじゃない?

「ソラちゃん、ルリィも予想外だったよ。なんで心臓なんて持ってるの?」
「あ、えーっと……ナンデデショウカネ?」

「ソラちゃん、片言になってるよ。」
「ソ、ソンナコトナイケド……」
私は汗をタラタラと流して、視線を横にずらす。

 すると、疑うようなディッシュの視線が、私の目に入る。
 焦って右を向くと、ルリィの視線が突き刺さる。
前を向くと、目を細めてゴゴゴッと睨みを効かされていた。

「ソラ君、僕の名はティレット。ここの冒険者ギルドのギルドマスターだ。さぁ、聞かせてもらおう。」

「あ、……はい……」
私は仕方なく、水竜さんの言っていた内容を一切喋らないようにして、起こったことを話した。

 流石に、あの圧に耐えられるほど私の心は強く無い。水竜なんかより、よっぽど怖い。
 竜は倒せるけど、人間は倒せないからね。

「そうか。……水竜がいなくなったのなら、それでいい。」

 あ、いいんだ。そこは追いかけて倒してこい、とでも言われると思ってたんだけど。

「金は今用意している。ギルドから出せる金は出すが、足りんと思う。その分はまた後日、ギルドのカードに送る。」
「はい、分かりました。」
私は適当に返事をして、早くこの場から逃げようとする。

 早く帰りたーい。ご飯食べてふかふかベットにダイブして、ぐっすり眠りたーい!
 ロアとゆっくり話したーい、お風呂にゆっくり浸かりたい!

「じゃあ、ランクアップに行こう。」
「はい?ランク、アップ?」
「ランクアップだ。」

 じゃあってなに?じゃあじゃないでしょ。
あと、そんなランク上げちゃったら、私すぐにランク上がりきっちゃうよ。

「さぁ、カードを出してくれ。ランクアップの手続きをしよう。」

「……まぁ。」
これ以上駄々をこねてもどうにもならないので、仕方なくギルドカード渡す。

「……⁉︎これは……」
何故かギルドカードを見て、目を見開いた。

 はぁ、説明しないとダメか。

「私は知りませんよ。だって、ギルマスが勝手につけたんですから。私に文句言ったって、知りませんからね?」

「いや、別にそれは問題ではないが……このままだとランクはAまで引き上げられるが……?」
「は?」
ランクAというワードに、私は大きく肩を跳ね上げさせる。

 さっきから驚いてばっかだけど、最後に1回驚かせて。心の声でもいいから。

 ふぅー、はぁー……
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???……ふぅ。

「特殊な冒険者に対し、このような処置をすることはごく稀にあるが……それでも対処しきれないとは……」
私を呆れるような目で、私とカードを交互に見る。

「もう1段階引き上げよう。」
そう言って、ルリィ達をギルドから出して(もう報告が終わったから依頼金を渡しておしまいらしい)私を別室で待たされた。

「ほら、ランクを上げた。」
そう言って渡してきたのは、ランクがBに上がったギルドカードだった。

 よかった。流石にそんなにポンポンとランクは上がらないよね。
 ……いや、上がってた。1つランク、上がってる。

「これ、何か変わったんですか?」
「あぁ勿論。」
そう言って、変更内容を教えてくれる。

 まず、ランクアップに対する依頼難易度の引き上げ。
 私のランク、Bの場合はA以上じゃないと意味が無くなり、こなす数も何倍にも増やしたらしい。

 そして、この前はTを追加されたけど、Uも追加されて、更にSS、SSSとSの上まで追加したらしい。

 そしてこの内容は、国王にも知らされることになると言っていた。

 はい。うん、うん。よく、分かった。大変なことになったよ。
 何回ギルドカードを改変したら気が済むの?

 なに?私だけこんな特別なカードで、特別な待遇受けたりするわけ?

 ……、、、そう考えると、なかなかいい気もしなくもないな。

「それと鱗分の金と、依頼金だ。」
さっき言った通り、心臓分はあとでカードに入れておく、とお金の入った布袋をジャリッと机に置く。

 効果音がお金の音じゃないのは、どういうことなんだろうね。

 私は布袋を受け取り、その重みに顔を顰めてステッキにしまう。

「水竜って、高いんだね。」
私の口からは、そんなありふれた言葉しか出てこなかった。

 あぁ、そういえば誕生会用のプレゼントとか必要じゃん。でも、もう日も暮れてきたし……

「明日でいっか。明日のことは、明日考えよう。」
今日のことも、出来れば明日考えよう、と私はそそくさとお家(フィシアさんの屋敷だけど)に帰ることにする。

 家に帰ると、誕生会終わりと思しきロア達の姿があり、ロアは綺麗なドレスを着ていた。

 可愛い……やっぱり可愛いロアに綺麗なドレスを着せれば、最強になるんだね。

 美味しいカレーに、美味しいカツを乗せたら美味しいように、いいものといいものを合わせれば最高になるものなんだね。

 なんか語彙力が喪失してるような気がするけど、そんなものは気のせいと、私はロアを愛でたのはまた別の話ということで。

———————————————————————

 またまたギルドカードに細工されたソラさん、そろそろ本格的に化物染みてきたソラさんに立ち向かう、次なる敵は?
 次に襲いくる敵は、ソラさんにも対処ができないような本物の化け物で……?

 [次回]
 ソラ、死す。
          デュ○ルスタンバイ!

嘘です、すみません。死にませんし、デ○エルもスタンバイしません。












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