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3章 魔法少女と水の都

93話  魔法少女はギルドに説明に行く

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 水竜さんが見えなくなって、私はホッと息を吐く。
 ようやく水竜の件が一件落着?して、私は横に寝かせておいたルリィの元に行って、隣に座る。

「さすがの私も、今回は魔力使いすぎたね……」
はぁー、と大きめのため息を吐いてルリィを見る。

 魔力を送ってもいいけどさ、もうすっからかんなんだよね。
 私だって送りたい気持ちは山々なんだけどさぁ、魔力送るのめんどい……いや、物理的に無理だし。

「起きてー、ルリィー。ねぇー、おーい。」
私はぐっすり寝息を立てて寝てるルリィを起こそうと、トントン叩きながら声をかける。

 あの弱2人組の居場所も知らないし、ルリィに起きてもらわないとね、依頼達成も出来ないしね。

 ……依頼、達成?なんで私は依頼を受けてるの?
面白そうだったから……?なんで私はここの街いる?誕生会……そうだ!誕生会だっ。

 そうだ、そうだよ。明後日誕生会じゃん……忘れてた、忘れてたよ。
 って、なら尚更早く起きてもらわないと、えっこれ起きてくれるよね。

「起きてー!ねぇ、起きて!」
いくら声をかけても、ルリィには起きる気配が無い。

 この幸せそうに寝てる顔見てると、無性にイラついてくるんだよね。
 このイラつきは、どうやって抑えればいいと思う?

 私は少しだけど回復した体を起こし、寝てるルリィも立たせた。

 ちょっと、口調が変わるかもしれないけど……

「そろそろ起きてよ‼︎ルリィ‼︎」
ステッキから、指空き手袋の方に魔力を移してルリィの腹に張り手をかました。

 ごめんね、ルリィ。ちょっと我慢して。だいぶ、いや結構痛いと思うから。

 私の手は素早い動きで、ルリィのお腹辺りにドゴォーッ!と魔力が纏わりつくように流れる。

「ゥブゥッォ……ッ!」
血は出てないものの、(そもそも出るような攻撃はしてないからね。魔力をあげただけ)なんか凄い声をあげた。

 だ、大丈夫?えっ、死んでないよね?

「ソラ、ちゃん……なに、ゴフッ……」

「あ、ごめん。やりすぎた。」
その場でヒールで回復させ、座らせた。

 血は出てないけど、唾液が口元に垂れていた。私の必殺張り手、強すぎちゃったかな?

 それから私達は、2人で話し合いをする。

「ソラちゃん酷いよー。ルリィを殴るなんて。」
「殴ってないよ、張り手だよ。」

「おんなじじゃーん!」
私は至極真っ当な笑みを浮かべ、ルリィの言葉をスルーする。

「それはそうとして、水竜は?見当たらないけど……」

「ん?ボッコボコにしたら逃げられた。」
「えー?」
本当のことは言えないので、黙っとくことにする。

 だって水竜さんも、私に話す時少し悩んでたし、私が教えていいことじゃないと思う。
 私がすべきことは、この場をうまく収めて誕生会に出席する……ってか私、行かなきゃいけないの?

 あぁぁぁぁぁもう!頭がぐっちゃぐちゃ。

 そのあとは……そうだ、人神。人神探そう。だってさ、ちょうどここ海。水竜とかいちゃう海な訳。
 その海底に祠がある可能性は捨てきれない。

 ……細かいことは後で考えよう。そうしよう。

「まぁ、水竜の素材があったら、街一つが動きかねないしー、ルリィは逃げてくれてよかったと思うよー。」
ちなみに龍は国が動くよっ、と人差し指を立ててウインクする。

 国が動くよっ、じゃないよ!そんな軽々しく言わないで!

 そういえば、そもそも今回の水竜、倒した判定に入るのかな?苦労したから、欲しいだけど。レベルアップしたいよ?

 神様ー教えてー。…………………教えてくれませんか、そうですか。

 なら私は、ステータスを鑑定でもしてやりますよ。

 ステータス画面を開き、私は画面を見つめる。
はいはい、何も起こりませんね。

「何してるの、ソラちゃん。」
「なんでも。」
そのまま、あの弱2人組を回収してギルドに行く。


「ったく、何しやがんだよほんとに。」
「そうですよ、ルリィ。計画性を持ってください。」

「邪魔だから退いてもらっただけだよー。」
「その割には、お前も退場してたんだろ?」

「そっ、それは…ソラちゃんが規格外なだけ!」
ルリィが叫ぶように反論し、ディッシュと睨み合ってる。

 ねぇ、ルリィ。私を免罪符に使わないでもらえる?

「にしても、よく1人で水竜を相手に出来たな。」
「あははー、ワタシハチョットトクベツデー。」

「……まぁいい。」
ギルドに入るディッシュに続いて、私達もギルドに入った。

 今回は水竜討伐ということで、めちゃくちゃに大事らしいので、ギルマス直々に話し合いの席に座るということで、会議室のような場所に案内される。

 大きめの机に、椅子が8個。4・4で分かれていて、私達は出入り口側。そして私とルリィが正面。
その両脇に、ディッシュとベルクさん。

 目の前には、目を細めた優しそうな雰囲気を持ってる男性、ルリィの前には少しぽちゃっとした感じのこれまた男性。その両脇に、それぞれの部下らしき人が座っている。

「集まったようだね。本題に入ろうか。水竜の件、どうなったんだい?」
その細い目をさらに細くし、私達を睨むように見る。

 ひぃ、私は無罪だ!いや、無実だ!この話し合いの場から、一刻も早く抜け出したい!

 この人、なんでこんなに殺気みたいなの出してるの?コミュ力以前の問題じゃん。

「水竜は、討伐までとはいかなかったですけど、遠くへ逃すことは出来ました。ね、ソラちゃん。」
腐ってもリーダー、こういう対応も慣れてるのか、軽くいなして私に話を振る。

 やめてー、やめてよ。私何も言えないよ?

「あ、うん。そ、そう、だね。」
私がかみかみで答えると、

「ルリィ君。何故その少女に話を振るんだい?」
ぽっちゃり男性が、ルリィを試すように聞く。

「今回水竜討伐に1番貢献したのは、こちらのソラちゃんだからです。この2人は、ソラちゃんの邪魔しかしていませんよ?」

「おいっルリィ!」
「訂正してもらいたい!」

「事実を言ったまでじゃーん?」

「それは、本当のことかい?」
「はい、1人でもランクAの冒険者の言うことが、信じられません?」
「いや、信じよう。」
鋭く細めた目を緩め、優しそうに微笑んだ。

 えっ、ランクA?高くない?

「なので、ソラちゃんの実力は私以上。推定ですが認められさえすれば、Sランクにはなれるでしょう。」

「えっ、はっ?うん?何言ってるの、ルリィ?」
「本当のこと言ってるだけだよ?」
さっきの仕返しと言わんばかりに、惚けた笑顔で笑ってる。

「あとソラちゃん。討伐の証拠、あるでしょ?」
「え?なんのこと?」
「鱗だよ、鱗。それがあれば、十分なお金も入るし、しかも討伐認定もされるよ?」
ルリィは私の耳元で、こう説明した。

 竜の討伐の判定基準はこうだ。

 1つはもちろん、核石を持ち帰る。
 2つ目は、竜の死体を持ち帰る。
 3つ目は、一定量以上の鱗を持ち帰る。

 竜は再生力が強いらしく、一部じゃ討伐とはならないらしい。
 そして、鱗を生きたまま剥ぎ取るのは、竜を殺すよりも難しいらしい。

 それは私もなんとなく分かる気がする。あんな力の塊みたいなやつ、生きたまま取ろうとなんて思えない。
 死ぬ気でぶった斬ることが出来ても、綺麗に取るのは無理だと思う。

「だから、鱗出したら?」
「あっ、うん。」
言われるがまま、戦いの最中に手に入れた鱗を出す。

 まぁ、魔力の模造品なんだけどね。効果は一緒だし、あのままだったら倒せてた。
 ん?なんかステッキに入ってる。

 それも一緒に取り出すと、鱗の中心に赤黒くてどくん、どくん、と動くるものがある。

「……ソラと言ったかい?来てもらえるかな。」

「私は何もしてなーーい‼︎」

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 何故か鱗に混じって見つかった、ドクドクと動く赤黒い物体。一体なんの臓器なんでしょう。
 真相は、あと2、3話あと。











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