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3章 魔法少女と水の都
88話 魔法少女は水竜と戦う 2
しおりを挟む水竜だよね?どうして空飛んじゃってるの⁉︎ちゃんと水竜なら水竜らしく、大人しく水の中にいてよ!
私は全力でそう文句を叫ぼうとしたけど、意味は無いと口を閉じる。
そう叫びたくなるのも無理はない。
だって、水の中でも強かったあの水竜が、魔力を纏って空を飛んでるんだよ?
その魔力に当てられた弱2人組は、気絶するように倒れてる。まぁ生きてはいるし、放っておこう。
「ルリィは、この弱2人組を安全なとこに移動させるから、水竜は頼んだよー。」
「『頼んだよー』じゃないよ!頼まないで!」
「グァァァァァァ゛ァ゛」
私のその声をかき消すように、水竜の方向が轟く。
無慈悲っ、なんて無慈悲なの!待ってくれたっていいじゃん。
そんな思いも虚しく、水竜は私に視線を向けてギロリと血走った目を向けた。
瘴気のような魔力を纏った水竜は、まるで何かに操られてるみたいだった。
「水斬と水流の耐性を持ってるからって、水竜の攻撃は防げませんよ!流石にそこまでの性能は、この服に無いよ!」
こうなったら、隠し技その1を使おう。
隠し技その1、特異体質!
特異体質は、一時的に体質を変化させる力がある。流石に「水系の攻撃を無効」とかは無理だよ。それもう体質関係無くなってるし。
ここで付ける体質は、回避体質!ありとあらゆるものから回避しやすくなるこの体質は、今の状況にとって、神がかった体質だ。
時間にして25分という、短い間だけどね。それでも、なんとかなる可能性は高くなる。
「ルリィが来るまでは、軽く足止めくらいにしておこう。トール‼︎」
いくつもの電撃がステッキから溢れ出す。
私は雷無効、神雷耐性のお陰でこの世界の雷でダメージを負う事はまず無い。
トールを選んだのは、それが1番効くと思ったからだ。ファイボルトでも良かったけど、あれは加減が効きにくい。
周りに被害が出る可能性も、高くなっちゃうしね。
「グギャァァァァァ!!」
方向と共に体をうねらせ、掻い潜っていく。
……っ!理解してる?魔法動力の能力を使って、当たると同時に爆散するようにしてたのを。
しかも、それは魔法の本質みたいなのを読んだって事だよね?
「待って!あのまま行ったら、街に!」
私はすぐに魔法を解除した。
魔導法に繋いでおかなかったら、ヤバいことになってたね。……それにしても。
「どんな知能してるの……」
「この水竜は特別だしね。」
「ルリィ⁉︎」
いつの間にか、宙に浮いているはずの私の隣にいたルリィに驚きを隠せない。
「ルリィ調べたの。あの弱々が調べずに、自分達の知識だけで挑もうとしてたから、充分に情報を集めたの。」
ルリィは水竜から視線を外さず、力強く言う。
ルリィ、いつもはあんなにケロッとしてるけど、いざとなったらこんなに頼りになるんだね。
だから、あの2人はルリィについて行ってるのかな?
もしかして、今回遅れたのって……?
「それは流石に考え過ぎてかな?」
聞こえないくらい小さい声で、そう呟く。
「この水竜は、進化途中の水龍に近い状態なの。龍っていうのは、神に近いって言われる生物だから、弱2人組は邪魔になると思って離脱させたの。」
至って真面目に、今回の一件について説明を始めた。
水龍って、よく水竜の進化版とかで聞くけど、それかな?
まぁ流石に、空を飛んで私の攻撃が全然効かない水竜なんていたら、水龍なんて勝てっこ無い。
「ここからはルリィも頑張るよ!精霊術の本気ってやつ、見せちゃうよー。」
「それは頼もしいね。」
腕を前に伸ばすルリィを見て、私もステッキを握りしめる。
ここまで来たら、手加減はいらない。
「この上着、やっぱり無い方がいいね。」
上着のボタンを外して脱ぎ捨て……るのは流石に憚られるのでステッキに収納した。
「ソラちゃん、意外と可愛いかっこしてるんだね。」
「それ、ルリィにだけは言われたく無いな。」
ルリィのモコモコな服を見て言う。
互いに似たり寄ったりだね。魔法と精霊術。可愛い服、そして性能も十二分にいい。
「よそ見しなーい。」
水竜から視線を一つも動かさず、軽くいなされた。
「グギャァァァァァァ゛ァ゛」
「ほら、ルリィ。こんな大変化を遂げたってのに無視されるから、水竜さん怒っちゃってるよ。」
いつにも増して轟音度が高い。ちょっと黙っててほしい。
チートな私も、よくよく魔法を見てみると攻撃性能が高いものが少ない。
それもそうだ。簡単にそんな魔法を使えたらチートなんてもんじゃない。
「契約の精霊よ、五つの星を繋いで流星に変化して!」
蒼白い炎が五芒星を描き、それをなぞるように炎の灯った指を動かす。
そこから流星のように輝いた、魔力とはまた違ったものの塊が射出された。
「これは、精霊の塊。ルリィの本気ってやつ?」
「私が言うのもなんだけど、チートだね。」
飛んでいった流星。それは水竜に向かって綺麗に着弾した。
「グガァァァァ……!」
当たった瞬間少しだけ後退したように見えた。
攻撃の重心をずらして、ダメージを軽減させた……やっぱり、ただの魔物じゃない。
これは、幾千の闘いを経験していないと無理な動きだ。
VRゲームとかで、オンライン対戦したことがあるけど、運悪くプロゲーマーとマッチしてしまったことがある。
その時に攻撃の重心をずらして、勢いを消したりしていた。
まぁ勝ったけど。
「私も何かやらないとね。」
何か高火力の魔法がないかを考え、魔力を貯める。
「いてっ……なにこれ?」
集中力が切れ、魔力が乱れるのを感じる。
これは……鑑定眼にかけてみよう。
水竜の鱗
この世界にある全ての攻撃を阻害可能
水竜の鱗、ねえ。全ての攻撃とか言われたら、チートとしか言いようがなくなっちゃう。
……待って。これ、使えるんじゃない?
いくら私でも、剥がれて自分の手元にある鱗を操作できないほど弱くはない。
この手にある鱗を使って……
「次の手からが、本当の戦いだよ。」
これからは、私のターンだ。
———————————————————————
ソラには勝利の道が見えたようです。
鱗を使って何を企んでいるんでしょう。
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