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3章 魔法少女と水の都
82話 魔法少女は思い出す
しおりを挟む3人が楽しそうに門を出ていったのを確認し、私は私で準備を始める。
えっと、どうしようかな~。まず川行きたいでしょ、そもそもまず冒険者ギルドにも顔出したいでしょ、海にも行きたいし……海は昼ごはん食べ終わったらでいいか。
よし、そうしよう。
「あの、フィシアさん。私も出かけていいですか?ちょっとギルドにも顔出したいですし。」
「別によいですよ、好きにどうぞ。」
一応フィシアさんにも確認を取り、オッケーをもらったから外に出た。
観光始めるぞー!
そう意気込んだ時、視界の端にあるアイコン?的なものが光った。
「なに、また何かあったの?」
仕方なく開いてみると、ステータス画面と一緒に手紙が届いていた。
何故ステッキの機能を使おうとしないんですか?馬鹿なんですか?死ぬんですか?前まではそれも面白かったんですが、死にそうになった貴方を見ていると、イラついてくるので早く使ってくだださい。
神より
……なにこれ。何で私は罵倒を受けてるの?
なに?ステッキの機能を……って書いてあるけど、なにそれ?知らないよ、私。
すると、また光り始める。
あの時説明したじゃないですか?貴方の脳みそはミジンコですか?さっさとステータス画面からステッキの所をタップしてください。いや、しろ。
神より
なにこれ、フレンドリーとかいう域をとうに超えてるよ?そこまで罵倒される謂れはないよ。
渋々書かれた通りにしてみると、ある画面が映る。
魔法少女ステッキ
攻撃950 防御820 素早さ1020
魔法力1200 魔力1250
スキル
収納 魔法力上昇 魔法耐性 俊敏 剛腕
超硬化 噛砕 乱暴 復元 激昂
ステッキ変化
あっ…………えっと、忘れてた。
あったね、そんなの。完全には脳内から消し去られてた。
ちょっと内容のよく分からないのは検索しよう。
ポチッと。
ふんふん、よく分かった。分からないことが。
まず剛腕から順に、発動時物理攻撃上昇、防御上昇、特殊攻撃上昇、攻撃が単調になる代わりに威力倍増、壊れたものを修復可能、乱暴の強化版(統合可能)だ。
最後のステッキ変化だけはまだ見てない。なんか、怖そうだから。
忘れていたことに、後悔しそう。私のためにも見ない方がいいんじゃ?と思ったけど、神様の手紙ラッシュが来ないように、仕方なく押すことにした。
ステッキ変化
ステッキで防いだ魔法&攻撃の耐性や能力を手にしたステッキを自分でセット可能。耐性•能力は、いくらでも設定できる。
はい、解散。帰ろう帰ろう。……じゃないよ‼︎強過ぎるよその能力!どうして気づかなかったの、私は?
これがあれば、カロォーク倒せたんじゃないの?
あぁ!!だから見たくなかったのに。
なになに?そんなこと知らずに、魔法は避けてたし攻撃も魔物に対してはパンチばっかだよ。
あの時のゴブリンくらい?もう無いも同然じゃん。
はぁ、今度一から作りますか。
なんかドッと疲れたね、主に精神が。
観光は今度にして、ギルドにだけ顔出そう。
門の前で立ち止まっていたことに気づき、足早に街の中心に行くことにする。
一旦忘れよう、うんそうしよう。
街の中心まで来たはいいけど、どこにギルドがあるかは分からないんだよね。
知ってそうな人に聞いてみよう。
辺りを適当に見回していたら、冒険者らしき格好をしている4人組がいた。
それと比べ、私の格好は間違っても冒険者のそれでは無い。
旅人とかそんな感じならありえるって格好。
やっぱり、格好は大事だね。
まぁ、この脱いだら脱いだで魔法少女服が見られるだけだし、それはもっと冒険者じゃない。
旅人の方がマシだよ。
「あの、すいません。冒険者ギルドってどこにあるか知りません?」
「あ?」
ひぃ、恐る恐る声をかけたけど、「あ?」って返されたんだけど。こわっ。
「この街にきたばっかで、冒険者ギルドの場所が分からなくてですね……」
小声になりながらもなんとか説明を試みる。
「女の子?」
2人いる中の1人の若い女性が、私のフードを持ち上げて聞く。
「…………」
「可愛い女の子、どうして冒険者ギルドに?」
「その、いろいろ。」
「そんなんで教えると思うか?」
さっきの人がまた私のことを軽く睨んで、強めに言ってくる。
なに?じゃあ私が冒険者だって言っても、それで「はい、そうですか」とはならないでしょ。
自分で言うのもなんだけど、私はどっからどう見てもただの不審者予備軍だ。
「別にギルドの場所ぐらい、教えてあげてもいいでしょ。減るもんじゃないでしょう。」
頑固ね、と呆れたようにもう1人の女性が言う。
「ティーファの言う通りだ。ギルドはあっちの角を曲がってすぐのところだ。」
行けば分かる、と場所を教えてくれた。
「ありがとうございました。」
そう言うと、踵を返して4人どこかに歩いて行った。
最初の人は感じ悪かったけど、後の3人はいい人そうだったね。
あんな人とパーティー組んでて疲れないのかな?
そう思いつつも、言われた通りに道を進む。
「これかあ、ティランの冒険者ギルド。」
そういえば盗賊置いてきたままじゃん。
…知ーらないっと。
私は何もしてないし、盗賊なんて全くもって知りませんよ?
盗賊のことを思い出して不安になりながら扉を開けると、一瞬視線がこっちに向く。
それは全部、同じ方向からだった。
ギルド内にいた冒険者は全員同じところにいて話をしていた。
「……あの、何してるんですか皆さん。」
私の震えた声がギルド内に響き渡る。
「女の子……我がギルドに、何か御用が?」
受付の男性が、何かぼそっと呟いた後にそう問いかけてくる。
「いや、別に……ただ顔を出しただけです。」
「あ、はい。」
また静寂が戻る。
「何を話してたんですか?集まってましたし。」
「水竜のことだ。」
集まりの中心のあたりから、頭角を現した図体のかなりでかい男が出てくる。
何持ってるの?武器、大剣では無い……巨大な投擲具?よく分からないね。
「最近、海辺に水竜が現れたんだよ。」
その隣にいた同じパーティー?の男性が説明を始める。
「そこに更に魔物の量が多くなったことで、魚を取りに漁に出るのが難しくなりつつあるんだ。」
「水竜……」
「そうです。だから海上戦が出来る冒険者を集めているんですけど、なかなか集まらなくてね。」
水竜ってあれだよね。海とかににいる竜だよね。龍の弱い版?的なやつ。
気になる……討伐の日時とかの問題が合ったら、受けてみようかな?
「その依頼、受けたいんですけど。」
「あぁそうだ。君はそのまま帰り……は?」
まぁそこからなんとか、無理矢理依頼見学という形で行かせてもらえることになった。2日後に海に集合とのことで、楽しみになってきた。
水竜戦のために、ステッキ強化しないとね。
その日は適当にぶらっと街を歩き、夕方になってから帰った。
そこには、フィリオがいた。
そういえば、2日後にはフィリオのお父さんの誕生日なんだった。
そのままスルーしようとしたのに、ぐちぐちと文句を言われてしまった。
そこまで言わなくてもいいじゃん。
———————————————————————
そうです。忘れていたのはステッキの機能です。
バカですね、ソラ。
ステッキ変換はめっちゃ使えそうですね。
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