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3章 魔法少女と水の都

77話  魔法少女はティランに着く

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「ロアっ、大丈夫⁉︎」
私は今度こそ、完全に安心なことを確認してからロアの元に駆け寄った。

「ごめん、ロア。私のせいで……怖くなかった?」

「大丈夫ですよ、ソラお姉ちゃん。ソラお姉ちゃんのお陰で、無事に済んみました。」
ほら、と私を安心させようと笑って体を見せてくれる。

 でも、まだ顔が強張ってる。
やっぱり、怖かったんだと思う。私だって10歳やそこらで、強盗に刃物を突き立てられたら怖い。

 あの時の私に、怖いと言う感情があるのかどうか分からないけど。多分怖いんだと考えることにした。

「……なら、良かった。」

 安心させようとしてるのに、やっぱり怖かったでしょ、なんて言うのはダメだと思う。
だから、ロアのためにもその一言をかけた。

「みんな無事なんです。いいじゃないですか。」
ニコッと私に微笑み、大人な対応をとる。

 この中で、1番の大人はロアなんじゃないかな?

「もう夜遅いし、戻って寝ようよ。」
私は振り返って、みんなにそう言った。

 私も眠い。明日にはティランにはつけると思うし、早く休みたいからね。

「そうね、そうしましょう。」
リアナさんは私の案に賛成して、馬車の元に帰っていく。

 その瞳はなんだか潤んでて、悔しそうにも見えた。

————————————

「クレアス!エヌ!ソラが、ソラが1人で盗賊討伐に行ったの!」
あたしは出せる限りの声を出して、みんなにソラのことを告げる。

「なんだって⁉︎」
クレアスは驚き、目を見開く。

「あなたたちも一緒に来て!」
「ちょっと待って。」

「なに⁉︎」
今更止めに入るエヌに、怒りを覚えながら怒気を込めて聞き返す。

 ソラには、彼女には、絶対に経験はしてほしく無い。あたしがしてしまった過ちを、冒させないためにも。

「馬車を置いていくつもり?馬車の見張りは必要よ。せめて、わたしは残る。」

 そうだった、あたしは別に1人な訳じゃなかった。あたしにも、守るべき人がいた。物があった。

「分かったわ、エヌは残ってて。」
そう言ってあたしは、クレアスとロアという子を連れて今も戦うソラの元に駆けつける。

 でも、それは失敗だった。

 あたしは思った、ソラの戦う姿を見て。
完全に心得てる。人を殺さない方法、殺さずに済む攻撃、それでいて手加減が無い。

 あたしの未熟さとソラを、いつの間にか重ねていた。
 でも、それは違った。あたしの勘違いで、あたしの間違い。先輩ヅラをして、先輩ヅラをしたくてこんなことをしてしまったんだと、今更遅いが気がついた。

 そのせいで、

 ソラはあの時のクレアスの真似をするように、光の核石を投げたお陰で、犠牲が出ることは無かったけど、だけど……

 あたしはまた、許されない罪を犯した。
あたしの傲慢さが招いた結果がこれだ。

 笑って。こんな惨めなあたしを。いや、笑われすら、あたしはされない。

 もどかしい気持ちが、あたしの心をぐるぐる回る。

「もう夜遅いし、戻って寝ようよ。」
何を話していたかは聞こえなかったけど、ソラは振り返ってあたしたちに言った。

「そうね、そうしましょう。」
そう一言だけ呟き、馬車に戻る。

 あたしは、このまま冒険者をしていていいの?

————————————

 は~い、おはようございまーす。

 今日の天気は快晴!昨日、あんなことがあったなんて思いもよらぬほどの、綺麗でさっぱりした朝です。

 ……じゃないよ。
結局あの後、私はあんまり寝れなかった。

 あの、リアナさんの顔が頭に張り付いて取れなかったから。

 別にリアナさんの所為じゃない。
私を心配してやってくれたことだし。私だって何も言わなかったから。

 朝起きると、みんないつも通り接してくれる。
ネルにはそれとなく伝え、なんとなく察したように「すいません、起こしてくれてもよかったのですよ?」と少し困惑気味に言った。

 そりゃそうだ。いきなり「盗賊討伐に行った」なんて言われても、私だって困る。

 それから私は朝ごはんを軽く作り、皿に盛る。

 ロアとネルが手伝ってくれたので、用意はすぐに終わった。
 2人とも、自分から手伝ってくれるなんていい子だね。いい子なのは元から知ってたけど。

 クレアスさんとエヌさんも起きてきて、顔を洗ってからパンを齧る。
 
 それから間も無くして、リアナさんも目を擦ってやってくる。

 何か重い雰囲気を纏いながら、歩いてるね。

 私も少なからずモヤモヤは残ってるけど、もう吹っ切った。

 あとは、リアナさんの気持ち次第だ。

「今日の昼頃には、ティランに着きそうです。皆さんはお好きに行動してもらって構いません。ネル様は、ご挨拶に行きますよ。」
御者さんが朝食を食べ始めた私達にそう告げ、最後にネルを一目見た。

「言われなくても、分かっていますよ。」
食べ終わったネルは、不満げな顔で呟く。

 御者さんは、ネルのお手伝いさん役でもあるんだね。
 それに選ばれるってことは、よっぽど信用されてるってことなのかな?

「…………」
やっぱりリアナさんは、なんとも言えない表情でボーッとしていて、すぐに馬車に戻っていった。

 その日はとても静かで、リアナさんの存在がいかに大きかったのかを理解した。

 クレアスさん達も気まずそうに苦笑し、話題を振ろうと試みた。
 人一倍明るかったリアナさんが静かになると、私達まで暗い気持ちになる。

 退屈な時間も、時間なんだから過ぎていって、馬車の窓をふと覗くとそこには……

「おぉぉ……」
大きな街壁を見て、思わず口からこぼれた。

 イタリアの水の都とは、ちょっと違うけどこれはこれでいいね。異世界感満載。

「皆さん、もうそろそろ着きますから準備を。」
御者さんが、少し大きな声を出した。

 ようやく着いたー、水の都。
この3日で色々あったし、(今現在も)時間の感覚も狂ってきたよ。ほんとに。

———————————————————————

 色々ありましたが、なんとかティランに着きました。
 次はティランを楽しむ…訳ではなく、リアナの件を解決します。
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