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3章 魔法少女と水の都

76話  魔法少女は決意する

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「おい!侵入者だ‼︎捕らえろ‼︎」
開幕早々、そんな怒声のような声が聞こえてくる。

 うるさいなぁ、ちょっとお邪魔してるくらいなんだから、別にいいじゃん。
 まさか、布団の下に18な本でも隠してるの?

 そんな男子中学生を相手にするような考えをして、盗賊の言葉は無視して進む。

「女じゃねえか、やっちまおうぜ!」

「数も質も、完全にオレたち側が有利だな。」
「不利有利以前の問題だろ?」

「違いねぇ」
「「ハッハッハッハ‼︎」」

 ……うるさい。ほんとにうるさい。
いちいち声が太いし低いしで更に響くし、脂と汗で臭い。

「ハンッ、テメェも後で俺達に食われるんだ。無駄な抵抗をして傷でも負ってみろ?後悔させてやる。」
私の女の子の部分を一瞥して、男は走りかかる。

 その食うっていうのは、わたしを強姦するという認識で大丈夫?

 その場合、盗賊達に対しての慈悲は一切無くリンチにしてあげようと思う。

 どうでもいい思考を巡らせていると、盗賊の男はいつの間にか私の目の前にいた。

「素直に囚われることだな!!」

「ちょっとそれは無理だね。」
冷たく言い放し、華麗にくるっと半回転して攻撃をかわした。

「っテメェ‼︎避けてんじゃねえ!」

 避けるなと言って避けないバカが、どこにいるの?
 私は対象を見失って転けた男の背中を目掛け、思いっきりステッキを叩きつけた。

「ガァ゛ァ゛ッ‼︎」
男は野太い声を響かせ、地面に伏した。

 これを合図に、戦いが始まる。

 盗賊達が騒ぎを聞きつけたのか、ゾロゾロとやって来て最終的には40人くらいまでになっちゃった。

 こんなに相手にしてられないよ……といっても、来ちゃったんだからなんとかするしか無い。

「オラァ゛‼︎」
「遅いよ。」
右にステップを踏み、軽く蹴り上げる。

「ゥ゛……」
小さく呻吟しんぎんを漏らした盗賊は、地面に転げ落ちる。

 魔力感知で周りを警戒しつつ、寸分の狂いもなく足を動かす。

 魔法は使えない。
盗賊と言えど人だしね、殺すのは流石の私も憚られる。それに、このままだったら殺すまではいかなくとも、凄いことになりそうだし。

「チッ!ガキのくせに…」
そんな啖呵を切り、私の元に全力ダッシュするけどまだまだ遅い。
 私も一緒に走り込み、思いっきり殴りを入れた。

 やっぱりスカッとするね。

 ゲーセンとかにパンチングマシーンとかあるじゃん。(行った事ないけど)
 その感覚に似てる、……多分。

 襲ってくる盗賊を、片っ端から片づけていると知らない間に屍(まだ死んでないけど)の山が出来上がってた。

「ソラ‼︎」
すると息切れをした、リアナさんの声が聞こえる。
振り返った私は「リアナさん?」と声をかける。

「大丈夫?無事?」

「なになに?無事だって、え?」
少し遠くから、大声を出して私を心配する。

 何をそんなに心配してるんだろうね。

 リアナさんが色々言ってる間に、後ろから警戒体制を取るクレアスさんがいて、それに守られるようにしてロアもいる。

 ネルは……いないね。
流石に盗賊の前に行かせるわけにはいかないってことだよね。
 エヌさんはその護衛役と。

「なんでみんなはここに?」

「なんでじゃないわよ!なんでっ、なんで1人で行っちゃうのよ!」

 なんか涙を流しながら、私に説教を言ってくる。

 ちょっと、それ今じゃない。絶対今じゃないから!!

 そんなほんわかムードに包まれたのも束の間、私はあることに気づく。

「あれ、ボスみたいな人はどこ行ったの?」

 最初に見たきり、戦った記憶もなければ逃げた記憶もない。

 まさかと思ってロア達の方を見る。

「はっ、ハハッ!コイツの命がどうなってもいいのか⁉︎」

「……ソラ、お姉…ちゃん。」

「ロア‼︎!」
私は今すぐ助けようと地面を蹴り上げようとして、声が聞こえてそれをやめた。理由は…

「動いたら、コイツを殺す!そこで黙ってろ!」
ナイフをチラつかせ、ぎろりと鋭い眼光を向ける。

 私の足は、すくんでしまった。

 どうする?どうすればいい?
そうだ、神速を使おう。

 ……ダメだ、今ロアは抱きつかれる形でナイフを突きつけられてる。
そんな状態で神速なんて使おうものなら、ロアも巻き込まれて飛ばされてしまう。

 どうする?どうする?どうやれば……何をすれば、ロアを助けられる?

 私の息は荒くなり、体は震え始める。

 ミョルスカイを使えば……バカか?私は。そんなことしたらロアまで電気の余波を喰らっちゃう。

「ソラ!!」

 今更、盗賊なんてものはどうでもいい。死んだって、殺したって。

 何をすればいい?何をどうすれば?
私の手札じゃ、何をどうしてもロアを無傷で返すことが出来ない。

 もう、ダメだ。

 私は何も考えられなくなり、立ち尽くす。

「……ソラ‼︎!」

「……っ!」
リアナさんの声が耳に入り、私は冷静さを取り戻した。

 何を考えてるんだ?私は。
もうダメ?ふざけんじゃない。ダメダメ言う暇があれば、少しでも打開策を考えなきゃ。

 バカなのは、私の方だね。

 思い出せ。何か……
そうだ、リアナさんが言ってた話。あの中に、確か盗賊討伐の話もあった。

————————————

「クレアスの咄嗟の機転のおかげで、なんとか成功させられたのよね。」

「偶然だよ、本当に。たまたまそこに光の核石があったから。」

「謙遜はやめてください。光の核石を投げて、目をくらませるなんて思いつかないです。」

「あの時は助かったわ。」

————————————

 これだ。これが打開策。
私に出来る、最大で最高の手。

 核石、あるね。

 今からは、私のターン。

 絶対に、勝利を掴む。

「ロア!目を瞑って!!」
それだけを叫び、光の核石を投げ飛ばした。

 こんな時、もし本来の力があれば取り逃すこともなかったのかな?
 そう考えると、この上着は脱いだほうがいいのかな?

「なんだっ⁉︎」
核石は光り輝き、その光を直視してしまった盗賊はナイフを手からこぼして目を抑える。
その瞬間、私は今度こそ地面を踏み締め、跳び上がる。

 ようやく終わった、短いようで長い討伐劇。

 足に硬い感触が伝わり、それはすぐに自然の摂理に従って飛ばされていく。
 木にぶつかった盗賊は、魂が抜けたような表情をして倒れる。

 これで終わり。早く、ロアの元に行かないと。

———————————————————————

 ソラはなんとか盗賊を倒し、ロアのところに戻るそうです。
 



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