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3章 魔法少女と水の都
73話 魔法少女は冒険者と遭遇する
しおりを挟む今日も昨日と同じように、パッカパッカと馬車で走っている。
朝ご飯を、私とロアとネルと御者さんとで食べて、(朝は面倒くさかったからパンを焼いた)馬車に乗ってるって言うわけ。
「平和ですねー。」
「そうですねー。」
ネルとロアは目を細めてお茶?を飲んでる。
ここまで何もないと、逆に何かありそうで不安なんだけど?
すると、突然馬車がゆっくりと止まり始めた。
「もう昼ごはんの時間ですか?」
「まだだと思います。」
ロアは窓を開けて、覗き込みながら言う。
「すいません、ネル様、ソラ様方。この先に魔物がいるようで……」
御者さんが降りてきて、私達にそう説明した。
魔物……この先に魔物?
声とか聞こえないけど、流石御者さん、すごい耳の持ち主だね。耳かどうかは知らないけど。
ちょっと、魔力感知で確認してみようかな。
うん、いるね。魔物、いるね。
魔物は見た感じ、4匹くらい。
人が戦ってる人が3人、隠れてる人が2人。
4対3か……魔力感知で動きを見た感じ、劣勢だね、これ。
「どうしましょう、このまま待ちますか?それとも、加勢しますか?」
「ソラさん、どうしますか?」
ネルは、上目遣いで目を潤ませて聞いてくる。
そんなこと言われても、私は1護衛。
そんなのを決める権利は無い。
「それはネルが決めて。私は護衛、雇い主のフィリオはいないから、代理人のネルが決めていいんだよ。」
今回のことは、人の生き死にが決まる選択かもしれない。それを子どものネルに決めさせるのは酷なことかもしれない。
でも、そういうことは経験しておいた方がいい。
「ネルは、助けたい?」
「私は……」
「ネル様…」
ロアは何か言おうとしたけど、私の思いを汲み取ってくれたのか、口を閉じる。
「……助けたいです!何もせずに後悔するより、何かしてから後悔したいです!!」
お父様も言っていましたし、と最後の最後は小さく、可愛く微笑んだ。
「なら決まり。それじゃ、助けに行こう。」
危険なので、私は3人を馬車においてこの先に行くことにした。
もし、どんな決断をしたとしても私は何も言わないつもりだった。
それが考え抜いた上での、ネルの考えなんだから、私が口を出せるわけがない。
まぁ、これは私個人の考えなんだけどね。
「戦況はどんな感じかなっと。」
コソコソと隠れながら、状況を確かめる。
ゴブリン。うん、黒いゴブリンが4体。
一方、女性冒険者の3人パーティー。
私が言うのもなんだけど、勝てるの?いや、勝てないよね。不可能だよね。
1人はボロボロ。それをカバーするように弓みたいなのを引くけど、意味があるようには見えない。
もう1人は、その弓の人を守るように立ち回っている。
「これはちょっとやばそうだね。」
もう少し待ってみようかとも思ったから、少しの間聞き耳を立てることにした。
なんか最低だね。私、高みの見物決め込んでる。
「リアナっ、そっちからも来ている!」
「分かってるわ!あたしもやれるだけやってるの。」
「ごめんクレアス、援護間に合わないっ!」
ここにいる3人は、ゴブリンに奮闘を試みているけど、戦況はただ悪くなるだけ。
これは本格的にやばめ?
……もう少し、うん。もう少しだけ。
「クレアス!囲まれたわ!」
「ごめん。わたしの魔力も、そこまで多く無いの……」
「エヌは謝る必要は無い。ただ、わたしたちに実力が無いだけだ。」
自分の方が動き回って辛そうなのに、弓を持った人のことを気にかけてそう言った。
優しいパーティーだね。私の心に来るよ。
「……くっ…殺せ!殺すなら、私を殺せ!」
「何言ってのクレアス‼︎あなたがいないとパーティーは……」
「悪い、リアナ。でも、こう来ないと全員が死ぬかもしれない。」
こう言う時こそリーダーの私が、と覚悟を決めたように唇を噛み締める。
くっ殺さんって、実在したんだね。
こういうのって、大体他国の騎士とかにやるものじゃない?
あと、そんなこと言って殺される風には出来てないよ、世界は。
世界の何も知らない私は、そんな風に思う。
くっ…殺せ!なんかいったら、終いには強姦の荒らしだよ。4匹のゴブリンに回されるよ。やったね。
「ってやったね、じゃないよ!助けに行かないと。」
謎の妄想を振り切って、思いっきり地面を蹴り上げた。
「ちょっと失礼するよ、万属剣‼︎」
私の左右には、数多くの属性剣が生成され、投擲の力を合わせて(プラス射出)思いっきり飛ばした。
「「ギィギャギィガァァァ゛……」」
2体は避け、残りの2体は万属剣の餌食になった。
よし、2体は討伐完了。あともう2体
「ちょっと、あんた誰よ!」
「黙ってて、そっち死にそうでしょ。」
ちょっと語気を強めて、双剣の人をひと睨みする。
「はっ、はぁ…」
ビクッと一瞬体が痙攣し、一歩下がった。
あれ、ちょっとビビらせすぎちゃった?
「私は空。詳しいことは後で。」
ステッキをぎゅっと握り締め、フードが風で靡いた。
今はフードのことは気にしていられない、別にフードくらい無くてもどうにでもなるし。
「どうなるか分かんないけど……トール!」
私はゴブリンの元まであっという間に着き、ステッキをかざしながら叫ぶ。
電撃がバチバチと流れ込み、ゴブリンの体を駆け巡る。雷が通るたびにぴくぴくと反応し、血管が浮き出ていた。
「ァァァァァァァ゛」
声にならない声を出し、足掻き続けるゴブリンはやがて死に絶えた。
「ふぅ、これであと1体。」
出てるかどうか分からないけど、雰囲気づくりのために汗を拭う。
そしてゴブリン方をギロっと、出来るだけ険しい顔を意識して睨んだ。
ギョッとするゴブリンは、急いで逃げようとする。
ゴブリンは、逃げてはいけない方向に逃げてしまった。
そう、私達の馬車がある方向だ。
「そっちじゃなかったら、見逃したのに。」
短い嘆息と共に、地面には死体が転がる。
流石にここまで封印はしてられない。神速を使って、ステッキで殴り飛ばした。
戦いとも呼べない戦いが終わり、3人の女性冒険者の方を見ると、
「「「っ!!!……」」」
驚いて固まってしまった。
「あ、あの?」
「ひゃい!」
噛んだね、可愛い。
説明がめんどくさい…誰か変わって。こんな怯えられてたら、できる説明も出来ないよ。
———————————————————————
謎の女性冒険者パーティーに、くっ殺さん。
流石に安心安全、そして健全の小説なので、誰が犯されたり強姦されたりなんかはありません。
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